Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

近江八幡水郷巡り

年度末と仕事でピリピリ、娘がキャンプに行ってしまい落ち込み。
これではいかんと、二人で気分転換をすることに。
私を1泊の旅行に連れ出した家人。当初は倉敷も候補だったが、
ドライブで大阪からは足を伸ばして近場近江の国へ。
ETCの無い我が家は、特に有利に旅行ができるわけでもないのだが・・・、
結局は、宿が取れた場所優先で行き先をきめたのかも。


1時間余りのドライブでたどり着いた近江八幡は、桜にはまだ早く、
乗れる都思っていた水郷めぐりの船は4月から定期便。
3月最後のこの週末の水郷巡りは、貸切飲みの運行。
運良く別のご夫婦と二組で和船に乗り組み、綿入れ半纏を膝に、
思いの外冷たい寒風吹きすさぶ中、1時間余りの船旅に。



人家が見える細い水路を少しずつ離れていくと、
野焼きした後も痛々しい黒々とした部分が見え隠れする葦が茂り、
枯れているようにしか見えないホテイアオイがまばらに浮いている水路を、
ゆっくりと水面が広がる方向へ漕ぎ出していく。
左手にゴイサギを、右手にカモの群れを眺めながら、
目に沁みるような風を深く胸に吸い込む。


背の高い葦の陰に隠れるように小さな鳥がちらりと見える。
葦の根元には竹で編んだ魚を取る為の駕篭が放置されたまま、
手入れされた様子なし。もはや使われていないらしい。
本来はフナや鯉を取る為のものだったが、
ブラックバスブルーギルのせいで、水郷の漁場は全く駄目とか。
琵琶湖同様、琵琶湖に流れ込む水路の魚も破壊された生態系のため、
絶滅危惧種、レッドデータの嵐。


   


水面には魚影は無く、死んだ鳥をつつくカラス。
静かで寒い水面を静かに和船は進んでいく。
船頭さんがこいでくれる和船は情緒溢れる佇まいだが、
殆ど説明らしい説明も無く、風景以外の妙趣に欠ける。
特に、せっかく膨らんだ桜の蕾がこの3日間の寒波で咲き損ない、
寒々しい景色の中を舟遊びとなったので、漕ぐばかりではなく、
少々おしゃべりが欲しいのだが・・・。

魔魚狩り―ブラックバスはなぜ殺されるのか

魔魚狩り―ブラックバスはなぜ殺されるのか

柳川と比べて水郷は広い。和船はエンジン船と違って静か。
そのしみじみとした情緒と、思いのほかの寒さ。
旅人としては何か土産話になるような話題が欲しい。
今年の桜は早く咲くという予想を裏切り、戻り寒波と強風に
お愛想の黄色い菜の花だけが、鮮やかさ故に侘しい。
川柳の黒々した枝が伸びているばかり。
まだ緑色の瑞々しい葉は殆ど見られない。


  


桜並木が続く川べりの「桜祭り」の灯篭も恨めしい。
これで桜が咲いていたら、どれほどロマンチックな舟遊び、
水郷巡りになったことだろう。たとえ寒かったとしても。
1羽だけ見かけたカワウに、船頭さんは舌打ちをする。
「あいつらはギャングだ」同道のご夫婦のご主人が呟く。
「自分の体重分毎日魚を食って、すっからかんにするからなあ」
カワウは間引きの対象になっているくらい、害鳥扱い?


観ていると、カワウは思いのほか長く潜っている。
船からは魚の姿はちっともわからないのだが、
そんなに沢山食べられる魚が見つかっているのだろうか。
「あれは樹齢100年は越えている川柳」
「昔はこの水路をお嫁さんは船に乗って嫁入りしたんだよ。
船旅が終わる頃になって、やっとぽつぽつ話す船頭さん。
もっとそういう話して欲しかったよ・・・。



北へ帰る鳥の群れは一瞬で消え、鳥の姿は小柄なカイツブリのみ。
船は遠くに山々を、あれ?あれ?姿は見えねど人の声。
どうやら葦の茂る向こうから聞こえてくる。
あ、え? 嘘ー。土筆土筆土筆だらけの土手の小道。
「さっき船に乗った時に見えたから取りに来たのよー」と
向こうから叫んでいる女の人3人。いいなあ・・・。
私も土筆摘みしたい。「船は途中で止まれんからねえ」と
おっとり船頭さんが応える。あーあ。


そういえば、娘と土筆取りに行ったのはいつの頃だったろう?
子供の旬は短い。春は幾たびも巡り来るが二度と同じ春はやって来ない。
私も娘も流れる時間は同じ長さのはずなのに、季節は同じ季節ではなく、
同じ春を過ごすことは二度とない。ああ、田んぼのあぜ道を、
保育園のお散歩コースを二人きりで歩いた日曜日の寒い朝
あれは幾つの時だったろう?


  


結局70分余り、思いの外早く時間は過ぎて行った。
真昼の船旅が終わると、ランチタイムを少し過ぎて13時半。
さて、これから近江八幡の中心街観光と行きますか。
冷え切った体を温める缶コーヒー。
船を下りるとレトロな建築巡りが待っている筈。

近江路散歩 (とんぼの本)

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藍い宇宙

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