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「だんだん」のタラ・レバ禁止から

出勤時にラジオを聴いている。時報代わりにNHKを。
朝ドラこと朝の連続ドラマを見る事は叶わないが、
毎朝5分間余り聞くことが出来る。ショート「だんだん」
その後、職場で続きを聞くことが出来ないので残念。
去年の「ちりとてちん」ほど執着してはいないのだが、
その時々で考えさせられる事は結構ある。
ドラマの中に「ご時世」「世相」というものを上手に取り込み、
盛り込んでいるから、気になる出来事・言葉が耳に残る。


先週だったか先々週だったか、「タラ・レバ禁止」をいう言葉を聞いた。
もしもそうだったならば、タラ。
もしもそうであれば、レバ。
英語で言うところのIF。仮定法。
それは禁止ってこと。だって現実は替わりようがないから。
自分に都合の良い、望ましい理想や願望と比較すれば
どんどん追い詰められてむなしく惨めになる。


だから、「タラ・レバ禁止」なるほどねえ。
人間ドックの面接時に言われた、塩分・肉類禁止、
もちろんレバー類も駄目。ニラレバ禁止程度ではない。
「タラ・レバ禁止」は、とても精神力が必要。
叶わぬ夢、見果てぬ夢、遣り残した仕事、未練、
そういうものを振り切って前を見つめ続けるのは難しい。


ラジオから毎日少しずつ途切れ途切れに聞くドラマの片隅で、
ちょっとした言葉が耳に残る。反響する。
双子の物語に絡めて、夫婦の問題、離婚・再婚、
進学・就職・芸能界デビュー、営業活動、業界裏の凄まじさ。
そういう表立った流れに代表される現代社会。


それと共に、祇園に残るしきたり・約束事、
古きよき世界、確たる見識、京都という千年の王城、古都文化。
廃れていくもの、受け継ぐ意思が無ければ明日にでも消えてしまうもの、
本音と建前の中で、情け容赦の無いお稽古を通じて、
磨き上げられ練り上げられていくものが、縒り上げられていくものが、
今と切り離された昔ではなく、時代の持つ双の顔だということを、
それとなく織り込みながら、物語が展開する。

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姉妹とはいえ離れて成長したきょうだいの、ものの見方考え方の差。
進路を考える上で、なかなか興味深いものがあった。
進学するか就職するか、地元に残るか出て行くか。
資格を取るのか、家の跡を継ぐのか、好きなことをするのか。
何気なくどこにでもある問題を映し出す。
現代の教育現場でいうならば、進路指導・キャリア教育に関わる問題。
かなり自由になったとはいえ、欧米のようなキャリアアップの仕方、
転職は、まだまだ日本の風土にはそぐわない。
それどころか、今では派遣やパートは不況・リストラの嵐で、
「自分流に働く」危機だと言ってもいい。
本当に経済的に困っていれば、ニートだの引きこもりだのいっていられない現状。


中学しか出ていない舞妓修行に迷いがある、のぞみ。
学生生活や自由な恋愛、今まで自分に無かったものを夢見て、
芸妓になる直前に、祇園を飛び出してしまう。
自分なりのキャリアを確立することと、親からの自立を重ね合わせて問題提起。
片や音楽を捨てきれず、さりとて手に職をつけて手堅く生きることを模索する。
介護福祉士から看護師に、その夢は広がっているようだが、
現実の介護の実情はドラマに表れているような、
そんな綺麗事の世界ではない。


介護福祉施設での人手が足りずに外国から人を雇い入れている実情、
国内で介護福祉士や看護師・医師を必要十分な数だけ育成・養成出来ていない。
これがアジアの先進国とかつて歌われた国の21世紀の現状だ。
姥捨て山と言われる施設の実情を表立って知らしめることなく、
医療費を切り詰め、最低賃金の算段だけで算盤をはじき、
望むと望まぬに関わらず一方的に後期高齢者と位置づけ、
自己責任という名のものとに国民を切り捨て、
福祉という幻想の影で、従来よりも貧しい支援。



平成の大合併で失ったのは、昔ながらの由緒・馴染みのある地名町名だけではなく、
自分の身の丈に在った村内・町内・市内の付き合いの中で施行される、
福祉行政であったはずなのに、高きから低きに流れるように、
水増しされた行政の中では、足並みを揃えるという表現の中で、
切り捨てられていくもの方が目だって仕方が無い。
そんなご時世に、ドラマのヒロインは介護福祉士を目指し、
看護師になって、医師を目指す思い人を支えようする。
さすが、ドラマの世界だね。バレンタイン前後のお約束。


実際の実習がどういうものであるのか、
狭心症の発作にどうして舌下錠なのか、
落ち目の歌手がどんなドサ回りを経験しているか、
心の離れた夫婦にはどんな中年の危機が訪れるか、
伝統産業の流通を一旦を担う、呉服屋倒産の危機。
店をたたむか続けるか、祇園置屋でなくても、
世間の大企業が人員削減をしなくては「もたない」今。
他人事ではない切実な危機感を抱いて、
ドラマの世界に引き込まれる人も多かろう。


だからこその物語、ドラマ、連続テレビドラマのてんこ盛りストーリー。
老若男女、誰もが「ん?」と心惹かれる、気になる、目に留まる、
そんな設定でなければ、なかなか人は振り向いてくれない。
(去年の『ちりとてちん』ほどのめりこめないけれどね)
世代・夫婦・きょうだい・親子・師弟・隣近所、幼馴染、同級生、先輩後輩、
仲間、上司、バイト先、様々な場所、様々な人間関係。


今の日本が抱える医療問題、複雑な雇用問題、経済問題。
どんな切り口からでも自分に降りかかる、振り返らざるを得ない、
気にせざるを得ない問題。そういうものを巧みに繋ぎに入れる。
去年の「ちりとてちん」ほど深みのある捻り技で伏線を張った展開、
こだわりの小道具は無いようだが、懐メロを盛り込んで、
ストーリー以外にも郷愁を掻き立てる小道具を使いながらの終盤。


今週末にはどんな展開になっているのか。
気になりながらも、いつも最初の5,6分しか聞けない。
それでも、画面を見なくても色々気になる。
ヒロイン達の名前が「めぐみ・のぞみ」なのも、
誕生日が大文字の送り火の日なのも、
舞台を京都と松江に分けたのも、観光産業を刺激する。
地方を舞台にするドラマは景気対策に一役買っている。
それ以外に、世相や時代、教育や医療、経済を含む社会問題にも。


ドラマの影響力がどこまでか個人差が大きいけれど、
何がしか思う所得る所があれば、軌道修正なり再確認なり、
色んな形で取り込まれる事は多い。
私の「タラ・レバ禁止」の一言のように。
職場ではこの時期、会議会議の連続で、差し戻しだの何だのと、
異動の滲み出しや、新年度への準備・画策で、
身辺落ち着かないことおびただしい。
そういう中で自分を見失わないようにするためにも、
本来は「タラ・レバ禁止」で動きたい所・・・。


だんだん―連続テレビ小説 (NHKドラマ・ガイド)

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NHK連続テレビ小説「だんだん」オリジナル・サウンドトラック

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