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足元を支える買い物

世間ではドクターショッピングという言葉がある。
しかし、医者は買えない。物ではないのだから。
ついでに金を頼みに医療の質を上げることができるかどうか、
そういうことが言いたいのではない。
ショッピングできるのは単に物だけ。
頼れるのは、わかってくれるお医者様だけ。
でも、次々にお医者様を変えることなんてできない。


世間では『かかりつけ医』論議がかまびすしい。
かかりつけの内科と外科と歯科と耳鼻咽喉科と・・・、
一人のお医者様が何もかも、なんてありえない。
科を変えて診察してもらわなければ始まらない。
大きな病院に行けないから、近くのクリニックに通う。
もしくは口コミで評判のいいところに通う。
お医者様は物ではないけれど、ショッピングするが如く
ブランドや性能にこだわって求めて歩く。


目に見えるものに支えてもらいたいから、人は物を買う。
本当に欲しいものはなかなか手に入らない。
ほんのちょっとの言葉がけ、思いやり、気遣い。
そういうものが手に入らない時、口寂しさや物欲しさが
軽い財布を直撃するような衝動を掻き立てる。
だから、藁にもすがるような気持ちで何かを買う。買ってしまう。
まあ、どこぞの壺や掛け軸なんかを買いたいとは思わないけれど。


誕生日月、生まれ月。古来から自分の体が敏感になる月だという。
良くも悪くも自分の体を左右するようなことがあるという。
月の満ち欠けに支配される生命のリズムのように、
何がしかのバイオリズムが働くので、体調に影響が出るのだろう。
もちろん気分的なレベルから、精神的なものにまで影響があるのかも。
だから、先人曰く。厄年だの、○寿だの節目をこしらえて、
自分の年齢を意識するようにさせたのだ。


4月、おうし座生まれの私。それでなくても猪突猛進生まれの私。
仕事柄、世間一般、4月が物事のスタート。
浮き立つ気分と新しい事柄への不安をないまぜにして、時間が過ぎる。
更年期、否が応でも体調は急変する。体力が持たなくなる。
ある日突然できていたことができなくなる、ぐらつく自分自身の感覚。
足元から腰から、目から耳から、歯から肌から、何もかもが変わっていく。
避けられない更年期の症状に、プラスαのストレスとプレッシャーは続く。


ふらつきやめまい、耳鳴りや微熱、肌のくすみたるみ、かさつき、毛穴。
いつもと同じように化粧していても、仕事用の顔が作れなくなる朝。
ものを食べていても味がしない、噛み切れない違和感。
歯にしみる、歯がぐらつく、ほほの奥が痛み響くような感じがする。
匂いがわからなくなったり、ものすごく気になったり、
頭痛肩こり、開かない肩甲骨、臀部のしこり、ふくらはぎの痛み、
足裏の反り返るような痛み、手足のむくみ、だるさ。
何もかもが芽吹くように、次々と訪れては、ダメ押ししていく。
「若いつもりで油断していると、知らないよ。」
体は幼児返りをした子供のように、イヤイヤをする。
なだめすかし方を誤ると、持久戦だ。


ドクターショッピングをしたくなる。あちこち回っているうちに、
本来の痛みが気分の悪さが、どこかで何かの拍子に消えるのではないか。
そんな白昼夢が訪れる時が有る。でも、ありえないとわかっているので、
ごくごく普通の買い物をする。お金を出して癒しを、納得を、安心を。
自分自身への保険を、生活するための土台を、気安めでも心のお守りを。
物に頼ってどうにかなるなら、あっちへふらふらこっちへふらふら。

実は、私の右足は左よりほんの少し大きい。そしてよく浮腫む。
中学生の時の捻挫から始まり、大学生の捻挫、
社会人になってからの関節炎、中足骨亀裂骨折、筋部分断裂、
出産後に出た膝の痛み、甲の痛みは全て右側。
古傷が影響しているのは間違いなく、足首の靭帯が緩々だと言われる。
多分そういう右を庇ってずっとずっと生活してきたのだろう。
反面、肩こりや腰痛、足の痛みは左に出やすい。
痛みが出るほど頼りない相棒を庇って、共倒れになりつつある左。


まず、去年のクリスマス。自分にプレゼントをする。
自分用のオーダーメイドブラジャーを作った。
有る意味、それまでの息苦しさや肩こりは解消された。
体を締め付けないサポート力、着心地の威力は凄い。
全面的にではないが、上半身は幾分軽くなった。


今年の誕生日、読書用眼鏡こと老眼鏡にははまだ抵抗しているが、
気分転換も兼ねて、デザインの異なる眼鏡を手に入れることにした。
来週の受け取りが楽しみ。二つのうち一つは軽いプラスチックレンズ。
今までのガラスレンズに加え・・・。きっと顔が軽くなるはず。


そして昨日。ブリッヂの為の歯科大附属病院通院の帰りに
目をつけていたシューフィッターのいるお店で、
足に良いと言われているドイツ製の、コンフォートシューズを購入。
いわゆる医療用中敷に匹敵するような足底板の入った靴。
高価なウオーキングシューズと思っていただければいい。
長時間の立ち仕事をサポートしてくれて、ややおしゃれにも見える
あからさまな運動靴、ナースシューズに見えないもの。
デザイン優先ではなく機能優先の靴で、足元から支える狙い。


これを試してみて、良ければよし。駄目ならばオーダーメイドも辞さない。
もう、トレッキングシューズばかりはいて出張に行くわけにもいない。
建物の中を走り回っているわけには行かない。
足元だけスニーカーに違和感を覚える年齢になってきてしまった。
幸い外反母趾なんかは無いけれど、靭帯そのものが、
年齢的なものと運動不足と体重から、足に負担が掛かっているのは確か。


整形外科の先生は、骨に異常は無いの一点張り。
体重減らしてね、運動してね。わかってますって。
臨月に近くなってきた体重。まずいってわかってますって。
衰えてきた気力・体力。モチベーション。
身に着けるもので自分を支える。
緩んだ心と体を支える、そんな買い物がしたくなる。
おばさんだと笑わないで。
若くは無いことを知っている。だから、
心にピンと伸びた背筋を与えてくれるものが欲しい。


ドクターは買えない。健康は買えない。自分の力だけでは。
小さなストレッチ、サプリメント、それだけでは癒せない。
現実の痛みや棘は消せない。落ち込みはそぎ落とせない。
見えにくい視野を明るくすることはできない。
だから、自分に少しずつ付け足すの。
化粧品のように、効果があるかどうかわからなくても、
とりあえず塗ってみるように、付け足す買い物をする。


自分が底値よりまずいって思いたくないから、
付属品をつけてみる。心につっかえ棒が必要なように、
体にもご褒美と称して、薬や治療ではないサポートが欲しい。
ショッピングに依存しない程度に、ドンと買い物がしたくなる。
それが、誕生日前後の私。絶不調の私。
本日から足元をデンマークとドイツの靴が支えている。
気は心、そして、物にも期待する、藁にもすがる私。