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クリント・イーストウッドはかく語りき その1

「76歳・映画にかける〜クリント・イーストウッド監督に聞く」
本日のNHKクローズアップ現代。インタビューから、言葉を起こしてみた。
父親たちの星条旗」は観た。
もちろん「硫黄島からの手紙」も観るつもり。


大好きな、クリント・イーストウッド
今回はシリアスな作品ばかり取り上げられていたけれど、
「ローハイド」も、「マディソン郡の橋」も、「ダーティハリー」も
ミリオンダラー・ベイビー」も、同じぐらい好きなんだよね、私は。
自分の父親よりも年配でも現役の俳優・監督として活躍し続ける彼に
尊敬と憧れを抱く。彼の肉声から、少しでも得るものが欲しくて、
少しずつテープ起こしをしてみた。その第1弾。


むなしい戦争に苦悩する兵士の姿を伝えたかったのです。
常に新たな挑戦を続けていれば 人生はいつまでも楽しめます。


「なぜ日米双方の視点から 2本の映画を作られたのですか?
 大変珍しいことだと思うのですが」
「確かに 前例はないかもしれません。
 当初はアメリカ軍の立場から 硫黄島について調べていましたが―
 次第に相手側の日本 軍に対しても 興味を持つようになりました。
 彼らはどんな人たちだったのか それを描いてみようと思ったのです。
 異なる視点から 2本の映画を作ったことで―
 効果的に反戦のメッセージが より伝わったと思います」


「(前略)今回の映画は 今のアメリカを
 映し出しているようにも思えますけれども」
「そうですね、殆どすべての戦争で 同じような事が
 起きてきていると思います。国の宣伝に利用される人は 
 何か特別なことをした人ではありません。何もしていなくても
 英雄に祭り上げられてしまうこともあるのです。
 そこには必ずお国の事情が絡んできます。
 映画では 戦費を集めるというものでした。
 こうした状況は そう簡単に変わるものではありません。
 誰でも英雄とは握手をしたがりますが 」


「これまで私達が観てきたハリウッド映画は敵を真っ向から否定し
 残虐なものとして描く一方で アメリカ側は 必ずといっていいほど
 強いヒーローや正義の味方が描かれてきたと思うのですが」
「それは昔からそうでした。
 わたくしだって そういう映画を観て 育ったのです。
 わたくしが子供の頃は 第2次世界大戦がありましたが 
 当時の映画は戦争を鼓舞するような内容ばかりでした。
 日本でも同じような状況だったのではないでしょうか。
 当時は それがすべて正しいと思い込んでいました。
 しかし歳を重ねて 人生を様々な角度から俯瞰できるようになると
 もっと大局的に 物事をとらえられるようになるのです。」


アメリカの人々にとって心地よいのは、
 正義なるアメリカ ではありませんか」
「そうかもしれません。しかし、我々は 戦争に英雄はいない
 ということを受け入れなければなりません。
 今回の作品は それを認めたくない人には向かない映画です。
 娯楽を求めている人には 何か別の映画を観ることをお勧めします。
 ただ 別の視点から物事をとらえてみたいという人には
 いいのではないでしょうか。アメリカ人が この映画を
 見たからといって 愛国心に反するものではありません。
 しかし どこの世界にも同じように悩み苦しんでいる人達が
 いるという事がわかるのです」


「日本側の視点から描かれた硫黄島の戦いを
 アメリカの観客に観て貰うことは、どのような意味があるのでしょうか?」
「これは アメリカだけでなく、映画を見てくれる全ての人達にとって
 重要なことだと思います。わたくしは 当時の日本の兵士達が
 自分達と全く変わらない 同じ人間だったということを
 知ってもらいたいのです。彼らが祖国に大切な人を残して
 右も左もわからない戦場に赴いていったという 
 戦況についての確かな情報が与えられない中で 
 戦い続けなければならなかったことを。
 多くの仲間が戦死し 常に死と隣り合わせという状況で 
 一人の人間として 懸命に生きようとしていたことを。
 また 戦場に送り出した息子が 戦死したことを知った母親の悲しみを
 どこの国でも同じように感じてもらえるはずです。
 それがわたくしが 映画の中で伝えたかったメッセージです。
 最終的に 戦争では誰一人として英雄にはなりえないのです。」


「正義の味方は いないという事ですね」
「全ての側に 正義も悪もあるという事でしょうねえ。
 時として どちらかの方が より正しく見える場合もあります。
 しかし そこには殆どの場合 勝者というものはいないのです。
 今回の作品は 個々の人間について描かれた映画です。
 むなしい戦争によって 兵士達がどれほど苦しんでいたかを
 伝えたかったのです。多くの若者が次々と戦場で命を落としていく中 
 祖国では その帰りを待ち続ける家族や恋人達が居た 
 これが戦争の現実です。派手な戦闘シーンを見せるよりも 
 その現実を描き出す事が 
 戦争というものの本質を突くことになるのです」


ファンの欲目だけれど、淡々とインタビューに答える
穏やかな雰囲気が、かつての映画の中の役とは違って
また、いいんだよねえ・・・。