Festina Lente2

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将来の夢は

娘の担任の先生が家庭訪問した1週間後、娘は将来の夢・希望に一つ、
小学校の先生が加わった。全く影響力というのは恐ろしい。
そして、昨日は中学生や高校生になったら入りたいクラブがあるとのこと。
「音学部・文芸部・読書部・科学部」実験やお料理ができるなら、
家庭科部もいいなあと夢を膨らませている。
実際、公立の中学校・高校でどの程度部活動が出来るかわからないけれど、
TV番組ではたまたまミュージカル部の番組をしていて、
こういうのもいいなあと憧れている模様。


小さい頃から、お菓子屋さん、お花屋さん、お医者さん、薬屋さん、
色々夢が変わってきているが、私が小学生の頃、
「文芸部」などという名称を知っていただろうか・・・。
娘の持っている情報にどこまで付いていける親だろう、私。
でも、歳が離れた親子だからこそ刺激を受けることが出来る。
思えばある意味ラッキー。若返ることは出来ないけれど、
日々成長する若さに接していられるのは楽しい。


そして、嬉しいことに、「古典部」もいいな、
清少納言好きだもんなんて、娘は口にする。
紫式部より清少納言のファンなのは、漫画枕草子の影響が大きい。
それでも、大学教育の中で廃れつつある文学関係、
日本文学科出身のかーちゃんとしては、単純に娘の発言が嬉しい。
もっとも、中学・高校で、古典文学に打ち興じてくれる、
そんな仲間を探す方が大変だとは思うけれど・・・。
いつまでこんな夢を無邪気に語ってくれるだろうか。


親子してはまっているのが『日本人の知らない日本語
日本語教師の悪戦苦闘がユーモラスに描かれている。
仕事柄興味津々、娘も国語の教科書にはない楽しさに笑っている。
外国人が日本語を覚える過程とは異なるけれど、
母国語の習得は簡単だと思っているなら、足元を掬われる。
さりげなく挟み込まれたエピソード、「バイト言葉」に毒されて、
正しい日本語を覚えられない生徒。
店で使われる可笑しな日本語に苛立つ人も少なからずいるはず。
だから、普段から感じている疑問や違和感、
ちょっとした薀蓄がわかって嬉しい。

日本人の知らない日本語

日本人の知らない日本語

まんがで読む古典 1 枕草子 (ホーム社漫画文庫)

まんがで読む古典 1 枕草子 (ホーム社漫画文庫)



アマゾンで取り寄せるのも楽でいいが、音楽教室にお迎えついでに、
駅の本屋を覗くのは楽しい。古本コーナーの漫画も、新刊書コーナーも。
ハウツー本だと分かっていても、ついつい手にしてしまう本。
ざっと標題に目を通しておく新書、文庫。
娘の基礎英語のテキスト、園芸や料理の実用コーナー。
本屋はワンダーランドのように楽しい。


情報を発信できる人が羨ましい。
多くの読者を得て、様々な情報を、思いを、夢を語れる人が。
娘もそういう世界に憧れているらしい。
私が、『若草物語』のジョーに憧れたように。
なかなかそんなに簡単に叶う夢ではないのだけれど、
書く人、描く人、デザインする人になるのは難しいけれど、
だからこそ世界は広がり、夢は一杯になる。


そんなふうに夢を紡いでいた作家が亡くなった。
その訃報であちこち持ちきり。されど残念ながら、
栗本薫 死去」の見だしなので、距離感と違和感が大きい。
私にとっては彼女は、「中島梓」であり続けたし、今でもそう。
闘病生活を送りながらも、等身大のエッセイを書いた人。
私にとっては、ギネスに乗るような連作を書き続けた人ではない。
だから、申し訳ないがというべきなのか、『グイン・サーガ』のシリーズは
読んだことはない。作家、栗本薫の姿を知ることなく終わってしまった。


最近は、ミュージシャン・漫画家・絵本画家・アナウンサーと訃報が相次いだ。
その誰もが、私にとっては血肉になるような身近な存在ではなかった。
名前は知っているけれど、深く強く感情移入できる相手ではなかった。
ただ、デビュー当時から知っていて、これからも書き続けるだろうと思っていた、
リアルタイムでその活躍を見てきた私達世代。
走り続けてきた人、少し先輩の世代の代表の一人が、
夢半ばで逝かなければならなかったことに、一抹の寂しさを感じる。


グイン・サーガ』のアニメ化を彼女は知っていただろうか。
(そのあとに『蟲師』が放映されるので、たまに目にするが)
病床で目にすることはあっただろうか。
目にして、どんな思いを抱いただろうか。
彼女の夢は、枯れること無き創作への夢は、
余りにも多産、才能溢れる活動と引き換えに、
命を削ってしまっていたのだろうか。
そんな事をチラリと考えてしまう。


娘の溢れるような夢を聞くことが出来る幸せに浸りながら、
自分が諦めていった、ふがいなくもチャレンジすることもなく、
諦めてしまった数々の夢や希望の亡骸が、累々と心の中に広がる。
そして、自分とは異なる「創作する人」が駆け抜けた人生、
与え続けた影響、後世に残した足跡、そういうものを思う。
近しい人々、熱烈なファンにとっては悲しく寂しい日。
距離を置いている私でさえも、人が逝くことに思いを馳せる。


これからの夢を語る娘。これまでの仕事を残して旅立った人。
将来の夢を訊かれたならば、一体何を答えればいいのか、
索漠とした生活の虚を突かれて、胸痛む思い。
これから、これまで。
正面切って向かい合うのが難しい。
これから、これまで。

ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫)

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コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

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