Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

さよなら京都国立博物館平常展示館

写真を少し加えましたので見てくださいね。(12/9)

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先日漆の美を求めて京都国立博物館へ出向いた時、
建替え予定の常設展示が日曜まで無料開放だと知った。
おまけに、再び観られるようになるまで5年。
次は5年後!? これは・・・。
意を決して娘を連れて行くことにした。
新しい平常展示館になる頃、娘は14歳。中学2年生。
思春期前期、最も母親に反抗的になる頃。
今のように、一緒にあちらこちら出かける親子でいられるかどうか。
覚えているかどうかわからないけれど、見せておこう。

 

親の身勝手だ。あちらこちらに連れ回すのは。
娘の日記の宿題に担任の先生がコメントしている。
毎週どこかに出かけているが、家に居ることはないのかと。
土日の二日間を丸まる家で過ごすのもいいだろう。
家の中でしか出来ない事も沢山ある。
でも、塾に行っているわけでもなく、普段出来ないことをするなら、
今のうちに一緒に出かけていたい。
そのうち、友達と遊びまわるようになれば、
親子で外出なんて、ありえない。


学校週休2日制がゆとり教育の成果を生むかどうか。
私立の学校に進学すれば、土曜は授業だ。
公立に進まなければ、休みは殆どない。
一部の公立は予備校化した授業を行っているらしいが。
クラブ活動もいいが、小学生で丸2日間クラブはありえない。
習い事で2日間土日を潰すなんて、つまらない。
おまけに近所で遊ぶ友達も、土日は家族で過ごす。
ともなれば、土日いずれかを遠出したとて・・・。
確かに、親の都合で連れ回しているのかな。

 

スルっとkansaiできっかり片道1000円、京都七条、緩やかな上り坂。
向かいに三十三間堂、外国風の建物の本館に比べて、
味気のない常設館は、昭和41年以降頑張ってきた。
天王寺の市立美術館の常設展示館と並んで、私の好きな場所。
銅鐸・銅鏡・唐三彩・陶磁器・仏像・絵画、書画工芸品の数々。
歴史の教科書でお馴染みの源頼朝平重盛肖像画
今回特別に展示していた、篤姫の時代関連の甲冑・刀剣の類。



娘もそれなりに興味を持って見ている。
でも、鯉のいる噴水に虹が掛かって見えるのが、一番楽しそう。
ロッカーに荷物を預けたまま、隣の豊国神社、耳塚へも。
3年生でも豊臣秀吉徳川家康織田信長の名前ぐらい知っているし、
篤姫』のお陰で歴史にも随分興味を持ったようだ。
私が歴史にはまったのもこの年頃だったから、
娘をちょっと刺激しておきたい、という親心も働いている。

 
 
貧しい時代、親が私を京都へ連れてくるのは大変だったろう。
だから、私の京都は中学生以降の美術展、主に市立美術館が中心。
七条の国立博物館はそれほど馴染みがなかった。
それだけに、どうしてもっと何度も足を運ばなかったのだろうと、
今にして思えば悔やまれる事も多い。
とにかく京都は片道2時間余り、遠くて高い。


歩いて廻れる街、京都などというが、
実際一日で観て廻れる場所は知れている。
町全体が博物館のような街なのに、生きている「歴史」そのものなのに。
そんなふうに思いながら、ついついあれこれ買い物をしてしまった。
何しろ、資料や記念誌等、書籍類も叩き売り。
重たくなるのは承知で、開館110年記念『美のかけはし』を購入。
ミュージアムショップも一時休業になってしまうというので、
他にも沢山あるのに、ファイルや葉書など購入。


ちなみに来年の1月からは在庫整理も兼ねて、通信販売も行うらしい。
このお店はあちこちの美術館・博物館の品も扱っている。
興味のある方はこちら→http://www.benrido.co.jp/
確かに図録や博物館の刊行物、オリジナルグッズは魅力的。
でも、お土産兼ちょっとした楽しみは自分で手に取って、
あれこれ眺めて買うから楽しいのであって・・・なんて考える私は、
やっぱり古い人間なのかな。
海外の美術館博物館にはミュージアムショップがあって、
びっくりしたのは20年前の話。今では日本でも充実してきた。


携帯用の蒔絵シールやストラップではないけれど、
娘に印籠と根付を説明するのに、昔の人の薬入れと飾り紐、
「ピルケース」「ストラップの飾り」はわかり易い表現。
鳥獣戯画の楽しい模様、美しい草花の葉書、
漫画で覚えた「納言ちゃん」(清少納言)のファンの娘は、
読めないけれど「古今和歌集」の散らし書きにも興味を持った。


そう、読めなくても構わない。こういう物を昔の人が使っていたと、
本当に筆で書いて巻物にしていたと、大切にしていたと知ってくれれば。
文字しかり、美術工芸品しかり、文学作品も音楽も、
等身大の自分から飛躍して、ワープして、別世界へ行くためのきっかけ。
未知なる物、古からのメッセージ、伝統の響き、
ほんのひと時、心躍らせる別世界への鍵。
博物館・美術館は冒険する場所だということを、体感してくれれば。


そして、常設展示は特別展とは異なり、
いつも変わらぬ佇まいで迎えてくれることで、
心のどこかを支えてくれる存在だった。
あの収蔵品の数々を、5年間どこに仕舞っておくというのだろう。
5年間どのように手入れをし、研究するのだろうか。
5年後娘と仲良く新しい平常展示館に来られることを願いつつ。
少しセンチメンタルな気分で、さようなら。

          


ついでに常設館の御隣に当たる、豊国神社にも御参り。
静かな中にも、どこか華やかな雰囲気があるのは、
派手好きだった豊臣秀吉を祭っているからか。
鐘楼の天上画も、天女が舞う美しいもの。
宝物殿は少し寂しいけれど、歴史の断面を見る思い。
戦争の犠牲者の耳鼻を削いだものを供養した耳塚公園。
娘は無邪気にブランコなんぞしてましたが、
いや、こういうものがぽんと街角にあるのが京都。
何気なく、歴史がぬっと顔を出す京都での1日でした。