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『ジェネラル・ルージュの凱旋』

家族で映画を見に行く時は、娘が楽しめるかどうかが肝心。
そんな親の目から見ても面白かった今回。
原作を読んでいなくても十分楽しめた娘。
もっとも娘は「チーム・バチスタの栄光」の映画も原作も読んでいて、
物語の人間関係は把握済み。映画公開前のTVでの再放送も見ているので、
みんな揃って、わくわくルンルン気分で映画館へ。
ジェネラルってどういう意味なのか、ルージュって何なのか、
その辺から映画の中で謎解きしているので、
何も知らない人でも物語の世界に入って行き易かった導入。
さてさて、医療用ヘリコプター、ドクターヘリが話題の昨今、
実にタイムリーな医療問題を絡めて、色んな所から突っ込める娯楽映画の仕上がり。


そうです、扱っている問題は医療で、実に複雑な人間関係をばっさり切り捨て、
原作とは異なるキャラクター・人物配置で観客に見せる事を心得た演出。
それはそれで、1作目の『チーム・バチスタ』の時よりも、しっくりとした感。
まあ、この調子で連作してもOK? みたいなノリで映画が作られていた。
見易さ、わかり安さ、めりはり、骨太さ、そういう意味では上手なつくり。
専門家の突っ込みはさて置き、ストーリーのわかり易さ、
医療問題を素人に考えさせるアピール度からすると、『感染列島』よりは上。


シリアス度が違うと批判を浴びるかもしれない。でも、実際映像の迫力、
身近な雰囲気、ああ、こんなふうに救急医療の現場では救急車からの要請、
運ばれてきて処置、ドラマ仕立てなのでどうしてもアングルが、
現実離れしたところもあるけれど、インパクトとしては十分。
見終わった娘が、「コードブルーみたいだね」と言ったので、
ああ、ドクターヘリの存在ってこんなふうに知られていくのかしらと、
親としては感じた次第。TVや映画から、その存在の重要性をを受け入れていくのね。


私としては、あの破天荒な救急医、速水医師をどんなふうに描くのか興味津々。
おまけに役者は『篤姫』でブレイクした家定役の堺雅人、彼を見るのが楽しみ。
救命救急センター長、天才医師と色々描かれているものの、その実態は?
この謎解きが何といっても、ある意味山場。
田口役を女性に変えたことでファンを掴みたかったのだろうけれど、
前回の「バチスタ」では違和感大きすぎて、駄目じゃんと思った竹内裕子、
今回はけっこうしっくり役柄をこなしていた感じ。
前回の緊迫した雰囲気ではかなりも浮いていたけれど、
向こうの慣れかこちらの慣れか、まあ、何とか許せる範囲内。


暑苦しかったので出番が少なくてよかった白鳥役、阿倍寛。
原作の小児病棟はもっと色々抱えている伏魔殿、イヤイヤ大変な場所だけれど、
その辺はばっさり切り落として、医療問題、経済コスト、院内勢力争い、
癒着、病院内に渦巻く色んな力関係やいざという時の底力みたいなものに、
焦点を当てて、わかりやすくドラマ化していた所が合格。
何しろ原作の登場人物でややこしいのは、ばっさり切り捨てた所が見事。
映画化する時、どうするのかなあとちょっと心配だったから。

ジェネラル・ルージュの凱旋

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ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて

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チーム・バチスタの栄光 [DVD]

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基本的に邦画を見ない私なのに、ここ最近は本当にハリウッドより邦画が元気。
みるとそれなりに面白い。娘の反応も悪くない。
保育園の時に見せた『スウィングガールズ』『夜のピクニック』から始まって、
ちりとてちん』で大ブレークした貫地谷しほりが、ちょい役で出ている。
原作ではもっと活躍する看護師の役柄なだけに期待していたのだが、
こういう使われ方をされてしまったのは、ちょっと残念。


いつもお坊ちゃま風で善人役、悪役は向かないのか演技が出来ないのかと思っていたら、
今回ちょっと底意地悪い精神科医を演じる高嶋政伸
でも、思わぬ落とし穴にはまってオタオタしている所が見もの。
あら、こういう役もできたのねって感じだった。
実際精神科や心療内科では投薬できない患者(服薬を拒否する場合も含めて)を、
治療不要もしくは転院を薦めたり治療を打ち切ったりするので、
さもありなんって感じで見てしまった。


野際陽子も老いていい味出してきているわねって感じで。
ちなみに老眼鏡を外してしまうシーンで、あの眼鏡入れ、私のと同じだとチェック。
そういえば、眼鏡の人が多いけれどみんな素通しなのか、
老眼鏡は自前なのか、ちゃんと役柄に合うものを度付きで作ってもらっているのか、
今回そういうことまで気になってしまった。


堺雅人演じる救急救命センター長、速水。こんなに若くて長になれるのか・・・。
でも、笑っていながら本心を見せないこの役、『篤姫』の時の家定と同じ。
この人ってこういう役柄が向いている人なのだろうか。
でもって、人への気持ちを表現したり、愛を打ち明けるシーンの唐突さ、
取り付く島も無いような、はぐらかした感じから豹変!って感じの
素直さ子どもっぽさも、『篤姫』のシーンで見せたものと同じ感じを受ける。
こういう演技をする人なのか、地なのか、ちょっと面白い。


相手役の羽田美智子さんには、特に何も感じなかった。
こんな雰囲気の看護師さん、いるなあって感じで。
「バチスタ」の時の出演者がさりげなくカメオ出演しているのも楽しい。
基本的には医療を扱ったダイナミックな娯楽映画だと思う。
報道のヘリは飛ぶのに、何故ドクターヘリは飛ばない!?
この危機に活躍するのは今回骨折して動けない白鳥だが、
実際こんなふうに機転と顔の効く厚労省の御役人なんているわけ無い。
フィクションだから面白い。


何だか色々思うことがあったけれど、子どもにもわかりやすく伝えている、
そこの所に◎印。深い感動や強い感銘というよりも、
医療の現場、設備投資、病院の経営、大惨事が起こった場合のトリアージ
(黒で泣き崩れる家族、勝手にタグを引きちぎって重傷者を装うとするせこい奴)
倉庫の奥に積み上げられていた、エアーストレッチャー。
そういう現実的なものがインパクトをもって表現されていたのが嬉しかった。


えー、難をいえばパンフレットですね。白鳥役の横顔アップは×。
あんまり書くとネタバレになるから、これから見る人は原作とは違う
ジェネラル・ルージュの凱旋』をお楽しみください。

ナイチンゲールの沈黙

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螺鈿迷宮

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チーム・バチスタの栄光

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