インプラントかブリッジか？

研修で市内まで出かけなければならないので、
かねてからの懸案事項を解決する方向に持って行きたいと思い。
昼間っから市内に出向くとなれば研修、出張。
それも研修先から歩いて3分もしない所に、歯科大学の付属病院が。

インプラントにするとなると、いずれにせよ近所には無い。
1年半も仮の差し歯のまま。かかりつけの歯科医は
何も言ってくれない。これ以上のアドバイスも無い。
インプラントでは、自分の所ではできないの一点張り。
だったら、どこか紹介を、と言っても煮え切らない。
インプラントをしている所って、そんなに推薦できないもの？
紹介して、責任を取りにくい所が多いのか？

2、3件。開業医の先生方、口を揃えてインプラントは･･･。
言葉が無い。仲間内でもお勧めできない治療法なのか。
虫歯も何も無い前歯を削って芯だけにして、
根っこの割れている歯を抜いて、隣と合わせて
ブリッジにするのに抵抗がある。
事故で折れたの割れたのという前歯ならともかく、
健全な上の前歯を削りたくない、それだけなのに。

かかりつけ医は、歯のお掃除をしつこく進める。
歯科衛生士さんも、顔見知りの長年のお付き合い。
でも、仮差し歯の歯茎は、どう見てもおかしな状態。
根っこが、黴菌入ってるんじゃ？
赤く腫れて来るのは何故？
副鼻腔炎、上顎洞の炎症に影響してないの？
不安は、増す一方。

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だから、どうせ研修先の近くに大きな病院があるなら
診て貰って、意見を貰うに限る。
でも、それって大学病院を過信していることになるのかどうか、
わからない。インプラント関係者は大学病院は取り扱い件数が少ないと、
教育機関であって熟練機関じゃないからと、冷ややかな反応を聞くし。

でも、近所にはインプラントは無い。市内は多いがどれがどれだか、
HPと説明会の内容では、甲乙付けがたい。
お金の問題だけじゃなくて、もっと心理的なもの･･･。なのか？
とにかく、紹介状を貰って病院へ。午後の初診受付から。
！？　何て馬鹿でかい、１０階が矯正・インプラントフロア。

いないよ、誰もいない、1人だけ、私以外。
本当に、あんまりこんなことする人いないんだ。
心の中が萎れて来る。空いていて快適な待合室だけれど。
おまけに初診のインテークの先生は若い男の先生で、
学生っぽい顎髭が気になって仕方が無い。
でもって、口の中診るのに、
「インレー？　クラウン。えーと、○番欠損。いや、違う。」
あのう、いつまでかかるの、中診るの。
丁寧なのか、まごついているのか、物凄い不安。

そこへ突然電話。先生呼ばれて出ていく。すぐに戻って来て、
「すみません急患なんで、上の先生に代わります」
こういう表現であっという間に先生が変わるところが、大学病院なのかな。
でも、生まれて初めて歯科で女医さんにお目にかかった！
（厳密に言うと2回目だが、診察してもらう女医さんは初めて）
上の先生と言われて、おじさんを想像していた私はちょっとびっくり。
（自分も相当おばさんのくせにね）

先生は歯茎の状態を見て、眉をひそめた。
仮差し歯の、本来早く処置しなければならない
（つまり抜いてしまわなければならない）歯を放置した期間が
長いので、感染しているから中の骨が溶けている可能性が高い。
その分、インプラントをしたとしても歯茎が上まで上がり、
歯が長くなって、今の様なきれいな歯並びにはならない。
骨は顎から移植手術もできるけれど、それで現在のような状態を、
保つことは難しい、と最初から思いっきりデメリット。

私は人前で話すのが仕事としては本分だから、
口元はきれいに見えて欲しい。
大口を開けて笑うわけでは無いけれど、
歯が長く見えるというのは、一層老けて見える口元、
その1本だけが周囲から浮いて違和感があるだろうなあ。

無傷で残っているのは上下の前歯だけ。他はみんな、
削ったり差し歯だったり、被せていたり、抜いてしまったり、
この年まで来ると、本当に歯や目の丈夫な人が羨ましい。
「先生は女性だからお訊きしますが、私の立場なら、
　どういうふうに治療されますか？」と訊ねてみた。
「非常に難しいですが、治療に何を求めるか。
　自分がどの水準を求めるかだと思います」
うーん、職業上の模範解答だな。

紹介状を書いてくれたかかりつけ医は、
2年前のレントゲン写真を見せて、インプラントに必要な
骨の厚みがあると言っていたけれど、
それは仮差し歯の治療前写真。現在じゃない。
今の歯の状態は、わからない。そういえば、
1年前にも撮っているはずなのに、最新のを見せてくれなかった。
歯科は資料の貸し出しはしない。他の体の病気のように、
セカンドオピニョンを聞きに行く際、フィルムを借りたりできない。

とりあえず、レントゲン写真だけを撮ることになった。
この段階で、15時前。14時から始まったから、約1時間。
これは歯科で過ごす時間としては特別長い時間ではない。
しかし、この時間からではフィルムが上がってこないので、
次回予約を取って説明をと言われた時、なるほど、
さすが大学病院と思った。開業医なら、すぐに現像だから。
抱えている人数と、システムの差だから仕方が無い・・・。

幸いだったのは、女医さんに当たったことか。
同じ内容を男性の先生から言われていたら、もっと辛かったかも。
ま、実際わからないけれど。言われ方次第なんだよね、本当は。
人の居ないインプラント科。午前はもっと賑やかなのか？
市内、あちこちにある（らしい）インプラントセンター。
実際はどこで腕を磨くんだろう、インプラント技術。
巷では人が、アメリカ帰りの若い先生がいいよ、
年取った先生よりもと、したり顔に言う。
・・・そういう噂が飛ぶわけか。

ただ、無傷の歯を傷つけたくないだけなのに。
でも、骨は削るんだよね、抜いた後は。インプラント。
骨を削るか歯を削るかの違いなのに、どうして危険なことをと、
何人かから言われている。あうぅぅ。
根っこが割れてしまった歯は、ドライフルーツを齧った時、
激痛が走って、パーになった。あれからドライフルーツは食べてない。
リンゴでさえも、齧るのが怖くなった。
齧れない。それは、美味しく感じられない、確かに。

16時前。遅い昼食兼早めの夕食をとり、落ち込んだ私の耳に、
クラシックギターとバイオリンの音が響く。
聞けばこの駅ビルでは昼と夕方、毎日コンサートがあるのだとか。
「太陽がいっぱい」お年寄が多く、うがった選曲。
「千の風になって」今風ではあるな。
音が体にしみて来る。思いの外、疲れたな･･･。
そして、それからが本番。研修へ。

複雑な心境のまま。帰宅。22:45
家人と連絡23:45　「そんな大それた手術までして、治す事か？
とりあえず、悪い歯を抜いて歯茎を治してから考えろ」とのこと。
うん、うん、そうだよね。

それにしても･･･。子ども時代、抜歯してまで矯正して、
磨いても磨いても、虫歯から次々に差し歯になって、
どうしてこんなに弱い歯なんだろう。
齧って根っこまでひびが入る差し歯って。
それまで施されてきた治療って、何なんだろ。
・・・複雑な心境です。

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