桃と『スピード・レーサー』
桃一箱1000円ポッキリ。15個、産毛の生えた柔らかい肌。
みずみずしい香り、どう見てもこんな値段でゲットできるわけ無い。
「わけあり桃」と書いてある。ほんのちょっとぶつけている?
微かでわからないくらい。気にしすぎる人の日焼けやしみ・雀斑程度。
なのに、かわいそう、どう見ても半値以下で売られている。
桃、一箱即買い! 冷蔵庫で冷やして恩恵に預かる。
夢見心地にさせる滴る甘味。子供に戻ってかぶり付く。ああ、満足。
この幸福、口福をどこで見つけてきたかと言うと、昨日の午前の出張。
駐車場に困ってスーパーに置き、ついでに買い物。
私が午前中からスーパーに寄れることは滅多に無い。
ビギナーズラッキーのように、開店直後のお買い得に恵まれた。
それは・・・桃。この「わけあり桃」の箱。
産地の和歌山の農家の方に申し訳ない。季節の恵みを、こんな安価に頂いて。
ジュースやアイスなんて目じゃない。冷えた桃にかぶり付く幸せ。
巷じゃ1つ200円はしようかという桃。たまたま正規販売ルートに外れた、
規格外とされるのも不本意な、痛みやすい柔肌の桃に、厳しい詮議。
流通ルートに乗せるために早めに取られた桃は硬くて美味しくない。
熟して今が一番食べごろとなると柔らかくて傷つき易い。
この相矛盾した中で、価値に似合う値段を切り下げられ叩き売られている桃。
よくぞ我が家に来てくれた、夏の味覚よ!
好きなだけ極上の美味な桃を食べられて、興奮気味。
家族で桃を貪り食う野蛮な楽しみ。
包丁を入れるだなんてとんでもない。桃は桃だけでかぶり付く。
薄い皮をつまめばさらりと脱げる絹の下着。潤う肌。果肉にガブリ!
前歯に心配のある人間にとって安心してかぶりつき味わうことのできる、
この嬉しさ、美味しさを何と表現すればいいか・・・。
桃源郷には行けないけれど、美味しい桃を食べられるだけで幸せ。
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本日の幸福はまだある。それは、懐かしいメロディと共にやってきた、
懐かしいアニメのリメイク。『スピード・レーサー』、もとい『マッハGOGOGO』
この音楽を聴いてわくわくする私は、タツノコプロ作品リアルタイム鑑賞世代。
草創期の作品に胸躍らせた少女。少年・少女漫画、アニメはある意味、魂の故郷。
先陣を切ったのは手塚治虫だけれど、それぞれのアニメ作品には学童期から、
思春期、大人になるまでの思い出と連動した懐かしさがこみ上げてくる。
リメイクと言うとちょっと抵抗があるのが正直な所。
だから、噂を聞いていてもなかなか見に行く機会がなかった。
というか、観に行く勇気がなかった。明日からキャンプに行く娘と3人、
週末の映画の夜となり、日本語吹き替え版は18時から。
ためらいを脱ぎ捨てて、お安くなったプレミアスクリーンに来てみれば、
脳内マジックに等しい懐かしのメロディと共に、繰り広げられる
華やかなレースシーン。この実験的な斬新な映像と、
レトロとしか言いようの無いアナログ家族、正義のヒーロー、
臭いまでに典型的な成金・ハイテクデジタル悪役の対立に、うっとり。
吹き替えは有名な大御所を揃え、くだらない笑いを誘うおちゃらけシーンも、
シリアスな場面も違和感なく楽しめる。オリジナルを知らない娘も大喜び。
タツノコプロの先代はもう居ないけれど、このリメイクを見たら、
海を渡ったオリジナルがどんなに21世紀版となって蘇ったか、
100%アニメでなくても原作の面白さとスピード感を尊重しているか、
さぞかし喜んでくれただろうなあと思う。
ガッチャマンやキャシャーンに比べれば、どちらかと言うと初期ゆえに
地味な絵柄に受け取られがちな『マッハGO!GO!GO!』
(!が無いと物足りないのは私だけ?)
後のヤッターマンシリーズほどお子様向けでもなく、善悪の対立や、
家族の絆を織り込んだ作品に、車への愛情をプラスした冒険もの。
この人間の手の及ぶ世界のリアリティが感じられる所が、嬉しい。
後のヒーローと異なり、「車を運転する」醍醐味を人間の可能性と掛け合わせ
今の時代では地味なくらいのローテクな争いに、貫かれているのは負けじ魂。
正義感を支え、裏打ちしているのは、家族愛。
こういう単純明快・アナログ物語構造が、作品鑑賞には欠かせない。
ストレートに、直球で、それでいてストーリー構成はオムニバス、
巧みな回想シーンとアニメ、特殊効果の相互作用。
もっと大々的に宣伝しても良かったんじゃないかなあ、この作品。
日本が生み出した名作が、里帰りしていい意味でリメイクされた事を。
ドラゴンボールのリメイクを軌道に乗せたいならば、私のような世代、
もっと年配のファンに届くように、『マッハGO!GO!GO!』進化形の
『スピードレーサー』を宣伝しても良かったんじゃないかなあ。
夏休み映画本番時期に押されて、上映回数が減っている今。
映画好きのかーちゃんととーちゃんに連れまわされて、贅沢に育った娘。
どうしてサルが出てくるのとか、元もとはどんな話なのと尋ねてくるのが新鮮。
元もとを忘れかけている私たち。子供の頃の興奮を、エネルギーを、
忘れかけているかーちゃんととーちゃん。
映画は起爆剤。老眼で読書から遠ざかってきているかーちゃんにとっては、
音と映像は今のところ、重要な心の刺激。
そして、やっぱり恵みの一つ。勇気や元気の元。
どちらの作品も楽しく鑑賞できたということに、恵みを感じる。
さあ、明日からキャンプだね。親子に景気づけの週末の映画の夜。
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