WANTED

「ウォンテッド」というとピンク・レディーを思い出すという人は、
中年以上の方ばかりでしょう。今の若い人ならば、「ウォンテッド」は
この秋公開の映画、それもR15指定の危険な？　映画。
先行上映観て来ました。だって、ブラビとの間に男女の双子を設けたという、
母親としても女優としてもノリにノッているアンジェリーナ・ジョリー。
何とも魅惑的なCM、予告編から是非とも観ようと思っていた。

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スプラッタで暴力的なシーンが多すぎるという懸念、いや、非難は否めない。
でも、それで言えば暴力的なシーンが無い映画は珍しい昨今。
今回はゾンビに食い割かれるわけでもなく、悪魔の餌食になる訳でもない。
強いて言うならば、銃撃戦と肉弾戦。それでR15指定。
戦争映画が苦手な私･･･そう、『プラトーン』『プライベート･ライアン』
暴力は好きではない。でも、暴力的なシーンに託された隠喩と象徴には、
心奪われる時がある。映画の中だから許される、
現実世界ではないからこそ、許される暴力的な美学。美学的な暴力。

というわけで久しぶりに家人と二人でレイトショー。
連休ならではの楽しみ。娘は一緒に見られないのがわかっているので、
お土産のパンフレットをねだって、珍しく寝床に直行。
何度か書いたかもしれないが、ここは田舎の都会、都会の田舎。
車で30分以内の場所にシネコンが4つもある。（来年には5つ目が）
老眼のせいで（言い訳？）読書に縁遠くなった私の
ストレス発散は、目下、映画・映画・映画。

でも、ネタばれはまずいかもしれないので、ストーリーに関してはお預け。
映像は、やっぱりなんと言ってもアンジーの美しさが際立つ。
家人曰く「アンジェリーナ・ジョリーはソフィア・ローレンに似てきたなあ」
え？　そうですか？　うーん、化粧の仕方によっては、
そんな風に見えないことも無いかな。それにしても引き合いに出す女優が、
いくら一世を風靡したといってもソフィア・ローレンとは･･･。
もちろん私だって『ひまわり』の彼女は大好きですが。

Wanted

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さて、主人公が誰なのか？　最初はヒロイン、アンジーにばかり目が。
ヒーローを支える脇が渋い。あの、モーガン・フリーマンだからね。
それも、今回なかなか静かに悪役やってくれているし。
ヒーローがどこかで見た顔なのに思い出せない。パンフでやっと合点がいった。
なんとあの、『ナルニア国物語―ライオンと魔女』のタムナスさん役の男優。
ジェームズ・マカヴォイという人でした。
あの時は罪悪感を滲ませながらフォーンとして演じていたが、
今回は気弱なにーちゃんが、兵器そのものに進化していく過程を演じる。
これはこれでなかなか見もの、暗殺者養成過程。

ストーリーをばらすとまずいので、素敵な小道具たちを紹介。
ひとつは風情のあるレンガの建物、まるで城砦のような建造物。
その中の大きな織機に掛けられた糸の美しさ、布の世界。
神話の中で糸を紡ぎ機を織っては鋏で断つという、
運命の女神の部屋を連想させるその佇まい。
そこで読み解かれる暗号の数々が、アンジーの全身の刺青と重なり、
不可思議で残酷な運命を紡ぐ暗殺指令に。

ちょっとした銃器・短剣・弾丸のケルティックな模様が、
神話の世界を髣髴とさせるシルエット、銀色の輝きを添える。
救いの無い結末へ向かって、物語は蛇の尻尾を飲み込むように展開。
激しいアクション、訓練というよりしごき、全身傷だらけ。
そんな傷だらけの彼を若々しく蘇らせるのは、驚異の回復風呂。
この不思議な風呂を我が家に欲しいと切実に思った。
これさえあれば、怪我も病気も怖くない。

昔、小学生の頃『緯度ゼロ大作戦』という映画があった。
記憶もうろ覚えだけれど、日米合作SF超大作。
海底の秘密の国は科学も医療技術も進んでいて、
瀕死の重病人も治療するシーンが。
あれも今回のお風呂に似た液体に体を浸すと確か・・・。
この特殊な入浴で体は弾丸も通さぬ皮膚になっていたような。
サイボーグならぬ、人間の脳をライオンに移植して
さらに改造したキメラまで登場、大活躍。
『WANTED』にキメラは出てこないけれど。

破壊への衝動を刺激する、華麗なアクションに次ぐアクション。
それなのに私が最も気に入ったのは、この映画の中の風呂とは・・・。
それにしても弾丸の玉も曲げる精神力で、仕事もしたいもの。
パワフルな映画を観ると、残酷さの中にある力強さに憧れますね。
賛否両論あるものの、正義とは「一を殺して千を救う」内容かどうか、
お暇な方は映画館に足を運んで見て下さい。

私？　私にはストレス解消になりましたとも。
頭痛薬を飲み、背もたれのある椅子に2時間腰掛けているだけで、
十分休養に。睡眠時間を確保しないと、体が持たない。
なのに熟睡ができないで朝を迎えるせい、その他諸々で
ぼろぼろ血管年齢に愕然とした今日だから、尚更。
激しいカーアクション、血しぶき舞う世界が、
ニューワールド、新世界に見えるような錯覚に。
そういう錯覚に一瞬でも浸れる現実逃避が心地よい。
私にとってなそんな映画、『WANTED』。

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