Festina Lente2

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少し引っかかること

明け方、「アルカサルー王城」を読んでいた。
大好きだった物語の連載が中断されてから10年以上、
やっと出た最終巻は、物語を随分はしょった形で陽の目を見た。
作者は、残念だろう。色んなネタは、外伝に書くらしいが。
いろんな事情があったにせよ、発表の場が得られなかったことは、
ある意味、勿体無いことだったとつくづく思う。


アマゾンの書評にも書いたように


―作者としてはこういう形で終わらせるのは、残念無念だったに違いない。
ドン・ペドロと同じように。
志、構想半ばではしょるように話を終わらせてしまうということは。
綿密な取材、盛り込みたかった様々なエピソード、正統性を無視し、
簒奪者である勝者から抹殺されてしまった歴史、
時代を生き抜いた主人公をもっと現代に蘇らせたかったに違いない。


ドン・ペドロに対する思い入れと、歴史に対する視点が読者の目を開かせてくれるいい作品だった。
物事には様々な面があり、一概には割り切れない。
この作品もずいぶん長く書き継がれてきた。
それは、掲載誌の都合であって作者としては不本意な形だ。
それゆえ、読者の側も年を食ったが、それを超えて余りある感動が繰り広げられている。
ある意味、読者の年齢層が血を残し、親の思いを受け継ぎ、
伝えるべきことを伝えたいという気持ちをわかる年齢になったということだろうか。


漫画にも漫画家にも旬がある。定年が無い職業とはいえ・・・と
呟く作者渾身の作品、最終巻をじっくりご覧頂きたい―


雑談コーナーを読むと、この13巻が陽の目を見るに当たり、
秋田書店の女性の編集者の力添えがあったとのこと。
おまけに、秋田書店では初の女性編集者らしい。
編集者の世界、出版の世界ってそうなのか。
何だか、さらりと書かれた雑談コーナーにしみじみしてしまった。
もし、そうでなければ、この素晴らしい作品は陽の目を見ずに終わったのか。
そんなふうに考えると。

アルカサルー王城 第13巻 (プリンセスコミックス)

アルカサルー王城 第13巻 (プリンセスコミックス)


そして朝刊で、若桑みどりの訃報を知った。
昨年“人間と性”教育研究協議会(性教協)の夏のセミナーで
講演を聴いていただけに、ちょっとショック。
本にサインを貰った私にとって、結構好きな学者の1人だった。
と言っても、美術史・美学・心理学の関係から読んでいたので、
「え、あの象徴とマニエリスムの人が」と
後年のジェンダー研究には驚いていたのだけれど。


で、読売と朝日と毎日の扱い方が違っていた。
読売では若桑みどりのプロフィールの最後に、
「兄はロシア文学者の川端香男里氏」
朝日では「ロシア文学者の川端香男里さんの妹」
毎日では「ロシア文学者の川端香男里さんは実兄」


時事通信その他では、そういう一言は付いていなかった。
私は個人的には朝日の書き方が、一番嫌だ。
もちろんこれは個人的な感覚だが。
皆さんはどのようにお感じになられるのか。
さてもさても、我が身のジェンダーバイアスのせいか。


何れにせよ、ご冥福を祈る。

薔薇のイコノロジー

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