Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

観用少女(プランツドール)と娘

歯医者の帰り、娘に約束していた「小学三年生」を買いに行く。
近所の本屋は潰れてしまい、駅前の大きな本屋へ。
ここは古本屋も兼ねているので、立ち寄らないようにしている。
本好きな人間が、古本屋のセールに引っ掛かったら、
目も当てられない・・・というのは、経験済みの人にはわかるはず。


お目当ての本をすぐ見つけた。さすが駅前大きな本屋。
そして、運の悪いことに春のセールが始まっていた。
古本屋の恐怖のセール、それは1冊100円。
5冊買えばおまけに5冊、早い話が1冊50円と思うでしょ?
5冊買えば、6冊でも7冊でも10冊まで500円。
人間の心理として沢山買いたい、手に入れたいと思いません?
見事に嵌りました、付け込まれました。
一体買ってどこに置くのよ?


最初は小さな場所を取らない、ちょっと鞄に偲ばせる、
そんな本と見ていた。日経ポケットギャラリー2冊ゲット。
ルノワールドガ。ああ、いつでも美術館気分。
そして、仕事柄ちょっとした気分転換に必要な本。
「天使がおしえてくれたこと」

この辺まではごく普通に選んでいたんだけれど、
はっと気が付くと、こんな本を手に取っていた。
そうか、娘の生まれた年にこんな本が出ていたんだね。
そして、このブログを書き始めた頃、亡くなったんだった。
娘のぎくりとする鋭い発言を今でも覚えている。
http://d.hatena.ne.jp/neimu/20061112

おじゃる丸のまったり人生のススメ

おじゃる丸のまったり人生のススメ

そのせいか、こんな本まで目に留まってしまい、
思わず、娘と私の会話を記録に取っておくんだったと、
今更ながら後悔する羽目に。
もう、あの保育園時代の鋭くもかわいい突っ込みは・・・。
今は何か言われると、かわいい以前にがっくり来るか
呆れるか、腹が立つかだしね・・・。



最後に見つけたのは、川原由美子の『観用少女 プランツドール』
別にその手の趣味があるわけではないが、誤解されそうな題名。
観葉植物ではなくて、観用少女だから。
それも人間の愛情と暖かいミルク、砂糖菓子で育つ植物の少女。
人間の対象に対する愛情の示し方、表し方を様々な角度から描き、
お店の人間の営業用の言葉、べらぼうに高いプランツドールを巡り、
悲喜こもごもの人間模様。でも、最後に哀しくも癒される。


「極上の少女の笑顔」の為に奔走する人間が何とも言えず・・・
これって、娘に対する私たち、両親の有様。
でも、プランツドールと違って、いつまでも夢と愛の砂糖菓子ではない。
成長しない人形ではなくて、赤裸々に生活して成長していく。
食事がミルクと砂糖菓子では済まぬ。ドレスで生活でもない。
子育ては楽しい。しかし、戦いというか自他共に「闘い」の部分もあって、
ともすれば若く幼い娘に・・・負けそうになる。


プランツドールは高価だ。誰にでも微笑みかけるわけではない。
彼女は買ってくれる客を選ぶ。相性が悪ければ目も開けない。
それがプランツドールの意思表示。
人間の子供はもっとしっちゃかめっちゃかだ。
家の中でじっと家族の帰りを待っているなんて、「植物」ではない。
新学期、アラレモナイ話題で悲喜こもごも、てんやわんや。


持たせたはずの物を、壊したり失くしたり探したり。
大声で起こし、追い出し、迎え入れ、ピックアップし、
かーちゃんの仕込が悪いのか、保育園時代より反応が鈍い気がする。
いや、年々鈍くなっているのは自分の方か。
愛情、愛情のかけ方・育て方にも色々あるけれど、
マンガの中の「観用少女」を読んで改めて、
実生活をしみじみ振り返る。


物語の世界はこの世ならぬ美しさやメランコリー、騒動に満ちている。
でも、それは日常生活の卑近なてんやわんやの中にも満ち満ちている。
犬丸りんさんがいなくなっても、『おじゃる丸』のアニメは続き、
メインテーマの歌が変わってしまった新学期でも、
人々が追い求める「まったり人生」は変わらない。
娘は自分で言う。「私はおじゃる丸より年を取ったよ」
そう、いつまでも保育園児じゃない。5歳のおじゃる丸じゃない。
柳沢教授の孫、華子ちゃんじゃない。


娘は尋ねてくる。「私は幼児?」
私は答える。「違うよ、もう小学生だもの」
娘は応える。「じゃ、児童だよね」
そう、彼女はプランツドールではない。自分で考えて動く。
極上の笑顔や美を持ち続けるはずもない。
その喜怒哀楽で、親を巻き込んでくる。
私の人間としての当たり前の生活は、
どんどん成長していく君と共にある。
怒声とキンキン声の朝から始まろうと。

観用少女【完全版】 明珠 (コミック愛蔵版)

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観用少女 1 (ソノラマコミック文庫 か 38-1)

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