Festina Lente2

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抜歯と仮歯

11月8日。世間様は「いい歯の日」だそう。(朝刊で知った)
8020運動に程遠い、罰当たりの私はこんな日に抜歯予定。


待ちに待った、いや、とうとうこの日が来てしまった。
前歯を1本抜歯。中央2本の一つお隣、目立つ場所。
ああ、これからブリッジか。インプラントもできずに・・・。
(まだ、前医の処置を根に持っている)
とにかく縦に割れているので、どうしようもない根っこ。
化膿しているから、一刻も早く処置が必要。・・・と言われ、
結局予約を取るのがなかなか難しく、3週間あき。


結果だけ先に発表・・・。抜歯、痛くなかった! 万歳!
小学生時代、何本も抜かれた恐怖の体験をトラウマにしている私が、
声を大にして叫ぶけれど、麻酔注射も痛くなかった!
実は、このブログで親知らずを抜く話が書いてあったので、
参考にしていたのだけれど、本当に痛くなかった。
 

歯を抜く恐怖に加え、麻酔注射の激痛 ― 子供時代の悪夢。
麻酔といいながら、痛い注射。力技で音はメキメキ、心臓ばくばく。
口の中血だらけ。口の中穴だらけ。(最高一度に2本抜歯経験)
あの乱暴な治療は、もう2度と受けたくない。
痛くて泣いて叫んだ子供時代。(麻酔効いていたのか?)


その記憶から成人後も、必要以上に歯医者が怖かったけれど、
ああ、こんなに悩んだ日々は何だったんだ。・・・虚しい。
いや、医学の進歩を喜ぼう。麻酔注射をする以前の、
前麻酔が進歩したのか、麻酔薬自体が進歩したのか、
痛くないのに(唇が垂れ下がってくるような)痺れ感が弱い。
顔の1/4欠落するような嫌な感じが殆ど無い。
これは凄い。(ドルミカム体験も凄かったけれど)
意識があって痛くないのは、硬膜外持続ブロック以来だ。

誰が為に歯は抜かれる? (FOR WHOM ARE TEETH PULLED?)

誰が為に歯は抜かれる? (FOR WHOM ARE TEETH PULLED?)


予約11時。9時過ぎに家を出て、7分前に到着。
4階口腔外科、エレベーターを降りた途端、待合を見て唖然。
34名待っていました。・・・? だ、大丈夫か? 
何時間待たされるのだろう? 結局、呼ばれたのは11:20。
おお、意外に早い。では、他の人々は一体・・・?
すぐに、先生が出てきてくれて、この後の手順を簡単に説明、
暫くお待ち下さいで、中で分待たされること約10分。
その間、かわいらしい女学生さん3人。準備と見学・打ち合わせ。


「朝食は食べてこられましたか?」「体調はいかがですか」
ちゃんと尋ねるよう、実習項目に入っているんだろうなあ。
普通の歯科医では聞かない質問。実は体調は微妙。
正直、この1週間、睡眠不足。
転寝、仕事、入浴、就寝が朝の4時5時じゃあね。
ろくでもない患者の見本みたい。「少し寝不足です」とだけ答えておこう。


何故か、私の座っている椅子だけ上のライトの持ち手(引き手)に、
包帯巻いてテーピングしてある。他のブースはしていないのに。
今日の付き添いさんはファインディング・ニモのペンだった。
前回の兄ちゃんのスパイダーマンといい、皆キャラクターペンを付けている。
子供の患者が来た時の話題作りにする小児科の看護師のようだ。


「子供の頃の抜歯体験が悲惨だったので」とびくつく私に、
学生さん、模範解答。
「思っているよりも早く抜けると思いますよ」
「娘に、お母さん自分の歯にお別れしてきてねって言われているんです。
 娘はどんどん新しい歯が生えてくるので、
 歯が抜けるのは嬉しいみたいですけれど、
 大人は抜いたら生えてこないしねえ・・・。(苦笑)」
「ええ? 生え替わるの、怖がっていないんですか?
 昔は抜けた歯を屋根に投げて、丈夫な歯が生えるようにって
 おまじないしましたけれど、私は歯が抜けるの怖かったです」


あら、お若いのに、結構古い事を知っているんですね?
それに、先生が来るまで間を持たせるように雑談できるのは偉い。
それにしても、シャーカステンに貼られている私のレントゲン、
嫌だなあ・・・。まともな歯の少ないこと。

                      

再び、陰陽師かケン・ソゴル(知ってますか? わかる人は偉い!)
という風情の先生が来て、簡単に説明の後、
「何かわからないこと、心配なことなど、質問はありませんか?」
凄いねー、丁寧だねー。信じられないよ。ソフトだよ。
(今まで掛かってきた歯医者は何だったんだ?)


