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『プリンセスと魔法のキス』

鶯が鳴きかけたような、そんな早朝。
冷え込みはあるが、天気は晴れ。
昨日の早朝、一昨日の深夜の大雨。
一雨ごとに春になるという生易しいものではないが、
ようやく朝からからりと晴れたせいで、鶯は啼く練習を始めたか。


仕事は山積。無い頭を使うと沸騰しそうだった。
手分けして書類の山を崩して行くも、そうそう働けるものではない。
若い頃はどうしてあんなふうに一気に片付ける事が出来たのだろうと、
我ながら疑問。モチベーションの問題か? 能力の問題か?
単なる年齢から来るものか。慣れと経験は何処へ行ってしまったのか。


疲れた頭でこれ以上やっても、どうにもならない。
とにかくこれで打ち止めだと、今日はあっさり引き上げ宣言。
明日に持ち越しということになった。
足を引っ張っているのは自分だ、という落ち込みから脱却したい。
それくらい、目の前の山がうず高い。
予想外の早い帰宅に驚く娘と、久しぶりにレディスデーに。


ディズニーのアニメ映画『プリンセスと魔法のキス
何故か家人が見たがっていたので、子供用の前売りだけ買っておいた。
(かわいいストラップがおまけに付くからね)
久しぶりにアニメなのでどんなものかと思いきや、
(実はそれほど期待はしていなかったのだが)
思いっきりしなを作り、独特の動きをするベタなディズニーキャラが、
歌って踊るミュージカルでその場をやり過ごす、
ショービジネスアニメ版のような構成。


おまけにストーリーが前近代的、というか、
21世紀になっても、まだこういうストーリーで?
浪費家で浮かれポンチの駄目男を、
未来を夢見る働き者の健気な女が、
支えて変えていく、山あり谷あり、そしてハッピーエンド。
いい加減にしてくれよ、この安易なストーリ展開。
昔の童話の焼き直し、新展開と聞いてどんなものかと訝っていたが、
やっぱり見るんじゃなかった。


お姫様が蛙を王子様に戻す前に、自分が蛙になった、
実は、ヒロインはお姫様ではなくて仮想した黒人女性。
蛙を助けてくれるのは、月に憧れている蛍。
死人が出ないのが子供向けアニメの原則だが、
月に憧れていた蛍は死んでお星様になった。
それぐらいが、変更点か。
後は取り立てて、強い感動も何も・・・。

カエルになったお姫様

カエルになったお姫様

プリンセスと魔法のキス

プリンセスと魔法のキス

プリンセスと魔法のキス

プリンセスと魔法のキス



娘も見終わった後、「見なくてもいい映画だったね」と一言。
そう、10歳になった娘が見て喜ぶような内容じゃなかった。
ドラえもんの映画も卒業して何年か経つ。
保育園の頃は当たり前のように。連れて行っていたものだったが。
ドラえもんの方がまだ強い感動があったり、はっきりしたメッセージがある。
このディズニーアニメは一体何が言いたいのだろうか。


カラード、黒人女性が主人公なのが画期的なのか。
ヒロインが白人男性と結婚する事が?
(ディズニー側は黒人男性を描いたつもりらしいが、嘘でしょ)
駄目男が蛙になって、自力では元通りになれずに、
安易に女性のキスを求めていること自体、馬鹿馬鹿しい。
だから、相手間で蛙にして不幸にしているとしか思えない。
あだ情けはトラブルの元だ。


おまけに敵役の魔法使いはブードゥ教。結局のところ、
人を呪わば穴二つの教訓どおり、自ら墓穴を掘るわけだが。
(悪魔は必ず過大な要求、見返りを求めてくるからね)
現実に立ち向かうというよりも、妄想と戦っている気分。
自立を夢見るヒロインに、生活を楽しむ事を教えようとしているけれど、
何だかそれもちょっと胡散臭い。


このご時世、不況でバブルの頃のような楽しみ方は出来ない。
あるもので、つましく暮らそうという当節。
分相応と言うと古びていると思うかもしれないが、
身を粉にして働いて当たり前という観念が無い人間に、
「人生を楽しもう」と言われても、現実味は無い。
楽しむ以前に、働く必要性を感じていない人間に。
生活に追われている厳しさ・切なさを知らず、
やりくりをしながら見つけるからこそ、ささやかな事が楽しい、
その感覚、その瞬間の貴重さを知らない人間に、
「人生の楽しさを教えてやるよ」と言われても。


アニメならともかく、現実の世界で駄目男が目覚める過程に付き合う
ヒロインに、何のメリットが?
というよりも、駄目男が目覚めるとでも?
駄目男にほれ込む女性というパターンは、いつの時代も恋愛という罠に落ち込む、
共依存の典型的なパターンじゃないか・・・。
お互い協力し合って助け合って、それ以前に、
抱えている問題が山積じゃないか・・・。


子どもにわかりやすい対立要素、お金持ちと貧乏、
上流社会と労働階級、お城のような家、
貧しい屋根裏部屋、王子様に憧れる女の子、
自分の店を仕切る夢を見るヒロイン、
欲望と底意地の悪さで凝り固まった魔術師、
能天気で金目当ての結婚をも辞さない王子。
あわよくば王子に取って代わりたい侍従。


娘の目から見ても、「面白さ」「感動」には程遠かったよう。
ディズニーは実写版だね。もうアニメは卒業だ。
と言うか、「CGに頼らない従来の動きを尊重した」なんていう、
ディズニーアニメの宣伝文句以前に、従来のストーリー展開、
古いパターンのアニメはもう面白くないという事を、
製作者に知って貰ったほうがいい。


今回のアニメは『ハウルと動く魔法の城』を見た時と同じぐらい、
面白くなかったなあと落ち込んだ。
アニメだからって、お姫様と王子様がいて、
冒険をすれば感動が生まれるとは限らない。
私と比べて10歳の娘の物足りなさはいかほどか、
わからないが、もうディズニーアニメは卒業だね。うん。

プリンセスと魔法のキス (ディズニーアニメ小説版)

プリンセスと魔法のキス (ディズニーアニメ小説版)

プリンセスと魔法のキス (竹書房文庫)

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