Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

氷室冴子逝く

棒が一本あったとさ、葉っぱだよ、葉っぱじゃないよ、
蛙だよ、蛙じゃないよ、ひよこだよ、
6月6日に雨ざあざあ降ってきて・・・降りませんでした。
本日は梅雨の晴れ間。でも、仕事をテキパキ進める事が出来ず、
会議だけやって、なんだかぼんやり書類整理に追われて、
ヨロヨロ帰宅。ちょっと、「逃げ」の入った週末。
どうしても疲れが溜まって、しんどくて溜まりません。


早めに体を横にしても、夜中に目が醒めるし。
食べても、なんだか美味しくないし。
しなければならないことは、手を付けたくないし。
プチ鬱の波間を漂うように、浅い眠りと疲労感の間を、
ブログを書こう、書いておこうという義務感にも似た、
櫂でぎっちらこぎっちらこと漕いでいるような感じ。
漸く週末に辿り付いてみれば・・・。


娘は嬉々として、「おかーさん今日は何の日か知ってる?」
夕食後に尋ねてきた。「『ナウシカ』の日」と即答。
TVで放映されるのを心待ちにしている娘。
しかし、私もそうだけれど、何度見たかね?
映画好きの両親に毒され、「インディ」関連のCMに喜び、
マトリックス』も見たがる有様。『ランボー』に至っては、
年齢制限があるから見に行けないのが悔しいらしい。
やれやれ・・・。


「さすがにこの時間まで起きているのは辛い」とぼやきながら、
ナウシカを見終わり寝床に行った娘。
就寝時間がいい加減な母親に育てられた以前に、
夜の11時過ぎから本格的活動時間だった親の胎内で育った娘は、
病院での看護師さんの予言どおり、親と同じ生活?
夜に強い子供に育ってしまった。
(夏休みはちゃんと6時半前にも起きてラジオ体操にも行くし)


私。食卓を片付ける気力も無く、パソコンを開いたまま
いつの間にか倒れるようにして、転寝。あーあ。
こうして服薬も忘れ、また健康管理が・・・。
そう、健康管理。大切な生活管理・・・。

考えるプロが明かす「思考の生活習慣病」克服法

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生態リスク学入門 -予防的順応的管理-

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人には寿命があるものとわかっていながら、
喉元過ぎれば何とやら。痛みがあっても前例があるので、
退院しても1ヶ月以上は痛みがあって当たり前と構えて、
前回退院時ほど不安にも駆られず、過ごしている。
よく言えば、タフになったのかもしれないが、
悪く言えば、ふてぶてしくなったに過ぎない。
病気を甘く見ているわけではないが、気にしても憩室は減らない。


脳が満足すれば、食べたくなる野と同じで、
定量甘いものを食べると間食はストップする。
おそらく、不安に駆られたり予定に追われ苛々するよりも、
だらしなく何もかも投げ出して惰眠を貪る方が、
ストレスは少なくて済むのかもしれない。
むろん目覚めた時に、ゴミの山の中に埋もれている自分を発見し、
愕然として自己嫌悪に陥り、別のストレスを抱え込むこともあるが。


さて、そんな風にして夜中に目覚めたいつもの日々。
目に飛び込んできたのは、氷室冴子の訃報。まだ51歳なのに。
肺がんとは・・・。どんな生活をしていたというのだろう。
仕事に就いた頃、文学少女の端くれが文筆業に憧れながらも、
何も書けない凡人生活を送っていたのに比べ、
背水の陣で故郷を後にし、錦を飾るではないが、
一世を風靡して、少女小説の世界では名を馳せていた氷室冴子


古典の世界を題材にし、『何て素敵にジャパネスク』や、
とりかえばや物語』を種本にした『ざ・ちぇんじ』は、
マンガの原作となって多くの読者を魅了した。
折しも古典の世界は大和和紀あさきゆめみし』が正統派だったが、
なにぶん名作『源氏物語』が原作ゆえ、敷居が高い。
ちょっと昔風ロマンに浸りたい、お手軽に楽しみたい人間には、
氷室冴子の紡ぎ出す世界は楽しい古典ロマンだった。

先輩世代の活躍を、そしてエッセイにもなった母親とのバトル、
故郷での生活や東京に出てきてからの生活を振り返った、
身辺雑感エッセイは、明るくもしみじみとしていて、
文筆業で生きていく大変さが滲んでおり、
私のような根性無しには、到底進むことの出来ない世界と、
あっさり思い切らせてくれた、『冴子の東京物語』だった。


和歌を始め、上代中古文学専攻の文学少女は、
少女小説や漫画の中に繰り広げられる世界を、
田辺聖子の描く歴史もの、文学世界よりは一段下じゃん、
子供用だものと思いながらも、書けること自体が羨ましかった。
プロとして作品が書ける、読者がいるということが羨ましかった。
そして、いつの間にか時代が移り変わり、
彼女の名前を見ることも無くなり、21世紀になる少し前、
10年前に結婚した私は、子育てと仕事を行ったり来たり。

冴子の東京物語 (集英社文庫)

冴子の東京物語 (集英社文庫)

昔々に抱いていた「もの書きになりたい」願望は、おそらくここで、
日記・雑文・駄文を書き散らすことで発散できているのだろう。
そんなある日、余りにも若すぎる、かつての女流作家の死は、
やるせない切ない思いを私に抱かせる。
まだまだ、これからなのに・・・。


今週の訃報。イブ・サン・ローラン、71歳。この人も早すぎる。
一世を風靡どころか、デザイナーとして、ブランド名・知名度
世界的に抜群であるにも拘らず、TOPでなければ満足できなかったのか、
あっさり早々引退して、老齢に達した途端に亡くなってしまった。
失われた才能が、余りにも勿体無いと思う私はせこい?
自分を表現できる素晴らしい世界を持っていたのに、
思いのほかあっさりと逝ってしまった、そんな印象を抱いてしまうのは何故?


でも、親の世代に近い人が亡くなるよりも、
ごくごく先輩世代、年の近い人に亡くなられるのは、参る。
ナウシカほどスーパーヒロインでなくても、
その道で活躍した人々は、色んな意味でちょっとした憧れだった。
自分の中ではそういう存在だった。
だから、お別れというか、2度と新作にお目にかかる事は無い、
そういう世界が広がっている事が寂しい。


あ、でも、約2年ぶりに復活したブログに出合って
その当日に立ち会う事が出来て、嬉しいこともあった今日。
去っていく人、お疲れ様でした。
戻って来た人、お帰りなさい。

冴子の母娘草 (集英社文庫)

冴子の母娘草 (集英社文庫)

さようならアルルカン (集英社文庫―コバルトシリーズ 52B)

さようならアルルカン (集英社文庫―コバルトシリーズ 52B)