でもって、歯茎にお薬を塗られて、麻酔注射も「ちくりとしますよ」
本当にチクリで、痛くない! 麻酔をかけても根っこに炎症がある場合、
効きにくいこともあるので、その時は追加しますからと言われていたけれど、
何の、全く大丈夫。でも、さすがに歯を抜くのは力仕事みたいで、
先生、バキボキ音がしていますよ・・・。でも、ほんのわずかの間。
「ああ、見事に真っ二つに裂けてますねえ」


幸いなことに、裂けたまま2本に分かれて出てきた根っこ。
それ以上は折れていなかったので、後からほじくる作業というのが
無くて済みほっとした。それにしても・・・、炎症の痕が生々しい。
神経を抜いた後から割れて、黒く壊死している感じ。
まじまじ自分の歯の「なれの果て」を眺めてしまった。


出血も思っていたほどではなかった。消毒もなし。
化膿止め(前回の残り)と痛み止め(ロキソニン2錠)
最近流行の傷の直し方、湿潤療法と同じなのか、消毒せずに、
血糊の自然な蓋、かさぶたができる方が傷の直りが早いとの事。
かつて抜歯の後3日ほど通って、黄色い液で消毒していたのは
何だったんだろうね。治療の仕方も、変わったもんだ。
「補綴科で治療が終わったら、血の止まり具合を見るので、
もう一度来てくださいね。」はーい、先生。

さて、カルテを持って病院内移動。4Fから7Fへ。
前回は鍵の付いたゴツイ袋に入っていたのに、
何故か今回は青い真新しいマジックテープのカルテ袋に入っている。
トイレに行ったついでに、こっそり中を覗きました。ふーん。
こんなふうに書いてある訳ね。


補綴咬合科。前回の優しい小柄な先生が、どんなふうに仮歯を入れるか、
手鏡で見せてくれてチェックしながら付けてくれます。
私、歯が痛くなくて抜けた安心感と寝不足で、本当に寝てしまいました。
先生、ごめんなさい! ほっとして気抜けしていたんです。
それにしても、今まで付けて貰っていた仮歯は何だったんだ?
抜けた穴を隠すように自然に付けられた1本の仮歯。
美しすぎる・・・。もう、これで治療は終わりですって言われても、
わからないぐらい綺麗な仮の歯。嬉しくて泣けそう。


唇に当たることもない。下の歯とかち合うこともない。
(それは丁寧に噛み合わせを調整していました)
ただでさえ人と会う仕事、話す仕事、多くの人と接するだけに
コンプレックスだった今までの仮の差し歯と、今回の歯。
本当に入れる歯だと言われても良いくらい。
顔の右半分が軽くなった感じさえする。


「先生、私少し眠ってしまいました」と言うと、
「お疲れなんですね」とにっこり優しく返してくれました。
えーん、子供に戻ってしまいそう。ウルウル。
でもって、先生曰く、「傷口のふさがり具合を見てから
ブリッジに取り掛かるので、1ヶ月明けて様子を見ましょう」
はーい。綺麗な仮歯で、半ばルンルンの私。


再度、口腔外科に戻り、先生のチェック。「うん、大丈夫ですね」
そして、「こちらの科は今日で終わりですが、
何か聞いておきたいことはありませんか?」
・・・最近はこんな風に何度も尋ねてくれるものなのか。
もちろん、患者本人としも自分なりに質問する力が必要る。
治療者側は知識のない患者が頓珍漢な事を尋ねてきても、
それなりに対処できるはずだろうけれど、仕事とはいえ、
これだけ丁寧にその都度アフターケアがあるというのは、
何だか別世界に来たかのよう・・・。
歯科大附属病院に来るまでの、今までの世界は何だったのだろう?

                  

顧客の満足度を高めるという点で、サービスはばっちり。
安心感は今までと比較して、例えようもない。
もちろんこちらも休みを取って、時間を十分に空けて来ているし、
飛び込みでも何でもないけれど・・・。


ちゃんと磨いていても突然痛くなって歯医者に行った時、
そこの歯科医から言われた言葉は忘れられない。
痛くなったり、歯茎を傷めるような磨き方をしている患者は
自己管理のできていない馬鹿呼ばわりだったから。
また中学生の時は、人の口を覗き込んで、
「よくまあ、女の子の口の中をこんなに銀色にする医者に
掛かっていたねえ」とも言われた。不可抗力である。


保険診療とはいえ、私が自由に通院できるようになったのは
勤めてから。・・・多少体調が悪くても、通院できなかった子供時代。
痛くなってから行けば良いという親の姿勢。
遺伝だから悪くなって当たり前。そんなふうにさえ言われて。


だから今は定期的に点検、娘の仕上げ磨きも欠かさない。
でも、20台前半までの治療は、やはり思うに、ひどい。
口腔環境は、アマルガムの嵐。被せて、詰めて、差し歯で、八重歯。
娘には、そんな思いは決してさせない。
歯と目は新品と取り替えることができないのだから。


さて、抜歯、仮歯、痛み止め1日分頂いて、1000円少し切りました。
これも信じられない。アンビリーバブル。どういう点数計算?
痺れ感少し残るまま、14階まで上がり、いつかはここのレストランで
一番いいランチ食べて帰るぞと誓って、窓から大阪城を眺めて帰宅。
(寄り道は、ブレイブ・ワンを観た)


痛くない治療。怖くない治療。いい歯の日の治療、最高でした。

歯はヒトの魂である―歯医者の知らない根本治療

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