追悼フィリッパ・ピアス(フィリパ・ピアス)
あの名作『トムは真夜中の庭で』の著者、ピアスが亡くなっていた。
先月の21日に、86歳で。今日、新聞で知った。
この作品をいつ読んだかは、もう思い出せない。
だが、30代半ばで何度目かのイギリスを訪問した時、
ケンブリッジから足を伸ばして、ここまで来たからには
一目観たいと、イーリーの大聖堂まで出向いた。
この作品の中に出てくる大聖堂を見たかった。
(この大聖堂の美しい写真が載っているここを参考に、どうぞ)
http://blog.goo.ne.jp/wonderthunder/e/b54a1037905fb319fed3d6b8854cfc39
ある意味、その時久しぶりに、
私は心の中に13時の鐘の音を聞いた。
自分が物語の舞台に辿り付いた時、オクタゴンの中に立って。
子供時代でなくとも、多感な思春期、
また、大人といわれる年齢になってからでも、名作の影響は強い。
尚更、児童文学の世界でも心理学の世界でも絶賛された
『トムは真夜中の庭で』の世界の奥深さを、
今ここで整理して語りつくすことは、到底私にはできない。
例えば、卒論に書いている人もいる。
http://ari179.blog33.fc2.com/blog-entry-9.html
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真夜中の庭、それは秘密の花園と同じ。
心の成長を育む特別な空間、特別な時間が流れる異世界。
思春期だからこそ見える幻、感じる時空の裂け目、
見えないものを見、聞こえない声を聴く。
限られた出会い、隔てられる心、予期しない再会。
物語の中で、トムとハティの距離がどんどん広がっていった時、
自分の心の中が痛くなり、読み進めることができなくなったあの頃。
特別な13時、彷徨う時間、彷徨う心、満たされない思い、
食い違うお互いの時間軸、夢と記憶が交差する不思議な時間。
思春期の子供の時間とつながる老人の時間。
メビウスの輪。
巡り会い、抱擁。一つになる思い出。イメージ。
ピアスは今、どんな夢を見ているのだろう。
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