Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

茅葺・屋根裏の美・蛍

「つるや」を出て、園部の道の駅のちらして見かけた、
美山かやぶき美術館と郷土資料館に向かう。
そこでは廃材を再生して創られた、えもいわれぬ美しいガラスの数々。
笠井秀郎吹きガラス展が21日まで開催とのこと。
訪れると、ここも家族貸切鑑賞会の場となった。
小学生は無料だというのに、我々は冷茶、娘はジュースまで頂いた。


温もりのあるガラスの明かりが、ひんやりした土間と
茅葺の屋根の下でほっこり輝いている。
黒光りする床や柱が美しい。よくぞ移築して保存したものだ。
まずは、その民家とガラスのコラボレーションをどうぞ。


 

 


野の花と透き通ったガラス、娘がガラスの水族館と名づけた花器、
情熱を感じさせる赤、様々なガラスがリサイクルで作られ、
昔のアイロン・ミシン・水道管・蹄鉄などと組み合わされ、
「灯かり」として甦っている。ものとして新しい命を得た輝き。
2階屋根裏に通じる趣きのある階段箪笥を開けてみると、
「つるや」の女将の果実酒がひっそりとしまわれていた。
小さな招き猫はお客を呼ぶおまじないだろうか。


屋根裏の暗い空間には調光器具付きのランプの数々、
音に反応して光の強さが変わるランプなどが並べて展示され、
娘は演出者として光のデザインをしばらく楽しんだ。
屋根裏からの景色は、『アルプスの少女ハイジ』を連想させる。
今様ハイジは灯かり遊びに夢中。


かやぶき美術館の1階のひさご型の障子の窓からは、
郷土資料館の水車が見える。これもまた一興。
昔の納屋のかび臭い中、農具、晴れ着、昔の教科書など
ゆっくりと見学させてもらった。
水車の側で四つ葉のクローバーを摘もうとした娘は、
ぴょんぴょん跳び回るトノサマガエルに驚ききゃあきゃあ叫ぶ。
がっくり。かーちゃんの娘とは思えない軟弱さ。



何年ぶりかに見る本物のねじ花。
namiheiさんのブログで見かけて以来、気になっていたねじ花。
(写真に感動して、懐かしくて歌まで詠んでしまった!)
やっとここまで来て再会。そして、蛇苺をはじめ、
かわいい草の実達。あまりに久しぶりすぎて棘に刺されたものの、
家族全員で野生の甘酸っぱさを味わった。



今夜の宿に向かって走っていると、野々村仁清生誕の地の看板。
と言っても、古い民家が残っているだけで
肝心の有名な作品は一つも地元に残っていないのだそう。
なだらかな斜面に面した家々の周囲には野の花以外に、
グラジオラス、立ち葵、紫陽花、マリーゴールド等、色とりどり。
ごく一部をご覧あれ。


 

 


辿り付いた茅葺YHは、おしゃれな庭と美味しい食事の宿だった。
夜8時、歩いて5分の田んぼに向かう。ご主人が点滅させるハザードランプ
引き寄せられるように、平家ボタルが飛んできた。
「本当は生態系を乱すからこんなことをしてはいけないんですけどね」
しかし僅かの人工の灯かりの点滅に、仲間と勘違いしたのか飛来する蛍。


私の服にとまり、ブローチのように輝く。娘は手の平に載せて大満足。
家人の癖毛の髪の毛の中に入りこんだ蛍は、とうとう迷路から抜け出せず、
YHに戻るまで出られなかったので、田んぼに逃がしに行った。
私達は初めて見る平家ボタルの優しい明かりに癒されて、
暗い道を懐中電灯も付けずに、賑やかに歩いて戻った。


涼しげなガラスのピッチャーにミント、水、氷。爽やかミント水。
そして、屋根裏ツアー。梯子を上り屋根裏でYHのご主人の話を聞く。
棟上の飾りが珍しくてまじまじ。民俗学に詳しい人ならば楽しさ倍増。
そして、積み上げられた萱の束。萱は貴重品で吹替えように貯蔵。
「手を触れないで下さいね。折れると使えなくなりますから」
しかし、次の葺き替えまでに茅葺職人さん、健在?
萱を確保する事が出来るかどうか?


 

 


ここに茅葺の家が移築されて15年、1年に10軒の割合で茅葺は消えている。
屋根裏の迫力満点の縄組みのこの技術も、ある意味風前の灯なのだ。
そんな話を聞きながら、消燈時間まで3人で楽しむ。
UNOをしたり、家族風呂を楽しんだり。
美山牛乳で作られた地元高校食品工業科のアイスを食べたり。
充実した美山の1日目、羽根布団でお休みなさい。