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ミス・ポター

やっとのことで見ることができた、念願の「ミス・ポター
あのかわいいピーター・ラビットの生みの親。
19世紀から20世紀にかけて、時代の先端を駆け抜けた女性。
その人の人生は、ある意味、私の憧れ。
ヘレン・ビアトリクス・ポター。映画「ミス・ポター」の主人公。

(どうしてハリー・ポッターのように表記しないのだろう?
 重なるのが嫌だから? それとも発音に忠実なのだろうか?
 同じ綴りなのに、不思議。Potter)


自分の仕事を持ち、なおかつそれが創作活動であり、
多くの人に夢や希望を与え、影響力を持ち、
その結果として、生活費を稼ぐことができる。
そして、静かな所に庭付きの1戸建ての家を持つ。
愛する人と共に暮らし、かわいい子供に恵まれて・・・。
夢物語に恋していた頃は遥か昔。
いまや、夢見る力も萎えて来た私ではあるけれど。


小学校時代に「太陽の戦士」を読んで以来、イギリスは憧れ。
尊敬する作家ローズマリ・サトクリフの描く太古の自然と人々。
そして、「トムは真夜中の庭で」のフィリパ・ピアスの物語。
不思議の国のアリス」「ピ−ターパン」の国、イギリス。
擬人化されているものの、動物の愛らしさを失っていない、
ピーター・ラビットと動物たち。ほのぼのした味わいの絵本の世界。


でも、その作者について詳しく知ったのは、娘が生まれてから。
かわいい絵本、食器(これがウエッジウッドだからね)、
様々な雑貨、その他。いつの間にか集まってきてしまう。
普段の何気ない持ち物、ソックスのワンポイントにさえ、
ピーター・ラビット。カフェオレボウル、スプーンセット、
タオルや石鹸入れの類まで。


こちら ピーター・ラビットリンク集

ピーターラビットの育児日記 (ピーターラビットの絵本)

ピーターラビットの育児日記 (ピーターラビットの絵本)

ピーターラビットとビアトリクス・ポターの世界

ピーターラビットとビアトリクス・ポターの世界


ハリウッド風の化粧をしていないレニー・ゼルウィガーの顔は、
「コールド・マウンテン」を髣髴とさせる。なのに、
その口調がお嬢様風の物言いなので、ギャップ。
声は変わらないというのに。(この人の声は丸顔に合っていてかわいい)
どちらかというと、雰囲気としては「シカゴ」の時が好き。
そして、たっぷりとした、それでいて胸元をきちんと隠したブラウス姿。
仕立てのいい、毛織物のスーツ。ぎこちないダンス。
プロポーズへの「イエス」。何とも言えず微笑ましい。


ユアン・マクレガーも「アイランド」の時とは異なり、
かといってオビ・ワン・ケノービの若かりし頃といった風体でもなく、
育ちのよさげな、初心な男性を演じていて、かわいい。
どう見てもやり手の仕事人という雰囲気ではないのが、
またそそられる。(笑)母性本能を? それはともかく。


イギリスの景色、英国の誇る鉄道、駅の別れのシーン、疾走する馬車、
使用人たち。お茶会。マリンルックのセーラー襟の白いワンピース。
畑を跳ね回るウサギ、絵の具と絵筆。薪の燃える暖炉。
水彩絵の具の柔らかな色合い、ナニーならぬ黒尽くめの老女。
女性好みのメロドラマ仕立てのラブロマンス。
メール全盛の今となっては珍しい景色となった、手紙のやりとり。


身分にこだわる生活・思考、ビクトリア朝の名残、
陳腐な様式の権化、滑稽なまでの母と父の対比。
それにしても、働いたことのない両親というものが想像できない。
染みのついた衣服を慈善団体に送る発想。
でも、時代は違えど、子供を支配したがる親は沢山居る。

ピーターラビットと歩くイギリス湖水地方―ワーズワース&ラスキンを訪ねて

ピーターラビットと歩くイギリス湖水地方―ワーズワース&ラスキンを訪ねて

「サウスバウンド」では感情移入するきっかけが無かった。
ミス・ポター」には、主人公の年齢と自分の年齢を重ねて、
両親・仕事・恋愛・結婚、その後の人生を見てしまうので、
否が応でも引き込まれていってしまう。
いつの間にか私もヘリンボーンの毛織の服を着込み、
汽車の座席にもたれ、愛しい人のことを思い、気ぜわしく切なく、
辺りを見回す。主人公の一挙手一投足から目を離せない。


運命は残酷、いつだって。
本当の愛に巡り会えたと思ったその瞬間から、
恋人たちには決して見えない別れの砂時計を、真横に置く。
与えた瞬間に奪い去ることが、神聖な永遠の記憶に繋がるのだとでも、
強調したいかのように情け容赦なく。


それは、自分自身の人生を走馬灯のように振り返らせる。
信じたことが間違いだったと、知り合ったことを後悔するほどに、
運命を呪い絶望することが、予定されていたことと駄目押しでもするように。
単なる別れ以上に、寛容と忍耐を強いる日々を思い出させる。
特にこの季節は、特にこの頃は。
忘れられない物思いに身をやつす日々。
忘れたくても忘れられない秋の日々だから。


子供として、・・・愛らしい動物たちと沢山の本と広大な自然を、
世界の未来に繋がる子供として生み出した人、
ミス・ポター。その映画に付け加えられたアニメーション。
これは、本当に良かった。
物語の世界に生きる人、物語を愛する人ならば、
そのキャラクターが、本当に生き生きと外に飛び出し動くということを
当たり前のように目にし、感じた経験をしたことのある人ならば、
あのアニメはよくわかる感覚だ。


要は自分の感性に合った、経験をなぞりやすい映画は、
観ていて楽。私にとって「サウスバウンド」はしんどかった。
何故って感じるよりも、頭でいちいち理解しないといけないから。
その面白さや演出を、向こうに歩み寄っていく過程が疲れる。。
楽して観ているという点では、刺激が少ない?「ミス・ポター」。
確かに楽に観させていただきました。
シネコンの映画館、独り占め貸切状態だったもんね。


でも、めちゃめちゃ泣ける訳でもなく、じんわり来るだけで、
強いカタルシスなんぞなし。こういうゆるやかな時間、
景色の中に身を委ねるようにして観る事ができる作品が、
必要だった、今の私には、きっと。
実際に南国の強い日差しに耐えられなくなってきている今、
物語の背景・借景でさえもその明るさ・軽さが耐えられない。


心の中に積もった塵を払い、荷解きをして、エプロンを付け
飾り棚やテーブル・部屋に、お気に入りの品々を少しずつ。
そう、自然が癒してくれるはず。
ショールを肩に羽織り、足元に土感じながら散歩する。
胸の奥深くまで、冷たく澄んだ空気を吸い込み、
心の中に湧き上がる物語を紡ぎ、書き留める日々。
そんな生活を夢見ている私。
そんな生活に憧れている私。


現実では、有り得ないけれど。

英国で一番美しい風景・湖水地方 (Shotor Travel)

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ミス・ポター (竹書房文庫)

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