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新しいFAX電話

連休最終日、とうとう我が家のFAX電話が新しいものと交代。
よく働いてくれたこの黒いFAX電話、12年間。
思えば内地留学する時に、生まれて初めての自分だけの電話。
ハンドコピー機能も資料整理に活躍。子機も1台。
スーパーLCR機能もあって、当時は賢い機械。


実は内地留学するまで一人暮らししたことは無かった。
家電は全て家族と共有。何しろ昭和一桁の古い世代の親。
長電話なぞもってのほか、電話は用件のみの人たち。
要領よく話せないのは、頭が悪いのかと怒鳴られる始末。
友達とおしゃべりを楽しむなぞ、とんでもない。
我が家にはダイヤル式の電話一台しか無かったのだった。


一人暮らしをするため、あれこれ買い揃えるのは楽しかった。
仕事を離れ、勉強する時間、どれだけ本が読めるだろうなんて、
相変わらず「トウが立った文学少女のなれの果て」だった私。
ただ、寮に電話はあったもののレンタル電話だった。
有線ではない子機付きに憧れ、FAX電話を購入。
それだけで外界に繋がっている様な気がしていた。
実際、寮は離れ小島にあったといっても過言ではなく、
原付しか持っていない私は、遠出もできず孤立感に苛まれた。

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買い物するにも渡し舟に乗って対岸に渡る生活。
いくら田舎の都会とはいえ、大阪。
市内にパソコンの部品が売っていない、県庁所在地まで買い物に、
という状況には辟易して、さすがにホームシックになった。
不便で友達も居ない環境で、まだパソコン通信もしたことが無かった頃。
無論、携帯電話はまだまだ市民権を得ていなかった時代。


黒いFAX電話は、電話だけではなく手紙も運んで来た。
FAXというのは本当に便利なリアルレターだった。
電話で話せなくても、「文字(絵)になって残る」というのは大きい。
当時、知り合ったばかりの家人から仕事の合間に送られてくる
絵入りのFAXには心を慰められたものだ。電話はもちろん長電話。
深夜を厭わず、せっせと二人の距離を繋いでくれた思い出のFAX電話。
それが、いまや線はぼろぼろ接続も悪くなり、修理したが今一つ。


じいじ、こと父がFAXを使いすぎたのか、寿命なのか、
子機は健在なのに親機の方がへたってきたのだ。
どうしようもなく、本日お役御免で新しいものと世代交代。
如何ともし難いのはわかっていても、思いで一杯の電話との別れが
辛くてたまらずシクシク涙ぐんでしまった私。
娘がびっくりして、よしよしと頭を撫でてくれた。
(まったくもって、親子逆転)


どれほどこの電話で話したことだろう。逢えなかった日々、
逢いたかった時間、どれほど語り合ったことだろう。
仕事柄離れて暮らす私たち、別居結婚で足掛け10年、
その生活を支えてくれたのは、IPフォン機能を持たせたとはいえ、
同じ電話機でずっとやってきたのだ。
(両親の部屋には、まだダイヤル式の電話が捨てずにある)


感傷的な私をよそに、娘は新しいピカピカの白い電話にご執心。
ベルの音をメロディに切り替えてとーちゃんと設定している。
何と着メロはホルストの『惑星』の「木星
こういうのが好みだったのか・・・。
(ちなみに、家人宅の呼び出し音は「森の熊さん」)


今までの電話より一周り持ち手の部分が小さくなり、
携帯電話と殆ど変わらない大きさ、従って、
数字も文字も見にくい。老眼の私には苛々する表示。
娘の小さい手には丁度よい持ち易い大きさなのかも知れないが。
・・・まあ、機械も使い手も代替わりかも。
世代交代だよね。きっと、自分の携帯が持てるまで、
この電話が娘にとって、大事な大事な外への入り口。


電話に込められる思いも、世代交代。
かーちゃんととーちゃんの時代が少しずつ通り過ぎて、
季節が移り変わっていくように、モノも代替わり台代わり。
一抹の寂しさを抱えつつ、新しくなる家電その他の身の回り。
成長していく娘と共に、少しずつ移り変わる我が家の景色、
たたずまい、様々な物思いのかけら。
時の移り変わり。

ホルスト:組曲「惑星」

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三日月

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ネットワーク科学の道具箱―つながりに隠れた現象をひもとく

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