Festina Lente2

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ターミネーター4

「どこで誰が、未来を変えたのか?」これが今回のキャッチコピー。
未来は可変性に満ちている、予想不可能なパラレルワールド
それとも不可変性が勝った、予測可能なパラレルワールド
可変性に満ちた予測可能な世界なら、面白くないよね?
シリーズものはジリ貧になりがちだから、多少構えてみてしまう私。
何しろ二匹目の泥鰌ならぬ、何匹狙ったら気が済むんだの世界。
ファンというリピーターは自動的に吸い寄せられるから、困る。
ファンでなくても、何が興味に引っかかるか。


ターミネーターのシリーズもリアルタイムに見てきたが、
どの作品が1番面白いかと聞かれたら、少々迷う。
何しろ狙いどころがそれぞれ異なる。
未来からの刺客がヒロインとボディガードを結びつけることになるし、
未来の指導者は自分を生まれさせるために、
父親になる人間を過去に送っただなんて、T1ではまだわからないからね。


T2はむちゃくちゃ強い母親、父親の代わり? ターミネーター
少年を挟んで人間と機械の強い結びつきもさることながら、
CGの液体金属ターミネーター怖かった。
T3の女ターミネーターが、血痕をぺろりと舐めてビックリ目と恍惚。
ターゲット、ジョン・コナーの存在を確認したシーン、
あれはなかなか不気味にセクシーだった。
もっともT3は興行成績の割には評判は今一つ。


今回、T4は・・・。まるで日本戦争映画に出演中の、
丸刈り中井貴一みたいな表情のクリスチャン・ベール演じるジョン・コナー。
本当に死刑囚なのか、不思議なキャラのキーパーソン、マーカス・ライト。
ほんの少ししか出演せず、生身よりもスカイネット中枢部のイメージ映像の方が、
数倍迫力の科学者セレーナ博士を演ずる、ヘレナ・ボナム・カーター
エキセントリックな存在感が何ともいえず、ぞくぞくする。
カイル・リースは今回ちょっとお子様。T1の方が私の好み。


そして、T4の特徴は対比と伏線、メタファーのオンパレード。
東洋的な思想を散りばめたタイムパラドックスの醍醐味とでも。
mind & heart, man vs machine、死の接吻、二度目の生、やり直し、
死と再生、審判の日、I'll be back… 挙げればきりが無い。
「恐れるな。未来は変えられる。」そのためにどう動くか。
空白の部分が多い東洋の絵画。びっしり細密に描かれる西洋画。
歯車がずれ、時空は歪み、予想は常に裏切られ。

ターミネーター4 オフィシャル完全ガイド(ShoPro Books)

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ターミネーター4

ターミネーター4



人類の未来に役立つと信じられて作られた機械が、
人類こそが大いなる敵と認識、自立して攻撃を始める。
「人類の未来に役立つ」実験体として蘇った機械の体を持つ人間。
機械として生きていく事も可能だが、獅子身中の虫
囮としてモノ扱いされた自分自身の尊厳を掛けて、
人間を守る側に立つ面白さ。
ターミネーターに殺されたマーカスを電気ショックで蘇らせるジョン。
最終的に常人のモノならぬ心臓を、ジョン・コナーに渡すマーカス。
ダブルマインド、ダブルハートの面白さ。


「いい男が減ったわ」と嘆く女性パイロットを襲う駄目男は人間。
救う男は機械化人間。この皮肉も面白い。
「力強い心臓の音」と耳を寄せる鼓動は、未来への鼓動。
未来を切り開く指導者の鼓動となる。
ジョンが、母親サラの言葉を古いテープで再生して聴く。
アナクロなメッセージが、アナクロな呼びかけに繋がる。
「機械と同じことをして勝利するならば、我々は人間ではない」
(我々人間は機械と同じ冷酷な行動を取って勝利する事は無い)


一つのメッセージが変形、変換、拡大解釈されて、
様々な感情、怒りや悲しみ、愛情と憎しみ、信頼と友情に置き換えられる。
そういうプロットを意図的に描き出そうとしている点は、
前の作品達のエピソードを押さえつつ、美味しいとこ取りではないが、
観客が感情移入しやすいような作りにしている事は確か。
囮の機械化人間、囮の交信パターン。
騙し騙され抜きつ抜かれつで、物量戦だけではなく心理戦。
休むことなく疲れを知らない機械と双方の面で戦うのは不利な人間。


だからこそ、コンピューター計算の元に、
機械のために試算された未来を、享受することがあってはならない人間。
逆に言えば、人間の為だけに何もかもを利用して、
悪しき方向に地球の未来を変えてしまってはならない人間。
残念ながら、シュワちゃん全盛期から今に至るまで、
地球の未来が劇的に良い方向に変わる要素なんて、
皆目、さっぱり、全く、はてさて、わかったモノではないのだけれど。


ターミネーターシリーズは強い指導者を、
未来を切り開く強いリーダーシップを望む、
アメリカの願望・希望・憧れが入り混じる作品。
危機的状況を切り開く誰かが「最終兵器」になって地球を救う。
そんな望みを投影した作品。
決して自分達を破滅させるのではなく、救うはず。
科学の勝利とは人間の勝利のはず。
そんな能天気な未来志向が、ヒヤリハットの映画を紡ぎだし、
同じ麻薬に痺れるように、シリーズもののスリルとサスペンスに浸る
リピーターを招きよせる。


そんな作品。ターミネーター4。
でも、未来を夢見るには『マトリックス』の荒唐無稽よりも、
健全なものかもしれない。そんな風に感じた今日。
マトリックスは誰かと繋がっているようで、繋がっていない。
切れていく分断していく危機を孕む。
Tシリーズはその点、甘いのかもしれない。
でも、何かと誰かが繋がっていることが、
点と点、点から線、線から線、網目状に広がる世界を構築する。
デジタルではなくアナログな繋がり。
いつかどこかで、誰かと繋がり。
そして・・・。

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