Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ポリテクフェスタへ

病院の父の容態は心配なれど、入院したことがあるからわかる。
お見舞いに来て貰うのは嬉しい、けれど却って気を遣う。
特に入院したての頃は安静が一番、父の顔は見たいけれど、
ずーっと傍に居るのもね、お互い。
それで、今日は家族3人でお見舞いに行く前に、
娘が小学校から貰って来たチラシで、ポリテクフェスタへ。

  

ポリテク、それは近隣の市にある近畿職業能力開発大学校
ものづくりの教育理念のもと、日々研鑽に励む学生たち。
学園祭は去年小学校からのチラシで知った。
小・中学生対象に、ものづくり体験教室が行われ、人気高し。
参加するための申し込みチケット配布が朝の8:30。
当たればボイスチェンジャー・光る泥団子・オルゴール等々、
様々な体験企画に無料で参加できる。

  

抽選型及び、随時参加型もあるが、やはりみんなのお目当ては、
担当教官がつききりで指導してくれる、一味捻った体験教室。
去年は家人と娘だけ参加、今年は一緒にとせがまれていた。
父のこともあるし、家事は山積みなれど、
母の調子もよさそうなので、父のお見舞いを兼ね初めて参加。
寒い中、大勢の子供たちが既に集まっている。
近所でなければ、車なしでは来られない大学校なのに。



娘が選んだのは、銀粘土を用いたストラップ作り。
女の子らしい選択、というべきか?
幸い当選! 運が良かった。午前中10名限りの体験。
保護者同伴で作るそうで、私も経験することに。
材料と道具が用意されている机、説明と手順用紙。
教官の説明を受けながら、私もすっかり受講生
実際に作って見せてくれる手元に集中。
そうか、説明だけじゃ子供には無理。
実際に見せることが一番の説明。
ハート、熊、猫、三つの型抜きを用いて、いざ!

  


銀粘土は空気に触れるとあっという間に固くなるので、
折り目を付けないように指の中でモミモミ。
選んだ型の中にぐっと押入れ、圧縮。
隙間が残らないようにしっかり抑えるのがコツ。
型の中にきれいに押し広がっているのを確認して抜く。

   


それをそーっと持って行って、グリルの上で焼いて固める。
(自然乾燥だと1週間は待たないといけないそう)
それから粗めの紙やすりで形を整えつつ磨く。
この時の力の入れ具合が難しい。まだ柔らかい分、
形を整え易いが、逆に変形もし易い。
これでいいと思う形になれば、穴を開けて貰って、
(危険な作業は教官が行う)本格的に焼成

  


こうなるともう傷や形は簡単に直せない。
磨いて綺麗に仕上げる工程に入る。
金属の刷毛で一回り小さくなった様な雰囲気。
細かい目の紙やすり、そして銀磨き用の練り磨きを
(まるで歯磨きみたい)布に付けて磨く磨く。
出来上がったのが、これ。
私は熊(平らに磨き切れず斜めの部分が)、娘は猫。
万歳オリジナル銀のストラップ!

  


娘のと並べてみると、私の熊は磨き具合が下手で凹凸が目立つ。
どうも墨も真っ直ぐ摩り下ろすことができなかった不器用さが、
思いがけずこんな所にも出てくるようだ。
それでも娘と肩を並べて作った銀のストラップはいい記念。
自分が親と持つ事のできなかった新しい経験を、
今娘と持つことができる幸せ、幸運。

  


その後、食べ物やの屋台、クイズ、金魚すくいと定番コース。
液体窒素の実験でバラを手の中で粉々に。
ポリテくじを期待するも、おもちゃのトランシーバーのみ。
DSや折り畳み式自転車、電子レンジやiPodなど、豪華景品。
大人用と子供用に景品が分かれていたが、こちらは順当に
子供用が当たったわけだが、娘のむくれることむくれること。

  



DSが欲しかったー!(かーちゃんは実用品が)
でも、何も当たらなかった人が大勢居るのに、
当たっただけでも幸運でしょ。
そう、我が家は付いているのだ。
私が実家に居て夜中に仕事で起きていたから、
母の様子も父の様子も窺うことができた。


救急車を呼ぶことができたのも、
診てくれる先生が見つかったのも、
輸液と輸血で症状が改善したことも、
父だけが強運なだけではない。
母も、私も、そして娘よ、君も。
家族が家に居たこと、起きていたこと、
母は私に声を掛けるだけの正気があって、
父には回復するための体力気力があって。


君は希望した「ものづくり教室」に参加できた。
かーちゃんもとーちゃんも、一緒に新しい経験。
そして、ポリテくじを楽しみ、3人でじーちゃんを見舞い、
6人部屋の病室で、穏やかな時間。
こういう時間を、瞬間を過ごせるのも、
ありがたいことに運のなせる業。
老父が孫の土産話を聞く僅かの時間、
穏やかな日常がふと舞い戻ったよう。
そう、私たちは運が良い。
心からそう思える、父の入院4日目。