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やじきた道中 てれすこ

発表会の緊張を解くべく、やってきました。
カンカンベイサイド。クリスマスイルミネーションも美しい。
ココナツカレーとネパール焼きそばで夕食。
ナンをつまみながら、家族で映画。
(こんな生活をしていたら、娘は一体どんな子になるやら)


弥次喜多の珍道中で有名な十返舎一九の「東海道中膝栗毛」を
チョイトもじって、落語の小話を織り込んで、何故かBGMにジャズ。
ラプソディー・イン・ブルー」で始まるオープニング。
往年の名作「ジャズ大名」の受けを狙いたかったのか、
はたまた繁盛亭が賑わう大阪の落語ブームと、
NHKの朝の連続ドラマ「ちりとてちん」にあやかったものななか、
この所ずっと続いているお江戸ブームの一つの流れか、
話題の映画、「やじきた道中 てれすこ」を家族で見に行く。
http://www.telesco-movie.com/(このダウンロード、重い)

 
無論娘は「東海道中膝栗毛」の弥次さん喜多さんを知らない。
小学校の頃、子供用に書き直された作品しか読んでいない私だが、
それでもあの話の荒唐無稽な面白さ、ユーモア、人情は楽しかった。
旅行記、紀行文、滑稽話、人情話、まあどの切り口でもいいのだが、
「生活の中の笑い」を求めた庶民の心に今も昔もあるものか、だ。
先入観の無い娘は、時々知らない言葉を尋ねたものの、
十分笑って楽しんでいた。それでよいよい。
自分の求める「笑いのツボ」から外れていたのか、
家人は今一つだと解せぬ顔をしていたが、まあそれも良い。

弥次さん喜多さんのお笑いにほんご塾

弥次さん喜多さんのお笑いにほんご塾

製作者の意図で、小泉今日子を使いたかったのだろうが、
まあ姥桜の花魁風情を、白馬に乗った王子様を求める姫に置き換える、
典型的な手法にのっとって、王子というか当て馬というか、弥次さん。
先立たれた女房子どものエピソードは付けたし。
相棒の喜多さん。赤穂浪士の討ち入りを描いた歌舞伎、
仮名手本忠臣蔵」をどじった死に損ないのへぼ役者。


そこへ訳のわからない「てれすこ」(及び、すてれんきょう)
単純短気で侠気な、義理人情に厚い江戸っ子を面白おかしく揶揄。
牡丹燈籠や狸の恩返し、その他ネタばれになるけれど、
色んな話を取り混ぜて、楽しめるように仕立ててみました作品。
何も、「てれすこ」を材料にしなくてもできたかもしれないのに、
ちょっとしたユーモア、皮肉、冷笑、訳ありの当節批判をする為に、
多角的な突込みがしやすいよう、あえて間口を広げたかの感。

遊女と地回りの殺伐とした関係、花魁にあこがれる遊郭の客、
長屋暮らしのやもめ、酒癖の悪いへぼ役者、詐欺師、
「嘘付いています」が生業の稼業に、啖呵切ってあざとく生きる。
そんな役でもこなせるようになったか、悪さも一杯したよ宣言の
小泉今日子。「なんてったってアイドル」からここまで来たか。
自分に付けられた値の安さに、地団太踏んでいる足抜け女郎。
さらりと演じられたら、それでよし。


山賊茶屋の毒入りメニュー。夢で遭いたい、今一度。
首まですっぽり土に埋められれば、毒が抜けると聞いたことあるが。
(昔、「ワイルドセブン」のヘボピーがこれで助かったシーンがあった)
瓜と一緒に首っ玉が地面の上で転がる、江戸好みのブラックユーモア。
歌舞伎役者の中村勘三郎が、一見気弱で人のよい新粉職人を
とぼけた持ち味で演じている所が、ある意味、毒気が無くていい。
あの坊ちゃん面が、話のあくどさを上手く帳消しにしている感じ。
一途でおっちょこちょいで健気な役柄は、得な役だ。


それに比べて、猫に心中を手伝われてもしに切れない喜多さんこと、
柄本明の役柄は、色男ではできない立ち回りを必要とする。
ある意味、ばっさり割り切って演技をしないと、お道化られない。
そういう意味では難しい役回り。ある程度動きはあるが、
本来内に秘めた静かな役柄に本領を発揮する彼としては、
こういう役は珍しいような気もする。
もっとも、芝居の中の芝居、劇中劇なんてお手のもんだろうが。


白髪の老カップルの心中場面から、てれすこのお白州。
かんペーちゃんのお代官に、娘、大喜び。
お茶屋のねーさんに、「芋たこなんきん」の人だと反応。
当たり、藤山直美でした。
その他美味しい役者さん、見所一杯あれど、
ハッピーエンドの渡し場面。これ以上ネタをばらすとね。


ちなみに、この映画のてれすこの別名「すてれんきょう」
「捨てれん狂」とかけてその心は「捨てれん、今日」
弥次さんこと、勘三郎さんが捨てられない、
小泉今日子さんの花魁。化かされても騙されても、
すてれんきょうってことかしらね。
それは深読み。


仕事の緊張、発表会の疲れ、映画の前のインド料理。
本日もフルタイムで、我が家は頑張りました。
オヤスミナサイ。

中西進と読む「東海道中膝栗毛」

中西進と読む「東海道中膝栗毛」