Festina Lente2

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見えないからこそできる研究

盲目の女性がIBMで最も優れた研究員として活躍している。
IBM技術者の最高職位「IBMフェロー」、浅川智恵子。
継続的かつ卓越した技術実績とエンジニアリング、プログラミング、
サービス、科学技術の分野に貢献した最高の技術専門家の中から
任命されるIBMの技術者の最高職位。
障がい者の情報アクセス/コミュニケーション向上に貢献する技術の研究開発。
IBM社内外においてアクセシビリティーの重要性に関する啓蒙活動も推進。


この情報化社会に障がい者がどのようにかかわっていけるか、
かかわれる方法を手助けする仕組みの開発、啓蒙ということか。
なるほど、情報化社会のバリアフリーを目指す研究者。
障がいゆえに差別される事の多い社会、
ましてや周辺の機器を使いこなす事は難しい。
更に、健常者と同じ機能では使いこなし難い。
ならば、どうすればいいのか。
その不便さ、その問題点を一番良くわかっているのは、
日常生活で苦労している本人、
その視点が研究に最大限に生かされたということか。


水泳の事故で失明、中学で失った視力、盲学校に進学、
それからいくつもの人生の山を乗り越えて、目が見えないからこそ必要なこと、
情報という海に漕ぎ出すためにどうすればいいかを、
このインターネット社会を享受するために、わかっている自分、
その自分のイメージ、試行錯誤を形にすることで
「積極的に果敢に取り組む」研究者として注目される女性、浅川智恵子。


今日のNHKプロフェッショナル仕事の流儀はなかなか刺激的だ。
「あきらめなければ道はひらける」こんなこと、さらりとは言えない。
「苦しいと思うまで詰めたら、道はひらける」
普通の人間はその苦しさに負けてしまうものだ。
だから、道が開ければいいのに・・・で、とまってしまう。


最先端のIT技術を、更に磨きを掛ける。
誰のどんな視点から、何を目指し、何を構築するために。
見えるということ、聞こえるということは、何がわかることに繋がるのか。
その基本的な事を余りにも忘れている毎日であるがゆえに、
このような研究の世界が、新しい可能性を切り開いていく姿に、
目からウロコが落ちる。

キャリアを拓く―女性研究者のあゆみ

キャリアを拓く―女性研究者のあゆみ



普段、目が見えて耳が聞こえることが当たり前だと思って生活。
これが一般的な健常者の生活。だから、インターネットも、TVも、
目で見て耳で音を聞いて、視覚聴覚を当たり前に駆使。
しかし、たまたま聴覚支援学校の生徒と電車に乗り合わせ、
ケータイを使っている姿を見て、軽い衝撃。
電話でやり取り、音を聞くのではなく、
メールやネット画像、文字情報が楽しんでいることが。
というよりも、骨伝導を知っていても、ケータイの利用の幅について
それほど深く思い至ることは無かった。
視覚支援でケータイは便利かなぐらいに思っていたけれど、
それは普段ケータイを音声として捉えている私の古い感性。


日本には女性の研究者は少ない。以前よりは増えているとしても、
割合からすればとても少ない。だから、一途に打ち込める人に憧れる。
仕事に基礎的な土台を据えられる人、斬新なイメージを持ち続ける人、
創造的な世界を具体的なものに置き換えるパワーのある人、
そんな人の話を聞くと、憧れと同時にため息。
でも、励まされる。こういうプロフェッショナルがいるのだと。
健常者でも極めることが困難な研究者の道を、自分の運命、障がいと闘い、
切り開いている女性の研究者。


そして、娘と買い物、試着しながら服を選ぶ母親としての姿、
手を引いてもらいながら歩く、食事中も議論しながら過ごすその日常。
家族を持ち、美しく装い、バリバリと仕事をこなすその背景に、
どれほどハードな過去、強い意志、負けじ魂があったのか、
考えさせられ、また、励まされた。
障害を抱えて働砕けでも普通は大変なことだ。
それを、博士号を取り、「自分にはできないことがある」という見極めのもと、
チームを組むことで、研究を導く。


次世代を育てる研究姿勢にも、大いに刺激を受けた。
研究者は単なる研究だけではなく、職場内外も含め、
教育者としての資質も必要。改めて、参考になり考えさせられた。
そう、私の年代になると職場内教育は大きな問題だ。
(自分の娘一人をどんな風に育て上げればいいのかも、頭が痛いけれど)
別世界の仕事人の逞しく生きるその姿勢に、勇気付けられた夜。
考えさせられた夜。

ソフトウェアの匠2

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プロフェッショナルの原点

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