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バイオハザードⅢ

Resident Evil:Extinction 見てしまった。
この間のTV放映から、俄然興味を持った娘曰く、
「ママにアリス計画を調べる使命を与える」
子どもが見るには怖い映画だからね。
はいはい、君に頼まれなくても、ママは見る予定だった。
ゲームの世界には無縁だけれど、SFストーリーがどう展開するか、
確かめてみたいと思っていた。


まあ、予想通りと言うか、クローンが沢山殺されている
予告を見た途端、もしかしたらと思っていたら、
もしかしての結末、NHK方式、御想像にお任せします、
パターンだった。もしかしたら、また続編作るのか?
っていう含みを持たせた終わり方。


リュック・ベッソン「フィフス・エレメント」の時から見ているけれど、
主演のミラ・ジョボビッチは良くも悪くも変わらない。
異世界から来た人、周囲とは異なる人という役割、
硬質の演技が要求される役柄がいつもなので、
何だかなあと思っていたけれど・・・。
インタビューの時、随分ふっくらさんだったねと思ったら、
お腹に赤ちゃん居たんだね。道理で・・・、
別人のように穏やかで嫣然と微笑んでいた訳だ。

クローン虐殺シーンに始まって、クローン軍団結成か?の
ラストシーンで見る、人工羊水の中の無数のクローンたちは、
母親の中の卵母細胞を連想させる。
本来だったら人の形になるはずのものが、実際は、
人と成ることもなく流されていく。


物語の迫力ある戦闘シーンとは少し横道にずれた所に、
ずーっと関心が行っていた。
多分、2人目に恵まれずに終わった自分。
遅くに結婚したから、元気で若い卵細胞は無数
流されていってしまったんだろうなあなんて、
どうしても考えてしまう自分。


それが、こういう世紀末サバイバルホラーを見ても
結局自分の物語の中に戻っていく。何てもう全くだ。
死んでしまった手帳の持ち主が書いていた言葉。
人、生活、愛、命、Here。
自己犠牲で消えていく数々の命、
限られた命を救うために費やされる命、
希望賭けて戦う姿の切なさ。


娘は言う。「私はさぁ、お母さんの卵の遺伝子から
一人だけ生まれてきたんだよね」そう、その通り。
かけがえの無い一人が、無数にあるはずもなく、
映画の中のクローンのシーンは、実際の卵の成長では無い。
これが現実ならば恐ろしい。映画だから見ていられる。
でも、美しく揺らめく命の夢のようなシーンが、
悪夢を終わらせる為の可能性が、戦力というより、
希望の数だと思って見ていると、一瞬和む。


殺伐としたアンデッドが突然現れるドキドキの後だけに
静かな無数の人工羊水内クローンシーンは、
小波の立つ水面のようにひたひたと心に押し寄せる。
そしてふと思い出す。萩尾望都の「マージナル」のキラも、
地球全体を活性化させる遺伝子そのものになって、
海から世界中へ拡散する存在だったなあ。


殺伐としたバイオハザードの研究室。
チラリと、「アンドロメダ」を思い出す。
あれも、けっこう怖い感染症だったけれど、
アンデッド、ゾンビが出てこないだけましだった。
でも、宇宙から来る病原菌よりも人間が作り出す方が、
何倍も恐ろしいという所が違う。


娘よ、「アリス計画」は名前のようにかわいい計画じゃない。
ある意味救いの無い奈落に、落とされてしまった計画。
不思議の国のアリスが落ちた穴のように。
研究室には、3月兎と帽子屋ならぬ頭のおかしな科学者達。
白い薔薇に赤ペンキを塗るようなトランプ達の国。
バイオハザードは、殺伐としたファンタジーゲームだ。


「私をお食べ」「私をお飲み」大きくなったり小さくなったり、
アリスは変化する。救世主伝説の主人公は、いつも供え物だ。
人々のために供される。ぶどう酒とパンだ。
本当は童話の主人公のかわいい女の子の名前だったはずなのに、
アリス、今ではバイオハザードのアリス。
21世紀のアリスは、かくも凄まじく変貌する。
Resident Evil、これは人間のツケ。
欲望が繰り出す実験の結果が、悪夢。
 

バイオハザードIII (角川ホラー文庫 (H519-2))

バイオハザードIII (角川ホラー文庫 (H519-2))

不思議の国のアリス・オリジナル

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