モザイク

ニュートラルというよりも、軽い鬱の入ったモザイク。
体を横にしても夜中２時３時前後目が醒めて、眠れない。
明け方近くに眠気がやっと戻ってくる。
夢うつつ、そう、夢を見た。

電話を受け取る、受話器から知っているはずの男性の声。
でも、名前が出て来ない。名乗ってくれない。
「忘れたのか、わからないのか」と言われる。
思いついた名前を言うのだが、答えてくれない。
不機嫌そうな雰囲気だけが、受話器から伝わってくる。
目が醒める。誰の声だったのか気になって仕方がない。

痛みが無いというよりも、気にしたら負けだという感じ。
だから何かをしていれば忘れているのだけれど、
ふと甦ってくる、ぶり返してくる、自分の内部で這い回る痛み。
痛みを感じる体の中心と、その周辺部。
内臓と手足がモザイクになって、私を動かしている。
細かいバラバラの粒子が、どこまで規則的に、
どこからいい加減に並んでしまっているのか。

声の網 (角川文庫)

デュファイ:世俗音楽集?私の顔が蒼ざめているのは

職場に挨拶がてら仕事の準備をしにいこうと思っていたら、
外部からの出入りでばたばたしている由、連絡入る。
まあ、歓送迎会もあるし直接言付けたいこともと、
思ったりしていたけれど、何も無理にしなくても。
色んな気持ちがない交ぜになって、モザイク。
仕事モードに移行するきっかけを失ってしまったような。
軽い喪失感。人に会わなくて済む安堵感。

空いた時間を『最高の人生の見つけ方』を観て過ごす。
入院しようがしまいが観るつもりだったのに、
どうしても車で１５分先のシネコンまで行けなかった。
やっぱり泣けた。神様の織る織物はモザイク模様。
ひび割れた輪郭の彼方に、くっきりと浮かび上がる何か。
それを見つけられるかどうかは、まだまだ先。

手術を受けられない病気、化学療法、慢性疾患、服薬管理、
そういうものと隣り合わせの家族や人生、毎日、日常。
病気になるということは、どんなふうに生きるかということ。
様々な思いの行き交う先にあるのは、何？
冷たいひんやりした忘れようとしても忘れられない、通奏低音。

片付けられないのは、散らかしっぱなしなのは、
まとめられないのは、積み上げられないのは、
ないない尽くしでいるのは、心のどこかが受け入れていないから。
現実を、考えてもそれ以上にはならないことを。
知ってしまえば知らなかった昔には戻れないことを、
わかっていて受け入れたく無いから。

納得と思っていたものが、実は諦めだったと思いたくない。
愛情だと思っていたものが、忍耐だったと思いたくない。
でも、それはモザイク模様のミラーボール。
光の当たり方で見え方が違う。
ただ、それだけのこと。

家の中で、書類の山を片付けながら不安になる。
片付けるべき仕事、元通りに出来るかどうか、
遅れを取り戻す事が出来るかどうか、
自分にプレッシャーをかけてしまうのだが、
こればかりはどうしようもない。
付き合いから遠く離れていても、仕事は、
仕事との付き合いは、やっつけ仕事ばかりではない。

あるべきものをあるべき形に。
たとえ、それが大きな何かの小さな一部分に過ぎなくても。
私は部品。単なる製品。１本のねじ釘、つなぎ目、
そんな風にしかなれなくても、いや、なれるのならば、
モザイクの一部分に徹する事が出来るのならば、
物事に、目鼻立ちが付くのであれば・・・。

姿・形の見えない語り手の声も、自ずとわかるだろうに。

デュファイ:世俗音楽集?私の顔が蒼ざめているのは