Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

石舞台から甘樫の丘へ

朝ゆっくりと9時過ぎに出発。曇天、雨が心配。
晴れ女のかーちゃんの念力は果たして通じるか。
歴史に興味がありそれなりの知識がある集いであれば、
あそこも見たいここも知りたいと興味津々で散策に出かけるのだろうが、
小学3年から6年までの子どもと保護者なので、
歴史探訪ツァーというわけにはいかないのが残念。
明日香の地は昨日の講義によると、「安宿」安心して宿れる地の意味と、
昔からの枕詞「飛ぶ鳥の」が「明日香」に掛かるので、
「飛鳥」と書いて「あすか」と読むようになったのだそう。

 


ネオンサインも車の振動・騒音も無い静かな夜から朝。
散歩も終えて、ウォーミングアップ十分の私と、
この地を散策することの目的が今ひとつの子供達。
南淵請安の墓は、何故か藤原鎌足を祭る小さな祠、
談山神社の裏に隠れるように小高い丘に祭られていた。
この渡来系の学問僧が当時の日本を揺るがすクーデターを起こした、
中大兄皇子中臣鎌足を支えたわけか・・・。

 


切ない和歌、万葉集の碑のある飛石も子どもたちは飛び越えて行くだけ。
歴史の先生は歌の解説もせず黙々と歩いて行く。
娘は「この電信柱、木でできている!」と蔦の絡まる細い電信柱に歓声。
うーむ、子供達の関心はどこに向けられているかわからない。
勧請綱の謂れは昨日聞いたが、子供向けの解説で道祖神に関しては無し。
まあ、民俗学的に詳しいことを言い出したらきりが無いしね。
せっかくの男綱も、川の上に掛かった長い注連縄といった印象だけ。
おまけに雨もぱらついて来て。

  


しばらく歩くと素晴らしい棚田が見えてくる。
真っ青な空の下で眺めたかった、繊細な田んぼの表情。
道端には楽しい案山子コンテストの写真。
景観を守るのは大変だが、そのお陰で雨に煙る日本の景色満喫。
奈良特産の苺、あすかルビーのビニールハウスを横目に通り過ぎ、
坂田寺跡、都塚古墳の解説を聞く。
何でもここの石室の石組みの角度は急で例がなく、必見だそう。

 


講師の先生は沖縄のグスクの研究がご専門だとか。
発掘は様々な書類申請・地元の協力・理解含めて、
調査のための前準備と後の調査結果の整理が大変だそう。
現地に赴いても草刈1週間、そして一気に丁寧に掘って調査、埋め戻し。
その後の分析・考察に長い時間を掛けられるそうだ。
何事も、そこに至るまでの時間は長く、その後の事後処理のほうが大変。
分野は違えど、通る道は同じなのだなあとしみじみ。


今では歴女とかいう言葉もあるらしいけれど、
昔の文学少女はご多分に漏れず、歴史・民俗学・心理学は何でもござれ。
弥生時代の池上遺跡発掘を見ながら育った私にしてみれば、
もっともっと詳しくお話をお聞きしたいところ。
子供達も自分の親ではなくて別の親と喋ったり、
子供達同士でだべったり、色んな形でお喋りしながら、
歩いている内に雨も上がり、本日のメイン石舞台に到着!
しばらく休憩となった。


ペットボトルの柄が凄い。 


休憩所でスタンプを押したり、パンフレットを眺めたり。
埴輪の模型が付いたストラップがかわいいので、思わず全種類買ってしまった。
こういう大人買いは昔できなかったなあ。一つだけでも欲しいとか、
一つでおしまいにしなくてはとか、無駄遣いはできないとかすぐに思ってしまって。
それぞれの親子ペアは買い食いもせず休憩時間を過ごし、
チケットを手渡されて石舞台の傍へ。
えーと、昔見に来た時にこんな場所だったっけ?
チケット買ったりしたっけ?

 



今は亡き緒方拳が蘇我馬子役だったNHKドラマ「聖徳太子」。
実際の嶋の大臣(おとど)がどのような人物だったか、
その権力の大きさ故に、子も孫も滅ぶ運命を辿ったとも言える、
その人の墓と称される石舞台。
なるほど舞台と言えば古代日本の歴史の舞台ではある。
しばし自由に見学後、亀石見学に向かって出発。

 


実をいうとこのルートには、聖徳太子誕生の地とされる橘寺や
その向かい側になる川原寺など見所は一杯。
ただ歩いているのは勿体無いのだが、子供連れの散策では無理。
しかしゆっくりペースでも歩くのは結構大変、本来ならば、
サイクリングで回った方が手っ取り早いコースを、
みんなと一緒だから歩いて回れるという利点も大きい。

 


空は抜けるように青空になってきた。田んぼの稲が眩しい。
あれ、こんな場所だったっけ? 亀石の場所は?
昔訪れた時は寂しい場所だったのに、新しい道ができて、
直売所兼小店ができ、随分明日香村の景色も変わってしまった。
記憶の中にある景色とのずれに戸惑いながら、亀石見学。
どっしりとでかい亀石が、古(いにしえ)から変わらず
在り続けているという、そのことにただただ驚き恐れる。

 


そして、昼食の場所、歴史公園甘樫の丘へ。
お弁当が古代米・赤米のお弁当で美味しいの何のって。
緑の景色に囲まれて、森林浴しながらお食事。
男の子達は早々に食べ終わって、「最初の一歩」遊び。
懐かしいなあ、今でも子供達こんな遊びするんだね。
昨夜は卓球やUNO、トランプなどに打ち興じていたけれど、
こういう姿も楽しいね。ほほえましくてかわいくて。


展望台に登ったり、植物の説明板を読んだりしながら時間を過ごす。
国営飛鳥歴史公園とあるけれど、植物群が整備されていないのが残念。
奈良の地名が入っている万葉植物、(アワ・ヒトリシズカヤブカンゾウヨメナ
行事で使われた万葉植物、(コウヤボウキ・スミレ・セリ・ヨモギ・ワラビ)
薬用の万葉植物、(キキョウ・シラン・ニワウメ・ヒオウギヒルガオヤマユリ
染色に用いられた万葉植物、(ケイトウ・ベニバナ・ヤマアイ・ヤマブキ)
食用の万葉植物、(オケラ・カタクリ・セリ・タチスボスミレ・ニラ)
せっかくの解説も泥で汚れて読みにくい案内板。


木や草の香りに浸り、ぼうっと緑を眺める。
こんなふうにのんびりぶらぶらとする時間が、日常生活余りにも少なく、
しなければならない仕事に追われていた6月から7月の疲れが、
嘘の様に消えて行く。職場にいる自分と今ここにいる自分とは、
同じ人間なんだろうかと思えるくらい。
そして、今回は子供達が主役。修了証書を一人ずつ貰い、
記念写真を撮った。大学の先生方、村の方々ありがとう。
いい想い出になりました。


バスであっという間の1時間、下界というか都会というか。
高層ビルにごちゃごちゃした町並み、あっという間に市内へ。
名残は尽きねど、親子ペアは右へ左へ。
楽しく過ごさせて頂いた。皆さんありがとう、いい土日でした。