Festina Lente2

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本のカバーとはいえ

 2月23日の読売新聞・夕刊にて、
『いま風』というコーナーのコラム。
酒井順子氏の『心の中を見せたくない』の内容。
「本のカバーには個人としての裏事情を
 不用意に他人様にお見せしてはならないという
 たしなみのような意味も込められているのではないか。
 また、むき出しの本を公共の場で読むのは、
 自分が何に興味を持っているかを他人に開陳するようで恥ずかしい」。


この点については、全く同感。
機能も大事だけれど気持ちの面で、
自分自身を一歩引いた所に置いておきたい。
特に大勢の中では、特に。そんな感じ方や気持ちに同感。
とーちゃんに、このコラムをぜひ読んで貰いたい。


本にカバーを掛けるのは、第一には汚れ防止。
しょっちゅう持って歩くから。もしくは鞄の中に入れるから。
カバーをかけておけば安心だし、表題は背表紙に書いておけばいい。
図書館の本は、透明フィルムで強化されたカバー付だが、
自分の本は書店でサービスされるカバー付がありがたい。
ちなみに、この本はあの時某駅の某書店で買ったとか、
某書店の特徴あるカバーなど、ちょっとした思い出にも繋がる。


アマゾンで買う本は宅配だから助かるものの、カバーが無い。
故に、外に持っていく際は自分でカバーを掛ける。
本の角が折れたりこすれたりしてあっという間に古びていくのを
私は良しとしない。読みながら線を引いたりする場合、
付箋を貼ったりする場合、仕事本は汚すのは基本だが、
愛蔵本、純粋に読書用の本は汚さずにしまうのが私流。


そして、昨日の夕刊にあったように、何を読んでいるか、
電車の中で見られたくないという気持ち、分かる。
自分が何に興味関心を持っているか、知られたくない。
特に、この年になっても漫画が大好きで、
娘と一緒に読むばかりではなく、自分用の漫画を
延々リアルタイムファンとして買い続けている。
速く読みたくて出張先に出向く時であろうが、帰り道であろうが、
ついつい電車の中で読んでしまう・・・。
このなりふり構わない読書、年齢的にはちと恥ずかしい。


漫画で育った世代の人間は、漫画は生活の一部になっている。
特に日本の漫画は心理描写やストーリー展開は郡を抜いている。
下手な小説を読むよりは、よほど心に残る者が多い。
スリリングであり、迫力に富み、ファンタジックで、感情移入できる。
しかし、それを大っぴらに見せて読もうと思わないし、
見せびらかしたいとは思わない。
家で読めばいいじゃないかと思うかもしれないけれど、
そこまで見栄を張れない開き直りが、電車内読書にはある。
要は、気分転換をするのに、頭を使う硬い読書をしたくないから。


例えば、読む本の大きさにもよるが、ハードカバーは重い。
鞄の中で場所を取る。文庫本・新書本・漫画の単行本。
余り厚くないハードカバーの本。
大抵2冊くらいは鞄の中に入れて歩いている。
電車内読書に、カバー無しで「こういう本」を読みたいとは思わない。

古今黄金譚―古典の中の糞尿物語 (平凡社新書 (002))

古今黄金譚―古典の中の糞尿物語 (平凡社新書 (002))



リンボウ先生の本は知的で軽く読める本が多いのだが、
さすがにこの表題を見せて読むのは・・・ためらいがある。
無論、いい格好しようという訳ではないけれど、
見せびらかしているように思われても困るしね。

知的な大人へのヒント―人を惹きつけるインテリジェンスとは

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リンボウ先生のうふふ枕草子

リンボウ先生のうふふ枕草子


なんて本を読んでいる、いい年をしたおばちゃん。
これも悪くはないかもしれないけれど、ちょっと恥ずかしい。
漫画でなくても、恥ずかしいと思う時はある。
だから、本のカバーを汚れ防止役だから、
汚れている紙を使うというのも嫌。
着て歩くのは汚れている服でも平気、というのと一緒。
スーパーのチラシを、ブックカバーにしないのと一緒。
綺麗な包装紙の方が、気が利いているように思えるでしょ。


無論、いかにも自分は時流を読んでいます、
話題の本を読んでいます、という所を見せたい人もいるだろう。
図書館の蔵書印の付いた本を読んでいる人も見かけると、
「よ、ご同輩」と思う私。本は高い。
読みたいものを全部買うわけにはいかない。
しまう場所もない。


年配者に席を譲らないまま、優先座席に腰を下ろし、
今どき『明暗』なんぞむき出しで読んでいる若者。
? 憤るべきか、感心するべきか。
日本文学科・国文学科が廃れている現代、
今どき、『明暗』『草枕』なんぞ読んでいるのは、
草食系男子なのか、別の面で興味津々で眺めてしまう。


そして、表紙買い表紙売りと言われている、
売れそうにない純文学の文庫本の表紙に、ちょっとした工夫、
センセーショナルなイラスト、写真、カラーを使って
人目を引く戦略的なデザイン。
そういう文庫本を持っている事を知られたくない場合など、
カバーが必要かも。今どきその名作を読んでいるの?
買っているの? なんて言われないためにも。


カバー一つでも、自分のプライバシーや社会的距離を保つために、
結構役に立っている。そのカバーに何の気なしに落書きされては、
・・・よそ行きにしていたコートにお醤油でもこぼされたような、
そんな気持ちとでもいいましょうか。
洗濯すれば、新しいものを買えば、それでいいでしょ、
そんな感じでいなされるのは、私にとって瞬間湯沸かし器物の
領海侵犯だったわけで・・・。
たわいのない夫婦喧嘩は続いている次第。
たかがカバー、されどカバー。侮れない。

ブックカバーを作る―しまい込んでいた布の再利用 アイロンと両面テープでらくらくできる

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