Festina Lente2

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再入院10日目

(この項5/11 UP)

さて、このところ、状況が状況なのでいつも愚痴っているが
全く何の楽しみも無いわけでは無い。
人生万事塞翁が馬。捨てる神あれば拾う神あり。
幸いなことに病室は最初2人部屋状態。超贅沢な環境。
お隣さんは骨折で入院中、小学校の男の子2人のお母さん。
学校行事、PTA、担任の先生とのやり取り等など、
小学校も学年も違えど、家事育児近所付き合い全般、
先輩ママに色々教えて貰うことは多く、話の種は尽きない。


子育て談義、家族について、圧力鍋を使ったお料理、
要は女性として母親として妻として、色々話題があるのだが、
一番嬉しいのは彼女が読書家だったことだ。
それも、似たような趣味・傾向だったのだ。
彼女は私よりも若い「キャンディキャンディ」の世代だが、
読んだ漫画・小説には共通項があった。

こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり

こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり

しゃばけ読本

しゃばけ読本

その一つが畠中恵。そう、あの「しゃばけ」シリーズの。
たまたまこの入院中に図書館の予約本が病室に届けられた。
しゃばけ読本」と「こころげそう―男女九人お江戸の恋の物語」
この2冊をお互い読み合いおしゃべりしたのである。
この小さなミニ読書会は、ちょいと荒んだ入院生活を潤してくれた。


彼女はドラマ化された「しゃばけ」を見ており、
残念ながら見逃していた私に、色々情報を教えてくれた。
CGでそれはそれは「鳴家」達がかわいかったらしい。
全作品読んでいる私は、「しゃばけ読本」を貸して、
残りの現代ものも含めて読んでみるようにお勧めした。
また、ハリーポッターシリーズも読んでいるとの事で、
病室は同好の士を得てそれなりの賑わい。


それでなくても、同性の話し相手、年もさほど離れてはいない。
お互い小学生の子持ち。命に関わる重病人では無いのに、
ベッドからなかなか思うようには動けない。
だから2人して病院合宿気分で、おしゃべりできるのは楽しい。
今日、そのお隣から貸して頂いた漫画本が、やたら面白い。
あいにく3巻から11巻までで、最初2巻が欠けているが、
結構笑えて、考えさせられる学園もの。
それが下に紹介する『桜蘭高校ホスト部

桜蘭高校ホスト部 第12巻 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部 第12巻 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部 第11巻 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部 第11巻 (花とゆめCOMICS)


題名だけ見ると、何だかお堅い方の顰蹙を買いそうだが、
私の世代から見れ、ば今風感覚で描かれた学園もの。
懐かしい言葉で言えば、ギムナジウムものの流れを汲む青春もの。
友情・恋愛・先輩後輩・学校生活・親子関係を描くドラマ。
木原敏江の「ヴェッテンベルク・バンカンラゲン」を背景とした
摩利と新吾』シリーズに通じる所もある。
少し前にドラマ化されたけれど、実際は半世紀前の学園もの、
一条ゆかりの『有閑倶楽部』のお金持ち学園ドタバタコメディと
何ら変わりが無い、ウィットとユーモア溢れる漫画だった。

ネアカの行動派、根暗の頭脳派、ざっくり天然ボケ、
朴訥寡黙武闘派、疑似親子関係、無自覚な恋愛など、
それなりに「萌え」の要素を配置しつつ、
孤独で自己憐憫に陥りがちな、自分の個性の枠組みの見せ方に
四苦八苦する若者像を、いろんな角度から捉えていて面白い。
どちらかと言うと、それぞれの抱える悩みの深さは『桜蘭』が上。
学園ものドタバタコメディの先駆者の出来としては『有閑』


時代背景が違うから、ひとときの夢を見せてくれるファンを
(それは一時「オタク」とも呼ばれ死語になりつつあるが)
萌えさせるというプロットの元に「ホスト部(クラブ)」を展開。
それはあたかも読者が作品に萌えるのと、額縁構造になっている。
その二重構造で読ませていく趣向が、結構楽しい。


女装男装、すき好み、風流を旨とする、お金持ちの貴族趣味、
ちょっとした「今様男女取替えばや物語」仕立ては、
思春期の青少年のみならず、この年のおばさんが読んでも面白い。
もっとも、漫画を読み込んできた年季が違うから、
色々な作品との比較検討の元に楽しめる美味しいおまけ付き。
だてに年食って漫画を読んでいる訳ではない。


友達付き合いをメリットがあるかないか、
相手を立てながら自分を目立たせないように、実力を付ける。
枠を超えないでイかに実力を発揮するか、
学校生活は将来へのシミュレーションの場、
胸を張って生きていれば、必ずわかってくれる人間が現れる。
自分に自信が無いと周りもちゃんと見えない。


こういう言葉の数々が、何気なく散りばめられていて
多くのキャラクター、登場人物、ストーリ展開と共に
感情移入、同一視、憧れ、一緒くたにして
さくっと読者を救ってくれる。
そんな「なごみ系」学園ドラマでもある所がいい。


という訳で、シリアスな読書は病院には向かない。
締め切り仕事を抱えつつ、病室で退院へのカウントダウンを
心に秘めている今日でした。
1年半前ならば、退院前夜だったのになあとぼやきつつ。
再入院10日目の夜。

桜蘭高校ホスト部アニメファンブック

桜蘭高校ホスト部アニメファンブック

とっても不幸な幸運

とっても不幸な幸運