不惑世代最後の日 - Festina Lente2

とてもきりのいい日。というのも、４月の２０日。割り切れるでしょ。
何だかすっぱりと。日にちを月で割り切るときれいな数字に。
そして、私の不惑世代最後の日。気づいてみればあっという間だった。
１０年前は妊娠中。この年齢で自然妊娠、初産。
神様は遅れてやってきた人間にも平等に幸せになるチャンスをくれる。
そんな風に思って生活していた。
仕事を続けながら毎日が過ぎていく。
真夏まで仕事を続ければ、産休に入れる。
身一つで過ごしていた頃があったのが不思議。
今となっては家族、血を分けた我が子がいない生活など考えられない。

素晴らしかった私の１０年間。辛かった私の１０年間。
最初の５年は人生を取り戻したかのような、充実した日々。
残りの５年間は泥沼に突き落とされ、這い上がってきた日々。
人を愛し信じて前向きになることがたやすかった最初の５年間。
人を憎み、運命を呪い、神を恨んだ最後の５年間。
だからこそ何時如何なる時もランプの油を絶やさずに待て。
しかし、誰が好き好んで試練など欲しいものか。

いいこともあれば悪いこともある、人生トントン。
何でも五分五分。本当にそう？
笑いながら傷つき、泣きながら怒り、怯えながら八つ当たり。
うつろに白黒に見える世界を切り取って焼き付ければ、
色が感じられるような毎日。
本当の色は目に焼きついたまま記憶の奥底だ。

この１０年。いいこともあれば悪いことも。
どちらを沢山、思い出したいか。
それは自分で選ぶこと。
貴重な２４時間が過ぎていく。
でも毎日することは変わらない。
何も特別なことは無く、娘を水泳に迎えに行き、
クリーニング店で冬物のコートを受け取り、
買い物、帰宅して、食べて、夕刊を読んで、ＴＶを見て、
一日が終わる。

いつもと変わらない毎日の生活。
起き上がると歩くのが辛くなって来ている、
足を引きずることは無いけれど、うまく筋が伸びない感じ。
足の裏の縦横のアーチが崩れて、体全体をうまく支えきれない感じ。
眠っても疲れが取れない、そんな筋肉が増えてきた感じ。
なのに心のどこかは妙に子供っぽく幼い部分。
落ち着いて年を重ねるのではなく、やっぱり流されているだけ？
ただ身体の変調が足を引っ張りながらも、年齢を教えてくれている？

それでも実り多かったこの10年。
小さな子供でもなく、娘でもなく、職業人としてだけでもなく、
私を変えたこの１０年。幸せな５年、その後の５年。
塩辛く甘苦く私を深く豊かにもし、ささくれ立つ棘を植え付けた日々。
そんな１０年間が過ぎていく。
明日からどんな日々が始まるのか。