Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

緑色の『青幻記』

庭は小さなジャングル、うっそうと茂る。
伸びすぎたカンナの黄色い花は熱帯の色。
あちこちで好きなだけ咲いている鳳仙花は、こぼれだね。
アスファルトの隙間から律儀に一列に並んで、葉鶏頭。
その周りに葉を伸ばす、松葉ボタン。
金柑は白い小さな花、下草に露草。


終わりかけの胡瓜やトマト、なかなか伸びないオクラ。
秋までは持たせたい茄子、もう少し実がついて欲しい苦瓜。
薬味には硬くボロボロすぎるネギ、
まだまだ大丈夫、優れものの紫蘇の葉。
さっぱりお澄ましに使う三つ葉、冥加。
様々なちょっとした葉物、菜っ葉類。

裏庭 (新潮文庫)

裏庭 (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)


切り倒されて、ひこばえばかりが出てくる夾竹桃
海を隔てたお隣の国の花、白や紫の槿。
夕食のデザートに甘みを添える無花果
ムクドリがつついているのか、プルーン。
自然にドライフラワーになった花、紫陽花。
葉蘭の陰にあった紫式部の茂みは年々小さくなり、
ホトトギスの藪も野菜畑に消えた。


柿・桃・銀杏はいつの間にか切り倒され、
カナブンも飛んでこない、大木の消えた庭。
何とか梅だけが生き残っている。
濃いピンクの百日紅は持ちこたえていても、
白はなかなか根付かない。花水木もそう。
薄い色の花はその上品さゆえに、か弱いのか。


天然の日陰を作る朝顔の棚。梔子の上のジャスミンの柵。
日焼けを気にしながら、日向ぼっこをしている観音竹
娘学校からもった帰ってきたミニトマトの鉢。
台杉に子の手柏、楓も一緒に日陰を作る。
ジャングルの中のささやかな日本庭園。
でも、苔が水を含むのが難しいくらい、暑い。


ドクダミもクズも雑草だからと惜しげもなく抜かれ、
小さな雑草たちが醸し出す、草いきれ
美男蔓はポタリと花を落として、咲いたよと自己主張。
水はけが悪く根腐れした門の山茶花
たくましいアロエとサボテンの仲間たち。
ローズマリー、ミント、レモンバームのハーブ。
硬くて愛想の無い月桂樹。


ジャングル、ジャングル、ジャングル。
緑の指を持つ人が丹精をこめたはずだった庭。
植物の中に浮かぶ、『青幻記』。
遠い日の母は美しく。