Festina Lente2

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古式鍛錬と篆刻

刃物の世界、今では機械の力で作られているものの、
今日のようなお祭りの日には、特別に昔ながらの包丁作りを再現。
古式鍛錬、トッテンカントッテンカン、鍛冶屋の仕事を見ることに。
ちなみに息が合わないと、トンチンカンになるので、
頓珍漢の語源になったとのこと。なあるほど。


ティンカーベルの本来の意味が「いかけや」だという事を、
かなり大きくなってから知った。説明を読んで理解できても、
鋳掛け屋という職業を実際に見ることは無い現在。
娘の「昔調べ」の参考書の中に、鋳掛け屋の写真、鍛冶屋の写真があった。
手仕事の世界は、映像の中に記録される世界になりつつある。


刀にしろ、包丁にしろ刃物はこのように手作りの世界、
ある意味オーダーメイドの世界、一人一人の要求に合わせて、
もしくは作り手が作りたいものを心を込めて一点一点、
世界に一つしかないものを作っていたといえる。
ナンバーワンではなくてオンリーワンの世界。
古式鍛錬というとすぐに刀鍛冶を想像してしまうけれど、
焼きを入れる刃物、打ち直し鍛え直しをする刃物は刀に限らない。


そういう事を思い出せないくらい、日常生活から刃物が遠い。
私は「肥後守」は知っていても、使わずに成長した世代。
鉛筆削り器で勉強した世代。
竹とんぼは自分で作った事が無い。父親に作って貰った。
彫刻刀も小学生の時しか使った事が無い。
和裁の鋏も母親まで、自分が使いこなすことは無かった。
鋏も刃物だが、ある意味刃物といわれてすぐに連想するものではない。
昔、華道を習っていた時、自分の名を入れて貰った鋏の高かったこと。
当時、それがどんなに意味のあることか、わかっていなかった・・・。


ましてや大工道具の鑿(のみ)、鋸(のこぎり)鉋(かんな)、
言葉は知っていても、「刃がある」事がどういうことか、
ピンと来ない世代。ある意味、切れない包丁を使っていて、
「怪我しなくて良かったね」ぐらい、切れ味の鋭い物が怖い世代。
本当は切れ味がいい方が、怪我しなくて済むはずなんだけれど、
それだけ不器用な世代。
包丁よりも便利な皮剥き器、スライサーの便利さに慣れて、
キッチンバサミの軽さに慣れて、花鋏、剪定鋏の重さにうんざりしていた。


そういう人間が、刃物云々をどうこう言える立場ではない。
それでも、実際何をしているか、実演を見せておきたい親心。
そして、何がしかを体験させたい、自分もしておきたい。
ということで、横座・先手体験は無理でも、
ふいごを体験させていただいた娘。
まあ、神聖な鍛冶場は女人禁制といわれるくらい。
女の子がふいごに触らせて貰っただけでも、御の字。
(相撲の土俵に女性が上がれないのを、ジェンダー云々で
 大騒ぎする気など私は持ち合わせていない人間)

      


      


  


そして、遊び印と称して、娘も私も初篆刻体験。
書道ではなく音楽選択生だった私は、篆刻を知らずに来たから、
今日はとっても嬉しい。色んな篆刻の本、写真集、辞典に囲まれ、
先生に教えを請う1時間。娘は秋の薄にトンボを彫っていた。
私は誕生日が来れば・・・ということで、「知命」と彫った。


砥石ならぬサンドペーパーで、面を平らにするのも難しい。
デザインを考えるのも、逆さまに字を写すのも難しい。
あらかじめ逆写しの文字辞典を見ながら、鉛筆と筆で図案を写す。
小さな石の四角の中に、刻まれる文字。失敗はできない。
緊張しながら篆刻刀(印刀・鉄筆)を操る。
隣の娘も真剣そのもの。


小さな小さな印の世界を支えているのは、職人魂には程遠い、
趣味人にも程遠い初心者の私達の好奇心。
医療現場の手術では無いけれど、掘り損ない削り損ないは致命傷。
(全部消すつもりで、全面削ってしまうのなら別だけれども)
臆病なせいで太い線に彫る事が出来なかった私だけれど、
どうにか文字を(文字らしく見えるものを)刻んだ。
浮き彫りは時間的に無理なので、線刻そのものだけれど・・・。


志学」の年は遥か昔、「而立」したかどうかさえ危うく、
不惑」に子供を授かり、「知命」を控えているというのに、
・・・だからこそ、彫っておきたかった「知命
春先の誕生日までに、もう少し自分自身を固めておきたい私。
それは、その・・・あくまで理想だけれど。


ところで、初心者を励ますように上手ねと褒めてくれた先生方、
包丁やさん、刃物やさんだそうで。極上の篆刻刀でした。
「焼きが入っているから、よく彫れるよ」という意味が、
初心者の私でもよくわかった次第。
石があんなふうに削れるものだとは。


作品ですか? 時間のある時に写真をアップしたいと思います。
包丁や鋏以外の刃物に触れる事が出来た今日でした。

篆刻入門 実例500

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はじめての篆刻入門―方寸の世界に遊ぶ (淡交ムック―ゆうシリーズ)

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