自分が重い

とある勉強会に出席したものの、思うような収穫が無い。
ちょっとばかり凹む。痛む足を押して出てみたのに。
家人に車で送って貰って、大阪市内まで出てきたのに。
大阪という所は雨に濡れずに歩ける町で、
JR大阪、地下鉄梅田、西梅田、東梅田、地上に出る必要が無い。
各デパート、大型量販店、ショッピングモール、ファッションビル、
大きな劇場や映画館の地下にそのまま直結。

若者にとっては便利だが、さて、今の自分の身となると辛い。
足が不自由とまではいかなくても、足が痛いと歩けない。
バスに乗るでもなく、一駅歩くでもなく、地下道だけを歩く。
ビルの中を垂直に、地下道を平行に移動。
意外と距離がある。西梅田から東梅田へ。
阪神から阪急へ。JRから私鉄・地下鉄、各路線へ。
或いはホテルへ送迎のバス停、行きつけのちょっとした店、
出張先、研修場所への乗り換えの階段のアップダウン。

エレベーター、エスカレーターを探しながら歩くのは、
幼かった娘を連れて、抱っこやベビーカーで歩いていた頃以来。
地下街は便利だが、人の波に押されて思うように歩けない場合も多い。
まして今のように足を引きずりながらもたもたしていると、
ただでさえ重い体を引きずりながら、逆に「ありさん」になった気分。
歩いても歩いても、目的地に辿り付けない。
周囲だけが大きく速く動いているような感じ。

これも自分の精神状態のメタファーか。
歩いても歩いても辿り付けない。
歩いているつもりでも前進していない。
歩けば歩くほど足が痛い。
進みたいと思えば思うほど、自分を痛めつける。
何だかなあ。鬱です。凹んでますね。

この所、気分が落ち込んでいる。
妙なアクセス記録、自分の周辺・身辺は何が起こっているんだろう。
目に見えないお付き合いの中に絡め取られて、
雁字搦めになっているのではあるまいか。
目に見える形で、耳に聞こえる言葉で、分かりやすい形で、
何かの反応、お返しを求める者が多過ぎるのではないか。
ほどほどのお付き合い、ほどほどの距離、そういうものを通り越し、
何かを期待しすぎているのではないか。
自分自身が気が付かないうちに、
そういうものに巻き込まれているのではないか。

脳と疲労 ―慢性疲労とそのメカニズム― (ブレインサイエンス・シリーズ 25)

脳疲労に克つ―ストレスを感じない脳が健康をつくる (角川SSC新書)

人の振り見て我が振り直せ。無くて七癖。
飼い犬に手を噛まれる。江戸の敵を長崎で。
去るものは日々に疎し。魚心あれば水心。
キジも鳴かずば撃たれまい。一寸の虫にも五分の魂。
義を見てせざるは勇なきなり。見て見ぬ振り。
・・・うーむ、そこへ戻ってくるか。

雑踏の中を歩きながら、ゆっくりゆっくりと歩きながら、
痛み止めが切れている、切れる時間が早くなったと思いながら、
荷重が掛からないように、ガラガラかばんを引きずって歩く。
最近は荷物を引きずって歩く人が増えて気にならない。
別居結婚は何かと行ったり来たり、こんなスタイルで続けてきたけれど、
自分の人生は、結局ほんの少しの物を鞄に詰め込んで放浪。
それだけで終わってしまうのではあるまいか。
定位置に付いている様で、実はどこにもいない。
そんなことではあるまいか。

家人と娘と飲むために買った桜紅茶、桜風味のアーモンド。
メロンパン、雛あられ。
（結局、一緒にお茶を飲む機会は失われてしまったが）
そんなものを引きずりながら、駅前のスーパーで買う苺。
（これも一緒に食べる機会を失ってしまったが）
抱えきれない思いを、体から少しでも荷降ろししようと、
カートを引きずりながら歩く私は、少し哀しく少し滑稽。

何時も余計なものを溜め込みながら、捨てられない。
余分なものを捨てられない、諦めきれない。
そんな未練をたっぷり抱え、夢の残骸、思い出のバグ、
欲望の欠片、思い入れや思い込みの十把一絡げ。
叩き売りにも出せない「あくだもくだ」を全て引きずりながら、
地下道を歩き、駅のアップダウンを繰り返し、
迎えに来てくれる人のあるありがたさに甘え、
ため息をつく。

足の痛みは心の痛み。
自分が思うように歩いていけない現実世界への、楔。
眠りに落ちたくても、落ち着いて眠ることが出来ない。
夜中に起きる母の為に、夜中に倒れた父の為に、
仕事の段取りを、来し方行く末を考えながら
真夜中から明け方を鬱々と過ごす自分。
何も分からず気づかず考え付かずに、眠ってしまうのが怖い自分。

そんな自分の疲れた気持ちを引きずって歩くことへの、
大人気の無さへの「戒め」が重い。
年度末に向けての、忙しさに追われている自分が重い。
身も心もダイエットできない自分が重い。
自分の様々な痛みで、自分を意識し続ける自分が重い。

メタボ体質は「脳疲労」が原因だった

眠りたいけど眠れない (シリーズこころの健康を考える)

痛み治療の人間学 (朝日選書)