Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

生き易い世の中とは

講師の先生が疲れ切っている。話すのも辛そうだ。
今までの活動や、これからのこと。全く変わらない現状。
かえって悪化したとしか思えないこと。
女性を取り巻く問題の多様さと底の深さに、
ここに集うメンバーは、ちょっと暗澹たる気分になる。


今日の話題は最初から暗かった。例の大臣の発言といい、
性懲りも無く選ばれてしまった都知事といい、
(子供も産めない年齢のババアは
    世の中に必要ないというような発言をした)
「レイプできる奴は元気があっていい」という発言をした政治家。


最も育児に参加しない男性が、最も育児に横槍を入れる愚。
したり顔で自分達に都合のいい世の中を作って、楽をする。
夫婦別姓の問題も消えた。離婚後300日問題も消した。
旧態然とした安楽さをむさぼり、葛藤を許さない政治体制。


産みたくても産めない、この国では産みたくない女性を
増やしているのが、自分達だと気づいていない発言。
国ができるだけ母乳で育てろと、大々的に育児に介入。
本当にお乳が出なくて困っている人を追い詰める。
母乳をやらなければ医学的にも問題があると、
更に追い詰める。何重にも巧妙に追い詰める。


結婚して子供を二人以上母乳で育てて、家事に専念、
男社会に口を出さずに、夫婦同姓が当たり前。
何かあったら男性を立てて、中心に据えて存在する、
社会の単位として当たり前ではないかと、
そうでなければ、存在する意味がないと。
だから、「子どもを産めない女性に年金を払うのは国の損」
という発言が平気で出てくる、この論理。
みんな働いて、税金をちゃんと払っているのにね。


若さに価値を置いた、高度成長期以来の価値観。
お産が減って産科だけでは食べていけないので、
大量に老齢化する更年期女性をターゲットにしている
ホルモン療法主体の婦人科と製薬業者の密着。
(医療現場では、別の意味で産婦人科は悲惨な状態なのに)
中高年の女性に元気でいてほしい国の政策の背景は、
長期療養の患者を病院から追い出して、経済効率のためにも
自宅介護できる女性を確保したい為だとか。


つまり、女性の性と体と生き方は誰の為のものなのか?
男性の側の自己実現や生活や性的な快楽を支える為の存在なのか?
女性とは何なのか?

バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?

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暗い側面を炙り出したら、どうしようもなく暗くなる。
みんなのカミングアウトも、暗さに引きずられてしまう。
社会が変わらない、運動をしても勉強会をしても
どうして変わらないんだろうという問いかけに、
一人が答えた。


「女性はすることが多すぎて、そのこと一つに集中できないから」
家事・育児・仕事、やること・役割が多すぎて、できない。
男性はある意味、家事・育児に参加しているといっても主役じゃない。
参加の度合いはたかが知れている。
自分のしたいこと、もしくは仕事に集中できるのは、
すべて女性が肩代わりしているからだと。


リプロダクツって、何を再生産するのだろう? 
マルクス主義経済から出てきた言葉、なんだそうだ、元々は。
だから、女性の性を生き方を人生を、私達のあり方を
何のために再生産するのだろうか?
リプロダクツという横文字で表現することに、
何の意味があるのだろうか?


エンパワメントのパワーって何の力なんだろうか?
ジェンダーがバッシングにあって使われないのは?
男女共同参画という表現にのっとられて、
互角じゃないからわざわざ「女性センター」として、
機能していた場所、企画が男性の介入でなし崩しになった側面、
本末転倒になった部分、どこまでも理解されない部分が
結局残されたまま、先送りになったんじゃないだろうか。


売春はどうしていけないんだろうか?
そうせざるを得ない状態で働いている女性を、
同じ女性が「見下して当然」という感じになるのは何故?
手足を使って労働するのと、性器を使って稼ぐのと
その違いをどう受け止めるのか?


講師の口調は、今日はいつに無く、暗く重く過激だ。
普段何気なく使われている言葉の裏にある、
「なかなか変えていけないもの」「変わらないもの」
「誰もが抱えているもの」に対する考え・思いとは?
一人の発言。「社会なんてなかなか変わらない。
最も身近かな社会である家族、夫が変わらないのに」


そうそう、勉強しに行くといって家を出ても、
「今日はどんなことしたんだ?」と訊かれたことも無い。
別の一人が答える。
「その勉強はすれば金になるのか?」って訊かれたよ。
一同、爆笑。


一人一人の生き易さ、弱さ、疲れていることを
受け入れてくれる社会があればいいのに。
エンパワメントという表現の中に、
本来ある力を引き出して、ではなく、
「引き出せない意識できていないあなたはいけない」という
〜すべき、できなくては駄目という押し付け、
見下した部分がなかっただろうか?


更年期、元気に乗り切らなくてはならないのだろうか。
引きこもって疲れ果て、寝ていてはいけないのだろうか。
何もかも以前と同じようにできなければ、価値は無いのか。
アンチエイジングの時流にのっとって、健康で若く美しく?
でなければ、これから安心は手に入らないのだろうか?
(ちなみに漢字変換したら、「安置英人愚」と出たよ・・・笑)


様々な世代の女性が集い、それぞれの思いを口にする。
語り語られ、聞き聞かされ、話し話される。
〜したい、したかった、〜でいいと思う、
〜でなければいけないはずは無いから、〜ありたい・・・。
本当に〜でなければいけないのか。
それぞれの思いを口にできる場所、聞いてもらえる場所。
それを求めて、今日の勉強会も終わる。

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