Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

木原敏江の本2冊

私は並の文学少女だった。だからそこそこに本と漫画に囲まれている。
しかし、年は取りたくないもので、なかなか新しいものを受け入れられない。
感覚と言うか、感性がある一定の好み・趣味・路線で、メビウスの輪
別世界にはなかなか行かない。基本的に1970年代思春期前期、
80年代ひよこ社会人の人。TV漫画と青春ドラマで育った人。
そして、ゲーム世代ではない。音楽はプログレとハードロック。
テクノは疲れる世代。


そんな私が高齢出産でママになる前に、部屋を大掃除した。
生まれてくるベビーが、大事な蔵書に落書きしたり破ったりしないように。
大量の漫画本も闇の彼方、お蔵入り。出産直後は目を使うのは駄目。
本はご法度。しかし、親に連れられ図書館通いの娘、
本大好きの女の子に育った。ついでに、漫画も。
しかし、肝心の漫画本は物置の奥。
彼女が読んでいるのは、今現在、私が買っているもの。


・・・そう、このトシになっても今だに漫画好き。
三つ子の魂何とやら、ではないけれど、昔の漫画家が好き。
新しい漫画家のファンにはなかなかなれない。
それは、漫画に限らず小説も同じ。
そして小説に近い文学の香りがする漫画が好き。
基本的には言葉遣いの巧みな漫画、
絵と言葉の双方がストーリーを引っ張っていく漫画が好き。


ストーリーだけ粗筋のみで、言葉遣いの下手な小説は没。
台詞回しや勢いだけで絵が粗い、荒くたいものは嫌。
余り幼すぎる画風や、4コマ漫画で終わってしまう単発は駄目。
基本的に言葉遣いの上手いストーリテラーが好き。
絵の上手な、それなりに雰囲気のある語り手兼描き手が好き。
そういう意味では、いい時代に育った私。
そんな漫画家の中で、NHKが取り上げていた描き手。
言葉に執着している事をわざわざ取り上げた漫画家の中に、
木原敏江がいる。最近2冊本を出した。


時代の古いお話のキャッチフレーズがこんな感じ。
星降る 時降る 都古る 袖振る 魂(たま)震る
うたは 奮る ふる・・・。

大江山花伝 (小学館文庫)

大江山花伝 (小学館文庫)

風恋記 (前編) (小学館文庫―夢の碑)

風恋記 (前編) (小学館文庫―夢の碑)


そのうち1冊がこれ。
木原敏江の全盛期に描かれた「夢の碑」シリーズの
名残りを感じさせる作品といえば、好きな人には通じるだろう。
もっとも、その頃の香気というか、嫣然とした濃厚な味わいには程遠い。
どちらかと言うと円熟期の「軽み」に匹敵するような、
筆のすさび筆遣い、散らし書きまで行かないまでも、
念の入った丁寧なリハビリに近い雰囲気がするのだが、
久々の「木原敏江節」が聞こえてくる作品。
『ふるふる―うたの旅日記』

ふるふる -うたの旅日記- (KCデラックス)

ふるふる -うたの旅日記- (KCデラックス)

題名からして、うた―和歌を念頭に置き、旅日記。
紀行文ならぬ、道行き。ふるふると平仮名で書かれた言葉は、
オノマトペならぬ掛詞の世界。
ふるもの、ふりゆくもの、我が身一つではなけれども・・・。
ふるふる、ふるいもの。
古、振る、降る、フル、ふる、奮う、篩う、揮う、震う、
どんな字が思い浮かびますか?
どんな言葉を連想しますか?


和歌の世界、忘れられた言霊の世界、心ふるえる思いの溢れる世界、
ふるふる日記に出てくる主人公たちが面白い。
心を込めて読経をするとみんなが眠ってしまうと、
思い悩んで修行する僧。類まれなる美声の持ち主。
女装も得意で文芸造詣深い遊行の芸人、ちょっと盗人が入っている。
そして、何故か誤って僧に取り付いた女性の霊、
本名を忘れてしまったおぼろ式部。
後に式子内親王の霊という設定ですが。
面白い道中の仲間でしょう?続編が楽しみです。


そして、紫式部清少納言を主人公とした漫画が好きな娘に、
この本がとっても受けました。かーちゃんとしては「しめた!」
お蔵入りになっていた漫画本を少しずつ持ってきてみようか、
そんな画策をしています。勉強勉強と血眼にならないといけない立場、
にはまだ少し時間があるでしょう。
御所の公開には一緒に京都に行けるかも。
今年は源氏物語絡みで、宇治にでも行ってみようか。


親子で遊べる、そういう思いを抱かせてくれた漫画の取り持つ縁。
親の読んでいる本に興味を占める、たかが漫画なんですが、
それでも嬉しい。他愛ない親の思い、単なる親ばかですが。
親子ではまっている川原泉に加えて、木原敏江。いいぞ・・・。

千歳の再会 (大正浪漫探偵譚) (クイーンズコミックス)

千歳の再会 (大正浪漫探偵譚) (クイーンズコミックス)

それからもう1冊、本が出ていました。
『大正浪漫探偵譚 千歳の再会』この本はシリーズもの。
大正浪漫探偵譚は何冊も出ているので、この最新刊が一番面白い、
というわけではないのが残念。ただ、推理もの恋愛ものの娯楽、
と言うには惜しいほどの浪漫の香り、文芸や耽美が描かれている。


漫画家の美意識、言葉遣い、生活観、ギャグ、ストーリー展開、
そういうものに癒されるとでも言えばいいのでしょうか。
わくわくしながらもしみじみ、そういう漫画にほっこり来る。
親子で春先、ほっこり、炬燵で漫画。
朝はBS『ちりとてちん』、夜は炬燵で木原敏江
今週はこんな親子の時間になりそうです。

<ANIMEX 1200シリーズ>(140)摩利と新吾-ヴェッテンベルグ・バンカラゲン-

(140)摩利と新吾-ヴェッテンベルグ・バンカラゲン-

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  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
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