下手物食い - Festina Lente2

とあるSNSでエスニック料理を食べるという会がある。
前回はイスラムだかイスラエルだかアラビアだか、その方面の料理。
京都まで出向いたらしいが、その頃私は仕事から離れるかどうか、
思案のしどころというか、すったもんだの混乱の最中だったので、
何かを食べに出掛ける、等という心身の余裕は無かった。
次こそ参加したいと思っていたら、テーマは「セミを食す」だそう。
正直腰が引けた。しかしメンバーの中にはツワモノがいて、
「口から羽を出してでもセミをバリバリ食う」とのたまう者もいて、
怖いもの見たさとはよく言ったもので、
イナゴも食べられるし、タイ料理フェアなどで昆虫食の経験もあるし、
やってやれないこともないと、参加を申し込んでいた。

心密かに､こういう会に出て、バリバリ物を食べれば、
少しは元気になるんじゃないか、私？
ショック療法じゃないけれど、今までの仕事から離れたことだし、
何事も経験、好きな事にチャレンジするって決めたじゃないかと、
自分を鼓舞して午前中はあれこれようじを済ませて
市内へで掛ける午後、メンバーは5人。むろん私が一番の高齢者。
初々しい若者と共に、繁華街を歩いて目的の見せに向かうこと15分。

どうみても、繁華街の片隅に生じた異国、外国人居留地、
焼肉を始め、異国の鍋料理あれこれ、看板の文字が、
アジア、とてつもなく雰囲気がアジア、どうなることか。
店先の写真といい、日本人が誰もいない異国の言葉飛び交う店内。
辛うじて日本語のメニューがあるものの、何が出てくるのか、
この写真を信じて良いのか、正直心許ない中で、注文。

最初は焼き串の中でも？　これが串？と思えるパン串を注文。
何のことはない、食パンである。饅頭串も、普通に丸い蒸しパン。
しかし、鳥の頭はともかく、セミは成虫ではなく蛹、真っ黒な、
巨大なダンゴムシ用の物が幾つも串刺しになって出てきた。
香辛料の利いたレバ刺しどころではない、ビジュアルインパクト。

口直しにと頼んだパクチー豆腐を元気に頬張るのは私のみ。
まあ、中国西域とは行かないまでも、あちこちだてに旅してなかった。
少々のビジュアルでも噛み砕いて食べる私。
飲み物で誤魔化す面々。主催者も完全に引き引きモードで、
こりゃあ、どうすべえ。

帰りに小綺麗なサテンでスウィーツを食べ、気を取り直す面々。
そこでも元気に甘い物を平らげる私。
うーん、年齢と体重と、悪食の年季の入った者が勝利だったのか、
台湾の臭豆腐も似たような物ではないか、蛙の炒め物も美味いし、
アジアの昆虫食は今に始まったものではないが、
若者達は初心者だったのか、ほぼコメントもなく、
辛い記憶を忘れたいかのような、静かなSNSの画面。
私1人が浮かれて食べていたのではないかと不安。
味ですか？　私にとっては美味しかったのですが･･･。