Festina Lente2

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私の中のAhとシロ

どんなに夜遅く帰宅しても、私を迎えてくれる家族。
それは、我が家の一員、12歳にもなる雑種の犬、シロだ。
我が家の犬の名は、代々毛色から取られるのが伝統。
このシロは2代目。以前はクロもチャーも居たが、
現在のシロは非常に長命で、阪神大震災の生き残り。
家を失った子犬を貰ってきて、育てだのだ。
沢山の子供を産み育てた。「盛り」が付いて出て行ったまま、
おそらく先立ってしまっただろう、帰らぬ息子を持つ彼女。
人間で言えば、御歳何歳であられるのか。


夏毛になって、随分ほっそりした感じになったが、
歳のせいで、年々痩せてきているとも言える。
散歩にも行くし、庭で放し飼いにしているので
ストレスが溜まらず、穏やかに年老いているが、
番犬らしく他人には吠える。


おそらく、スピッツ秋田県が混ざっているシロは、
思いのほか健気によく吠え、頼もしい。
車庫入れする時には、既に門の前に待ち構えている。
娘の友達には絶対吠えない。
酒屋と瓦斯屋には必ず吠える。


このシロが元気に尾を振り、擦り寄ってくる時、
飛びついてきて舐めに来る時、
なでなでして抱きしめながら、ふと不安になる。
この夏を無事に越してくれるだろうか。
今までに亡くした犬たちは、殆ど夏に逝ったからだ。

白い犬とワルツを (新潮文庫)

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自分自身のこと、家族、健康、仕事、友人知人、
その自分の世界の中に、思いのほか、深く入り込んでいるのはペット。
私の飼い犬というよりも、父の飼い犬だが一番私の言うことをきく。
私がシロの体調を心配するのは、シロをかわいく思っているせいもあるが、
もしもシロに何かあったら、60代から70代と共に年老いてきた、
父の方が心配。そう、気落ちしないかどうか、ね。


人懐こい丸い目で見上げて来る、シロの光る眼差しを
気にしながら迎えた夏。
・・・そう、失われるかもしれないと思うと、何もかもが気になる。
ペットはもはやただのペットではなく、家族の一員であり、
そこに居るのが当たり前になってしまっている存在。
ましてや、口も利けない愛犬に投影するものは多い。


ある意味色んな所に熱を持ち、膿を出し、痛みを覚え、
持て余すほどの身体言語で様々な語りかけてくる「からだ」。
直接体験、感覚、自分に望ましく無い形で内在するもの。
切り離して考えることで、余計に意識化される「痛み」。
私の様々な心身の不調に引き比べ、同じ「メス」でありながら、
更年期もどこ吹く風で、病気一つせず元気に年老いたシロ。


Ah!  溜息をつく。この段階がたいてい長く続く。
    これが、インスピレーション・感動であれば良いのだが。 
Ah-ha ああ、そうかと思い至るまでに、発見・気付き、
    そして納得。なるほどねと。
Ahaha まず、自分を笑い飛ばせるかどうか。
    笑いが免疫値を上げて体を癒す。


というようなことが、本には書かれていたかと思うが
詳しいことは忘れてしまった。


私の中のAhはどんなふうに変化しているのか。
何だかイントネーションが随分違うと思う。
「ああ」はともかく、「あーあ」の方が。
「あはは」も随分少ないなあ。免疫少ないよ、きっと。
「ああ、そうか」と自分なりに納得、
「ああ、そういうものよ」と達観できれば・・・。


そんなことをぼーっと考えて居ると、シロは毎日
「はっはっ」と駆け回り、甘えに来て、飛びつき、
汗を掛けないので「はあはあ」と舌を出し、
笑うことは無いけれど、至極上機嫌で生きている。
滅多に吠えない犬なので、息は穏やかだ。


A の音から出そうとすると溜息になってしまう私。
H の音から、自然に呼吸しているシロ。
人間は言葉をしゃべれるように音を出せる分、
悩みも深く、病を道連れにせざるを得ない。
そういう事なのかも。


我が家でもっとも健康なのはシロ、そして娘。
後はみんな似たり寄ったりの私たち。
せめて溜息よりは、頷きや気付き、納得を、
お腹の底から声を出して笑える日々を、
持てるようにしたいね。
そんなふうにこの夏を乗り切りたいね、シロ。

たった今から、ハッピーになる!

たった今から、ハッピーになる!

絵のない絵本 (新潮文庫)

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