Festina Lente2

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成長の一瞬

必ず見に来てくれよな、と君は言った。毎年言っていた。
なかなかそういう機会は、というか時間は取れない。
今年で最後だからと、少し仕事をサボって見に行った。
すると、確かに君はそこに居た。
私の知っている君なんだけれど、いま少し、大人になって。


君が好きなことを知っている。就きたい仕事も知っている。
誰に憧れているか、その為、何を鍛えているか、
誰を尊敬しているか、何を続けていこうとしているか。
熱っぽく語る君の中に、若さと純粋さを感じ取り、
自分から永遠に失われているものを思いやって、
その余韻にしばし浸ったのは、つい昨日のことだと思っていたのに。

      

君はいつの間にか、沢山の仲間と共に、新しい場所で、
自分の夢や憧れを形にして、自分の持てる知識と技を教え伝えて、
こんなに大きな計画をたてて、こんなに大きなことをやってのけた。
こんなに沢山の人を集めて、こんなに大きな感動の輪を作った。
君は自分のやったことが、周りにどれほど影響を与え、
充実感や達成感を共にし、人の心を動かしたか、
知っているだろうか。



君はもはや、私の知っている君ではない。
いや、むしろ、私は本当の君を全くわかっていなかった。
いつも、「見に来て欲しい」と言っていた君の毎日が、
どれほどの思い出支えられ、
どれほどの汗と涙で創り上げられていたか、
今、初めて見せて貰って気が付いた、
遅れてやって来た、とんでもない間抜けな大人だ。


成長の場に立ち会うとき、成長の証を見せられて、
その瞬間、私自身が成長させられると共に、浄化される。
形のない関わり、目に見えない関わりのほんの一端、
本の一瞬の交わりの中で生まれた、小さな火花。
見事に火口(ほくち)となり、炎を生み出し、
血の通った場を創り上げた。


ああ、それは、君の青春の1ページ。
私は傍観者に過ぎないけれど、確かに見せて貰った。
たった1度だけの、最初で最後の君のここでの晴れ舞台。
きっと私は忘れない。
こんな出会いも滅多に無いし、きっと別れもそうだろうから。


君の姿は、みんなの中に広がって、思い出になる。
君の未来の礎に、何ものにも変えがたい、思い出となって。
君の不安は自信となり、君の個性は魅力となって、
君をますます大きくする。
いつも同じ場所に佇み続ける私を越えて、
ここを歩いて出て行く君を、見送る日は近い。


成長の手応え。君にとっては嬉しい日。
私にとっても嬉しく、やや寂しくも、やはり嬉しく。

成長するハリー・ポッター―日本語ではわからない秘密

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成長を支えるシュタイナーの言葉

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