Festina Lente2

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剣岳−点の記

話題の映画を見てきた。評判になっているからではなく、
娘が昨年の夏、キャンプで立山は雄山に登山。
それなりに思い入れがあって、山の映画に興味を持っていたから。
私自身は主役二人に対するNHK番組ののインタビューをラジオで聞いて、
「体が山になる」日を迎えるまで鍛錬を積み、撮影に入ったという、
いわく付きの演技や、CGを使わないで狙ったというベストショットを見たかった。
篤姫」でブレイクした女優さんも出ていたし。


まだ娘を連れて行っていない、その「明治村」でロケ。
ああ、明治村を楽しむには日本の歴史を知らなくちゃ。
私自身、立山雷鳥を見に登ったのがうん十年前。
降りる時にひざを痛めて関節炎になり、ナパノールで薬疹。
登山の想い出は、若い頃の苦い記憶に繋がる。
就職して一気に衰えた体力・脚力、父から借りた布製の黄色いリュック。
美しい景色よりも、なかなか寝付けなかった雑魚寝の山小屋。


新田次郎ファンの世代ではない私。
周囲を見渡せば親子連れというか、子供連れの映画鑑賞なんて、
私達ぐらい。いや、うちの娘は騒いだりしないけれど、
何だか場違いな所に連れて来てしまったのかと、気後れ。
娘は「どうして予告編にハリー・ポッター」が出てこないのと不思議そう。
予告編は客層に応じて、映画に応じて変わる。
大人向きの邦画に子ども向きの洋画の予告編は出ないことを、娘は知らない。

もうひとつの劔岳 点の記

もうひとつの劔岳 点の記

新装版 劒岳 ―点の記 (文春文庫)

新装版 劒岳 ―点の記 (文春文庫)


嬉しかったのは、香川照之の役どころが良かったこと。
何故か、数年前とある大女優と共演した時の役どころが、
結構悪役だったので、その印象が染み付いてしまっていて、
なかなか取れず難儀していた。役者だから色んな役をこなせて、
素晴らしいと素直に思えないのが辛い所。
日本映画は役者の数が少な過ぎて、人が集まると同じ顔ぶれ。
どうしても同じ人間、同じメンバーに目が行ってしまう。


特に、有名な映画、渋い映画であればあるほどカメオ出演はあの顔この顔、
粒揃いの俳優はよく見る顔ぶれ。気付くとうんざりしている。
俳優の演技よりも、ああまたこの顔ぶれなのね、
何てよく見る顔ばかり、どうして大きな作品になると見る顔は同じ?
あの役の時のA、この役の時のB、そしてCと思ってしまう自分がいる。


山が主人公の映画だから、山が主役だと思っていたのに、
物言わぬ山よりも、登場人物同士の役柄上の鞘当て、牽制が気になる。
気になって仕方が無い。そんな雑念にも似た思いが後から後から湧いて来て、
映画に集中できない。何てざまだと我ながら呆れる。
山の美しさも厳しさも、その荘厳な景色よりも、
陸軍の測量部の書架に目が奪われ、
山道を案内する「彼」の着ている刺し子の服に釘付けになる。
あのような衣装を、端切れを、今用意できるはずが?


道理で違和感を覚えたはず。
博物館からの借り物だと、後からパンフで知って納得。
どうして民俗学上の衣装や、草鞋を編むときの体重の掛け方、
ちょっとした雑貨や動作が気になって目が離せない。
ほうかむりの手ぬぐいの藍の地模様に汗染みも色褪せも無く、
自分の知っている農家の景色との食い違いに、
画面の向こうに吹雪いているとてつもない寒さに、
どうしても違和感を覚えている自分がいる。
そして、「ビスキュイ」の入った缶が、やたら気になる。
マタギと思しき猟師の、雪の上を滑って降りる姿が目から離れない。


「何か」が邪魔して映画の中に入って行けない。
偉業を成し遂げた人間を認めようとしない、陸軍。
手旗信号のやり取りが、画面を漫画チックな青春物にしてしまう。
登山家が登山家に見えず、「K-20」の怪人二重面相に見えてしまう。
いつもは色んな役柄が透けて見える俳優が、今日は駄目。
自然の景色との対比で、人間がやたら浮き上がって見えてしまう。


初登頂のシーンでは先陣争い、いや違った、
禅譲の場面? BGMのサラバンドはバッハだった?
それともヘンデルだった? 弾けるけれど、記憶が曖昧。 
印象的で有名な音楽を、この場合山の景色にぶつけて良かったのか・・・。


集中できないのは、体の痛みや痺れのせい?
帰宅がてら、久しぶりにソフトカイロへ。
「何をしたらこんなに首が緊張するんです?」と呆れられた。
この数日、首がシャリシャリ音がすると思ってはいたが、
ここまでひどい状態だとは思わなかった。
先生に、「今日はこれ以上無理ですね。一度では筋肉の緊張を取るのが
難しいです。ゆっくりお風呂に入って休んでください」とまで言われてしまった。


そりゃ、出張は多いし疲れてはいたけれど、
むろん緊張することは様々だけれど、嫌な思いを立て続けにしたのは、
先週だったはずなのに・・・、そんなに引きずっていた?
首や肩を押すと(押されると)確かに痛い、これほどまでに痛い?
・・・自分で気がつかなくなっているくらい、凝っている。
痛みが来ているのを通り過ぎて、痺れや違和感になっていた?


それと映画に集中できなかったのと、どれほどの関連があるのか。
我ながら、ショック。映画の世界に浸りきれず。
娘は「この映画長すぎるよー」確かにね、それは言える。
家人、「雪崩の前で身構えているのは、スタントが準備しているから?」
・・・? 家族みんなの意見もおかしい。
みんなも集中し切れなかったの?
美しい景色に、物語に、「剣岳 点の記」の世界に、
別のものを見てしまったの? ああ、修行が足りない私達。

新版 劒岳〈点の記 〉

新版 劒岳〈点の記 〉

劔岳 森下恭写真集

劔岳 森下恭写真集