Festina Lente2

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キルトは語る

知っていなければならないことなのに、自分には関係ない、
他人事だからと意識しないで生きていこうとする。
それは楽かもしれない。でも、それでは済まされない。
若い人が少ない職場でも、職員研修は必要。
偏見が無い人もいれば、知識も情報も持っている人もいる。
平等にというならば、機会を設けなくてはなるまい。
何が起こっているか、語られなくてはなるまい。
どう受け止めるか、考えなくてはなるまい。
そのための研修。


メモリアルキルトとメッセージキルト。
2枚を目の前にして、語られる言葉を聞きながら、
様々なことを考える。人権ということ、共生ということ。
講師の先生の例え話はこうだった。
交通事故が起こったとする。病院に怪我人が運ばれてきた。
暴走行為を繰り返した挙句、瀕死の重傷を負った怪我人に、
自業自得だから治療はしないという医者がいるだろうかと。


この病気も同じこと。罹ったのは自分が悪い、自業自得だ。
因果応報だ、そういう観点に立って論じる問題かと。
交通事故が誰にでも起こる可能性があるように、
この病気だって同じ。いい交通事故と悪い交通事故なんて無い。
同じように、「悪いエイズ(性的な交渉から罹患)と
悪くないエイズ(血液血清剤から罹患)がある」と区別することに、
何の意味があるのかと。


中学生の子どもにもわかるように、具体的にわかりやすく、
数字や、体の中、対人関係、性的な指向、
様々な角度から話がなされる。
あっけらかんと明るく話す講師の雰囲気とは対照的に、
空気は硬直しているのがわかる。
自分には関係ない世界、専門は別、他人事、
なるべくならば関わりたくないと思っている人は、結構多い。


その証拠に「わざわざレッドリボンを作らなくても、
つけなくても済む世の中であればいいのに」という講師の言葉。
情けないことに、レッドリボンを知っている人と問われても、
3分の1程度しか手が上がらないこと。
本当に知らないのか、大人だからわざわざ手を挙げるのが面倒なのか。

父親になったジョナサン

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ぼくもあなたとおなじ人間です。―エイズと闘った小さな活動家、ンコシ少年の生涯

ぼくもあなたとおなじ人間です。―エイズと闘った小さな活動家、ンコシ少年の生涯

世の中には色んなリボンがありすぎて、車のアクセサリーのように、
何だか気軽に付けられるシールのように思われて、
形も色も本来の意味が失われ、重要視されていないのだろうか。
それとも、ピンクリボンやオレンジリボンなら平気なのか。
レッドリボンを最近見たのは、市の保健祭り。
それ以外に何時だったっけ?


ジェンダーという言葉さえも忌み嫌う人は、
この手の研修では頭痛と眠気が必ず来るのだという。
ジェンダーの問題か? 違うと思うけれど。
体から拒否してしまうほどのもの? 
そういう気持ちでいるわけか・・・。
なかなか、前途多難ではある。


職場最若手、20代前半。
中・高・大と性教育らしい性教育を受けていないとのこと。
当然教育を受けてきた世代だと思ったのに、
殆ど何の知識も持たないまま、知らないままだったと。
だから、本日の内容は衝撃的だったそう。
そうあっけらかんと言われたことに、こちらが愕然とする。


普段口に出来ない話題を、こういう風に研修で聞くなんて
・・・と戸惑いを隠せない様子。
「私には関係ないことだと思っていました」
「薬や治療のことなど初めて聞きました」
と語る彼女は、アメリカ留学経験者だ。
不思議でならない。語学の勉強だけしかしなかったのか?


異国に暮らして、生活に関して色々思うこと、
心配なこと、知っていて当然のこと、気になったこと、
見かけたこと、その国の事情、ニュース、日常。
何も無かったのだろうか?  何も聞かなかったのだろうか。
何も見かけなかったというのだろうか? 本当に?


教育を受けて来なかったから、知らなかったでは困る。
だから、研修を企画し、話を聞き、学び、考える時間を持つ。
これから先、生きていく上で、長い人生の中で、
世間では色々取り沙汰されているけれど、自分に限って、
この期に及んで関係ないからなんて、言い切れるのか?
服薬、治療費、国が負担する経費の試算、
様々な話、展示されていたキルト。


メモリアルキルトとメッセージキルト、
2枚の説明がなされる。亡くなられた方の話も。
ハンセン氏病の話や、セクシャルマイノリティの話、
様々な話題が溢れるように出てくると、
その背景にある、様々な問題が浮かび上がる。
HIVやAIDS、それ以前にもっともっと根本的な。


キルトは語る。もっと生きたかったと。
キルトは語る。共に生きたかったと。
キルトは語る。共に在りたかったと。


夕暮れは、小雨模様。
たそがれていく人の心を、どうやって乾かせばいいのか。
心細く寂しい人の心に、どうやって寄り添っていけるのか。
考えさせられることは一杯。学ぶことはまだまだ。
出来ることは一杯。行動する、その1歩が2歩に3歩に。
講師は語った。ご自分のこと、友人のこと、家族のこととして、
考えてくださいと。


キャンペーン期間中だけ、世界エイズデーの前だけ、
イベント、その時だけちらりと頭を掠めるだけ、
そういう内容ではない。これは、そういう問題ではない。
きちんと受け止めていく。少しずつでも。
日々の生活の中で。
よりよく生きて行くため必要なことの、一つとして。

エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します

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