Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ボレロ・脳内リンク

晴天、朝からのんびり。自分好みの朝食を作れるのが嬉しい。
ほかほかのご飯に、特別上等のふりかけ。(料亭で使うような)
ゴマドレッシングの掛かった種類たっぷり、野菜サラダ。
大根の葉と椎茸、絹ごし豆腐 黄色い食用菊をほんの少し散らして、
熱々のお味噌汁。娘はふりかけより柚子味噌派。
徳島から買ってきた、美郷村の柚子味噌がもう残り少ない。
家族で大事に大事に食べる、朝食。


昨夜の映画で「ラプソディ・イン・ブルー」を聞いたので、
家人が食事中のBGMにCDをセットしてくれる。
そのほか、「パリのアメリカ人」「ボレロ」などが掛かる。
ボレロボレロか・・・。
そういえば、モーリス・ベジャールが亡くなったんだなあ。
ついこの間の訃報記事。80歳だったとか。


そういえば、話題になっているバレエ漫画「テレプシコーラ」では、
コリオグラファーという言葉が出てくるけれど、私たちの世代では、
「振り付け師」が一般的だった。でも、バレエに素人の私でも知っている、
モーリス・ベジャールの名前はあまりにも有名。
食事時に刻まれるボレロのリズムとメロディーを耳にしながら、
しばし思いは脳内リンクの彼方に飛んでいく

生誕80年記念 ベジャール! [DVD]

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ベジャールと言えば20世紀バレエ団。20世紀バレエ団といえば、ボレロ
ボレロと言えば、ジョルジュ・ドンの名を世界的に知らしめた映画、
クロード・ルルーシュ監督の「愛と悲しみのボレロ」!
映画館で見たのはいつだったか。衝撃的だったなあ。
あの一大オムニバス。第2次世界大戦を絡めて芸術が織り成す祭典、
歌、音楽、バレエ、その瞬間に集う人々の背景、家族、しがらみ。
音楽はフランシス・レイミシェル・ルグランといった大御所。
そして振り付けがモーリス・ベジャール
えーとえーと、うわぁ、この映画も四半世紀前の作品。

愛と哀しみのボレロ(完全盤)

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私が年を取るはずだよねえ。
あの頃はフランス・ドイツ・アメリカ・ソビエト(ロシア)を絡めた作品、
なんて凄いんだ! と単純に驚いていたけれど、
これを観た2年後、ベルリンに私はいた。
数年後再びベルリンを訪れて、翌年、ベルリンの壁が崩れるなんて
思いも寄らなかったなあ・・・。しみじみ脳内リンクは続く。


戦争映画なのか、芸術映画なのか。ドキュメンタリーなのか、ドラマなのか。
とにもかくにもストーリー・映像、音楽・ダンス・バレエ、全てに圧倒された。
中でも圧巻だったのは、カラヤンをモデルとする指揮者の元、
ボレロが演奏される中で踊るジョルジュ・ドンの美しさ。
作り物のお話だとわかっていても、ラストシーンには涙、涙。
感情を盛り上げるのに、静かに激しく揺さぶりを掛けてくるボレロ

         
・・・ジョルジュ・ドンはもういない。彼は、エイズでこの世を去った。
もう15年も前の話だ。そんな昔の話になってしまった。
その前年には、クイーンの・フレディ・マーキュリーエイズで亡くなった。
タフでたくましくて、病気なんて関係ないと思っていただけに、
憧れのミュージシャン・芸術家の病による訃報に落ち込んだものだった。


ボレロ。そういえば、冬季オリンピックアイスダンスペアが優勝した曲。
確かあれはサラエボオリンピック。今は無きユーゴスラビアの最後の輝き。
審査員全員が芸術点満点をつけたトービル、ディーン組の演技。
フィギアスケートが、まるでバレエそのもののように感じた瞬間。
悩ましくも美しい演技に、胸をドキドキさせて聞いたボレロ
目頭が熱くなる思いで見入ったボレロの演技。


世界史で覚えたバルカンの火薬庫、ユーゴスラビア
セルビアボスニア・ヘルツェゴビナクロアチアサラエボ
第一次世界大戦、そして第二次世界大戦
斬新なかわいいユニフォームで、明るく華やかな祭典。
あの悲惨な戦争から復興した証として、サラエボは平和の象徴の祭典、
奇跡の冬季オリンピックとして私の記憶に残った。
共産圏で初めての冬季オリンピック


それから5年後、私はユーゴスラビアを訪れ、ザグレブを観光し、
メジュゴリエを訪問し、モスタールの橋から飛び込む人を見て驚き、
アドリア海を眺めながら、スプリットの海で泳いだ。
共産圏とは思えない垢抜けた観光地。
のんびりしたバス旅行の谷間の景色に見え隠れする、滑走路。
チラリと垣間見える軍備。
それは、平和なユーゴスラビアを見た最後。
         

2年後、懸念されていたチトー体制、民族融和主義は崩壊、
火薬庫の火薬は結局、埋火から飛び火、民族浄化運動。
町も橋も壊され、アドリア海の真珠も砕け散った。
現在サラエボオリンピックのメインスタジアムは、ボスニア紛争で破壊され、
紛争で亡くなった人々の墓地になっている。
・・・あ、そういえば脳梗塞で倒れたサッカーの監督、
オシム監督はサラエボ出身だった。


ボレロって楽しい思い出、無いのかしら。
何だか崩壊のイメージばかりが湧いてくるよ。
ちょっと脳内リンクでボレロを聞きながらしみじみしている私に、
娘が追い討ち。「おかあさん、この曲前に聞いたね。テレビで見た映画、
交渉人 真下正義』で、シンバルが鳴ったら爆発する仕掛けの曲だよね」

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あうぅ。娘よ、君の中ではラヴェルボレロ
そういうふうに記憶されていた訳? ま、崩壊のイメージではあるな。
シンクロしているのかな。娘の一言に朝食の後片付け時、愕然とする私。
そういえば、「舞姫テレプシコーラ」の六花(ゆき)ちゃんは、
姉の千花ちゃんの死を乗り越えて、バレエの振り付けをするのだった。
コリオグラファーとしての才能を開花させていくんだったなあ。
ベジャールボレロ、バレエに脳内リンクは戻っていくものの、
崩壊・犠牲・戦争、死のイメージは消えない。


外は見事な秋晴れ。晩秋の空が晴れ渡る。
心の中のボレロ繋がりの脳内リンクの暗さとは好対照。
これもまた、私の心の秋の景色。

ボレロ~ラヴェル:管弦楽曲集

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