Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ダークスーツで

女装は苦手だ。女性なのだが、とにかく、スカートが苦手だ。
ぴったりとしたタイトスカートは体の線が露わに出るし、
急いで歩きたいのに大きな歩幅で歩けない。
色んな作業ができない。というか、しにくい。
ふわふわしたスカートは何だか足にまとわり付く。
仕事の関係上、殺伐とした気分で過ごすことが多いので、
いわゆるフェミニンなスタイルは非実用的。


台の上に乗ったり降りたり、作業をしなければならない時
スカートを破いたことがある。スリットスカートだった。
出張に行くのに自転車で駅まで行ったら、
スカートの裾を巻き込んでしまい破いたこともある。
プリーツスカートだった
駅前スーパーでスカートを買い直した。
2、3度しか着ていない上等のスカートを破いたショック。


仕事柄、きちんとした服装と思われる場合も多いが、
管理職でもないので、よほど気の張る場へ出かけるのでなければ、
スーツなどは着ない。行事・式典でもない限りは。
いわゆる祝儀不祝儀でもない限り、スーツは着ない生活。
汚れる職場なので、きれいな服を着ている場合、
白衣を着てカバー。(全く医療とは関係なし)
ボロ服を着てきた場合も、ボロ隠しにカバー。


そんな私が、ダークスーツで丸1日過ごさなければならない。
本日の課題はストレスマネジメントだが、
もはやスーツ姿で借りてきた猫の状態になっていること事態、
負荷がかかっているとも言える情けない状態から、
1日がスタート。どうなることやら。
とりあえず、スカートではなくパンツスーツで。

性とスーツ―現代衣服が形づくられるまで

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着るものがない!

着るものがない!

遅めの朝、田舎から都会へ向かう電車、地下鉄の中。
女性よりも男性のダークスーツ姿の多いこと。
改めてびっくり。帰り20時、21時台はもっと多い。
ブーツカットで仕上げられたパンツの為に、
ヒール高めの靴を履かなければならない。
普段はあまり化粧もせず、アクセサリーも付けないのに
スーツ姿のあまりの地味さに、自分でも嫌気がさし、
普段と違う化粧、イヤリングなど付けてみる。


普段着ではないこと。よく言えば、気持ちが改まる。
悪く言えば、自分では無い自分に変身。居心地が悪い。
きっと毎日きちんとスーツで仕事をこなす人は、
逆にスーツ姿ではないと、居心地が悪いんだろうなあ。
仕事や研修でスーツ姿が必要と頭ではわかっていても、
体に馴染んでいないので、体が自然な感じに動かない。
せめてもの慰みに、書類ケースではなくいつもの鞄を持参。
・・・きちんとした格好で、なんて人に言えた義理ではない。


自分の実力を発揮するのに、場の力を借りるために、
ペルソナを被るために、何よりも目的を遂行するために、
必要であるはずのダークスーツは、本来の目的から外れて
自分自身を窮屈にさせる。このプレッシャーにめげずに
色んなことをこなさないといけないのだろうが、
「スーツ」は愚か、「ダークスーツ」の呪縛は、
四半世紀気ままに生活してきた人間にとっては、鎧である。


スーツは重く、堅く、ルールに守られた黒子を作る。
規範の中で役割を演じる自分に、ルールを与える。
制服ではないけれど、制服のようなもの。
組織の中に隠れ、組織の顔となり、周囲と対峙する、
もっとも基本のスタイル。
きちんとした格好から生まれる相手への気遣い、誠意、
ということになってはいるのだが・・・。


着慣れないスーツと同様、自分の顔もこわばっているのがわかる。
春先のダークスーツは紺だろうが黒だろうが、
仕事上のスーツ姿は、必須だろうが必須でなかろうが、
もう1歩着崩さなければ、皮膚呼吸ができない感じ。
という訳で、小心者の私は普段の私になれるように
あれこれと画策しながら、今日の1日を過ごす。
実は「普段と同じ」であってはならないのは、
十分承知の上で。


・・・場数を踏みなれていないボロを隠す、
カバーするためのスーツは、相手軸から遠く離れて
私に、目に見えないボロを着せることになっている。
そう、相手への最低限の気遣いができないまま、
自分本位に仕事をし続けてきたツケが、
今、露呈されようとしているのかもしれない。
私の現場は物理的に動きやすい服の現場だった。
今、それが、変わろうとしている。


今日の私は何処にいる?
今日の私は何を着る?
誰の為に、何の為に?
昼と夜では別の顔。今日はいつもと違う顔。
誰の為に、何の為に? 

じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)

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ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)

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