Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

入院顛末 9/25(月)夕刻 

25日の検査結果 CRP3。やったね、これでほぼ散らせたはず。
夜中から点滴は1本減るだろうな。16時過ぎ、栄養士さんの説明。
「ここの食事は美味しいって評判だから、楽しみ」と言うと、
「えー、プレッシャーだなー」と笑ってらした。
隣の男部屋の面子が「おいしい」と言うんだから、間違いないはず。
私がソファで点滴持って休んでいる時、退院間近の彼らは
「今日はビーフシチューだ、いいだろー」と囃してたのだから。
(まるで小学生みたいな、大部屋の「ノリ」だなあ)


夕方から重湯の食事。
まるで塗りの漆器のような木目調の保温容器。
ちょっと贅沢な御膳という雰囲気がしていいなあ。
食べる前から気を良くする私。わくわくわく。
え? おかずもお味噌汁もあるけれどいいの?
5日ぶりの食事。糊のような汁を、ゆっくり味わって食べる。
いつもなら飲み込むだけの食事を、よく噛んで、舌で磨り潰して、
素材の味を確かめながら、一粒の御飯の、一口の煮物の感触を、
記憶の中から取り出したものと、すり合わせて、なぞるように
喉の奥に流れ落ちていく、その瞬間まで楽しんで、食べる。


御飯って美味しいなあ。上げ膳据え膳で、ありがたいなあ。
お腹に優しい和食を味わって、ほっとする。
こんなにゆっくり御飯を食べる平日なんて、無かった。
そういう生活をしていた事が、問題だったのだろうけれど。
・・・生活を変えられるだろうか、仕事の仕方を。
切り捨てられるだろうか、本来は余分なものを、
要領よく、コンパクトに、省エネに、欲張らずに・・・難しい。


19:30過ぎ。突然家人来る。びっくり。ちょっと心の中で叫ぶ。
「うっそー。どうしたのー。」企業戦士、無骨な仕事人間なのに。
素直に嬉しいとすぐに言えない所が、いかん・・・。(反省)
で、手土産はこれ!? 私なら絶対に買って読まない雑誌、
読売ウイークリー。特集「行きたい病院・満足した病院」
あのねえ・・・。(もう少し別の雑誌でも良かったんじゃ)
とにかく、読んでみた。


でも、中身は安倍政権の教育改革批判。よし、いいぞ!
水木しげるの特集。うん、彼ものんのんばあも、私はファン。
湯浅醤油(黒豆醤油)の記事。うんうん、いいぞ。
ケイト・モス(「ラビリンス」)の作者へのインタビュー。
嬉しい! カルカソンヌは丸一日ぶらぶら歩いた思い出の地なので
ここを舞台の話はぜひ読もうと思って、マークしてたんだ。
なんたって、佐藤賢一の「オクシタニア」と比較したい。

え、あの「ブリキの太鼓」のギュンター・グラスが
ナチに所属した過去を告白したってか・・・
そりゃ、ある意味、誰が彼を責められる?
罪無き者が石を投げよじゃないが、言えなかっただろうなあ・・・。
人間魚雷「回天」に散った青春・・・等など、特集はともかく
けっこう「私のツボ」に はまった記事があったのでした。

ブリキの太鼓 1 (集英社文庫)

ブリキの太鼓 1 (集英社文庫)



カーテン越しに色んな会話が聞こえてくる。(殆ど私の所には誰も来ない)
入浴できないだけで、自分で動けるし、話もできる。見当識も有る。
巡回の看護師のみで、世話をしてもらうことは無い。ありがたいことに。
雑談も無く、淡々と過ぎる病院での時間。・・・すると余計に、
周囲がどれほど多くのスタッフに、支えられているかわかる。
食事の介添え・体位の交換・トイレ等、身の回り一切。
おばあちゃんの入れ歯のお世話から、普通の検査移動・リハビリ。


私の頭の中の消しゴム」その後を、地で行く世界が展開している。
博士の愛した数式」を、変形させたような世界も。
仕事と離れた世界で、結局、仕事に関する情報を集める。
「言葉のやり取り」を、「声の掛け方」を。
本には書かれていない、実際の「実例」を目の当たりにする。
昼の在り方、そして、全く違う様相を呈する夜の在り方も。


誰もが優しいのだが、私には哀しい。静かで穏やかな時間。
痛みに叫び続け壁を叩く人を、見ぬ振りをして、眠る人々。
「帰る部屋がわかりません」と、彷徨う人をそっと寝床に連れ戻す
1日に何回と無く繰り返される優しさ。
ここにいると、認知症の初期の母に対する思いやりを学ぶために
私は入院したのだろうかとさえ思える。
みんな眠っている。私は眠れない。

博士の愛した数式 [DVD]

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