Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

教える現場の現実

本日は梅花祭。菅原道真の命日です。
ニュースを見て、ああそうだったと思い出しました。
北野天満宮のHPなど興味のある方はご覧下さい。
それに大学の2次試験も始まりましたし。
何と言っても学問の神様ですからね、菅原道真
太宰府天満宮はこちらからどうぞ。


飛梅の伝説をご存知ですか? 梅をこよなく愛した菅公を慕って
梅の木が京都から、流刑地太宰府まで飛んで行ったのだとか。
父はこの歌が好きで、この時期よく口ずさんでいました。
「東風吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」


受験生にとっては「東風」の漢字の読み、主とは誰か、口語訳 
な〜その陳述の副詞の意味、体言止め、
「吹かば」と「吹けば」の違いを説明できるかどうか、等々
文法の知識を問われる古文問題凝縮の和歌ですが、
知識や時代背景を優雅に教えることのできる授業は、
中学・高校ではなかなか難しいのが現状。


本来ならば季節に応じて柔らかい心を育む典雅な趣きに
心ゆくまで浸ってもらいたい。今、現実は受験シーズン。
雪解けまではまだ遠いというのが実情でしょうね。
おまけに、中学・高校ではこういう古典の授業は、
殆ど行われなくなってきています。寂しいことです。

菅原道真―詩人の運命 (ウェッジ選書)

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鬼・雷神・陰陽師 古典芸能でよみとく闇の世界 PHP新書

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そして、中・高では次のような授業が確立される事が必要だと、
クローズアップ現代で報道されていました。
その現場にいるだけに、哀しいことなのですが。



2月25日(月)放送より引用(NHKクローズアップ現代)
深刻化する
  “デートDV”・恋人から暴力

「メールに返事がないと突然殴られた」「お風呂やトイレまで行動を逐一報告しろと言われた」。今、10代や20代の若者の間で交際相手から一方的に暴力や嫌がらせを受ける"デートDV"の被害が深刻になっている。内閣府が発表した調査結果では、20代女性の5人に1人以上が精神的・身体的暴力を受けた経験があることがわかった。背景には相手を束縛することが愛だという恋愛幻想があると指摘されている。さらに、若者のコミュニケーションの手段として欠かせない携帯電話やメールが束縛や監視の道具となっている実態も明らかになっている。なぜ若い男女の間に暴力が広がっているのか。被害の実態と対策に迫る。
(NO.2542)


携帯電話に依存する異常な事態については、
ポケベルの全盛期とは比べものにならないくらい恐ろしい、
コミュニケーションのありようを、大人は知らなさ過ぎる。
「すぐに連絡が取れる」事が相手の行動を逐一追跡したり、
束縛したりすることに繋がり、自立できない若者同士が、
束縛を愛と錯覚することから大きな弊害が生まれている。


デートDVドメスティックバイオレンスのその一段階前。
恋人同士の段階で相手を束縛し、暴力を振るう。
言葉・行動・身体・性、様々な暴力がなされているのに、
被害者も加害者も意識していないことも多い。
愛しているからこその行動だと誤認している。


10代20代の女性の専業主婦志向や、早婚晩婚2極化、
そういうものには余り動揺しなかったが、
男女平等の教育を受けてきた世代のはずなのに、
「愛しているなら束縛は当たり前」とか、
「暴力を振るっても謝れば許していい」等、
お互いを尊重する以前の、自尊感情が低い希薄な人間関係、
閉塞感一杯の周りが見えていない交際をしている現実に
どうしようもない憤りを感じる。


暴力を振るわれる恐怖感から、相手に従う事が当たり前になり、
最後には1分に1回メールをしていたという女性。
信じられない世界だが、実際若者はメールに返事をするのに必死。
すぐ返事をしないと友情が無い、愛情が無いの世界。
相手を信頼するという事と何かを、履き違えているとしか思えない。


TVでは男女交際の低年齢化に伴って、どういう交際が正しいか
学校現場で教育する必要がある。ある一定の年齢以上になってしまうと、
刷り込まれた思い込みの矯正が難しいとのこと。
岡山県の教育を例に挙げて、中学2年の授業風景が取り上げられていた。
(実際には中学でも遅く、小学校から段階的に導入すべきだろう)


人権教育、性教育、道徳、総合的な学習、何でもいいけれど、
正しい人間関係の結び方の一環として、予防教育的に
デートDVの授業を取り入れていく必要があるのは確か。
携帯電話の遣い方も同時にね。
「愛しているなら、やきもちを焼くくらい束縛して欲しい」と
デートDV授業アンケートに書いてくる女子。
メールにすぐに返事をしなかったと
「お前なんかどこかへ消えろ、うざい」と廊下で怒鳴る男子。
学校での日常の光景だということを、親は知っているかな・・・。


「どうして早く相談してくれなかったの」と責めては駄目、
「辛いことを打ち明けてくれてありがとう」と、
相談を受けてくださいねと番組では言っていた。
相談を受けやすいのは友達だから、同年齢の生徒がまず
このことについて知識を持たなくては駄目なのだと。
大人よりも身近な友人を頼りがちなこの年代、
草の根ピア・カウンセリング果たしかに必要かも。
そして、できるだけ信頼できる大人に相談を。


知識なのか知恵なのか・・・。
優雅な梅花祭のニュースの次に見た、この番組の重いこと。
そして日々、こういう問題に接していなければならない毎日。
庭の花、季節の移ろい、小鳥のさえずり、雲の行き来に
目を遣り、香を愛で、思いを馳せる日々を、
古来から受け継がれてきた「いにしえびとの思い」を
伝えるような授業をする時間が現場には無い。


後手後手に回るような対処療法的な、生活訓練的な授業。
予防教育とはいうけれど、結局は心を育てるための授業。
でも、そこには人間も自然も大切にできない現実、
虚ろな毎日を振り返るゆとりが無いという事が、抜けている。


携帯電話という麻薬に溺れている人間を、
今の教育力で離脱されることなどできるのだろうか・・・。
どんなに良く効く薬だって使い過ぎは良くないのに、
歯止めの利かない携帯が、コミュニケーション能力を奪い、
暴力を促進しているということを、どうやって意識させるのか?


春風の気配を察知して、そばにいない人の気持ちを思い遣り、
馳せ参じるような熱意を持って生きた、
飛び梅」のような在り方はもはやというか、
・・・やはり伝説にしか過ぎない。
そんな世の中になってしまった。
「心の春」は遠い。

デートDV防止プログラム実施者向けワークブック―相手を尊重する関係をつくるために

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デートDV 愛か暴力か、見抜く力があなたを救う

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