Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

冷酒を捧げて

初物のたけのこ御飯を食べていたら、歯の被せ物が取れた。
よりにもよって親知らずに被せていたのに。
私の親知らずは4本とも生えていて、みな被せている。
・・・考えたら恐ろしい事態だ。しかし、歯医者は閉まっている。
うーん、いつ行けるだろうか、予定が詰まっているのだけれど。
腫れなければ来週・・・。さて、どうしたものか。


学童のお弁当を作り、「芋たこなんきん」を見て出発。
8:35 娘の皮膚科へ。いつになったらこのいぼとお別れできるのか。
9:15 娘を学童へ。大急ぎで母の診察に付き添うため大学病院へ。
9:45 もはや病院の駐車場満車。近くの喫茶店兼レストランへ。
   モーニングを注文して、BGM「牧神の午後への前奏曲」を
   聴きながら大急ぎで食べて、神経内科の待合へ。
10:30 予約票どおりに診察。うーん、信じられない。ラッキー。
10:55 両親を残して出勤。時間休3時間。


17:00 ちょっと早めに退社。上司・管理職も転勤のためお咎め無し。
17:45 娘の顔を見て研修へ。たけのこ御飯お握りで詰め物取れる。
19:15 少々遅刻。本日、世代・性別に説明するのは「ストレスについて」
   今一つの体調の中で、role playの時だけ元気になる私。
21:45 明日の研修の打ち合わせ。
22:00 冥福を祈って(それにかこつけて)八海山をあおる。
24:00 帰宅。こんな日もあるさ。


誰の冥福かと言うと、父と殆ど同世代で面差しまで似ている方と、
有名な小説家の妻であり、その小説のヒロインでもあった女性の。

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病院に縁が無かった1年半前、ご縁ができると何本も歯が割れた。
どうやら知らないうちに、歯を食いしばっているらしい。
今日取れた詰め物も、先に歯の方が砕けていた。
この3月のストレスが、半端じゃなかった証拠かな・・・。
思わず食いしばっている、食いしばってしまうとは。


自分の転勤ではなくても、親しい人との別れは辛い。
何ヶ国語も話せる不思議な先輩も、
今日も泣かれてしまった歳若い後輩も、
義理で挨拶せざるを得ない管理職の上司も、
それなりにね。


これからのことを思うと、胃が痛い。
解体されたチーム、一から立ち上げるチーム、
任されて(無理矢理押し付けられて)初めての経験で、
やらなければならないことの数々。
年度末、自分が転勤しなくても胃が痛い。


そんな今日。研修はストレスマネジメントへの入り口。
知識で知っていることと、人を巻き込むのは別。
自分をケアできるか、応用できるかは別。
本当に凹んでしまうはずなのに、
ここでは歯を食いしばることなく、実践への
ステップを学び直すことができる。


研修を終えて、昼間の顔から夜の顔へ。
仕事のしがらみや役職に縛られて生活の糧を得る顔から
もう一人の私の顔へ。
そんな「私」に浸りたい夜、年度末の疲れを癒す、
一杯の冷酒を。


きっと笑いの陰に苦い思いをたたえながら
仕事としてのコメディアンを全うしたであろう
植木等さんに、父が生きた時代を重ねて。
今でも私の胸に広がる南国の夜の海と恋の情熱を
パラノイアの心の闇を女性として考えさせてくれた
「死の棘」の世界のモデル、島尾ミホに捧げて。


私は仕事をして、現場に残り続けることを選択して
やりがいよりも使い回しや使い捨て、踏み台にされることを
感じることが多くなってきた年齢、
育てた人材を、創り上げた関係を幾つも失い、壊され、
年度末の疲れを新年度に持ち越さずに仕事をすることなど
難しくなってきた年齢。


子供の頃「面白いおじさん」だったコメディアンの
若い頃を時代の若さとして、その死をある時代の終末として
否が応でも父と自分を重ね合わせて、考えさせられる年齢。
冷酒は歯にしみる。ちっとも酔えない。
世は更ける。眠気はまだ来ない。


「出発は遂に訪れず」を読んでいた時、
余りにも若く、世間を知らなかった私を魅了した
二人のその後の姿を、その後の時代を、
男と女の在り方を、それでも生きていかざる哀しみを、
自分の心の中の棘として読んだ、「死の棘」


夫を亡くし、1人で生きて1人で死んで
常世に還って、再び彼と巡り会っているのだろうか。
1人の作家よりも、かつて私の心に迫ってきた女性、
島尾ミホ、彼女の魂の還る場所は、どこ?
そんなことを考えながら、グラスを傾ける。

死の棘 (新潮文庫)

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「死の棘」日記

「死の棘」日記