Festina Lente2

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歓送迎会の夜

昨日話題にした元上司と久しぶりに会う夜。
懐かしい戦友ともいうべき人々を垣間見る夜。
若い頃は歓送迎会の意味もわからぬまま、
それほど感慨を抱く事もなく来たが、今は違う。
この年ともなれば、最後の転勤が控えている。
もしくは退職した人と会える最後の機会になる。
何とも言えぬ寂しさが付きまとう。


生きてきた時間、生活を支えてきた時間。
仕事をしてきた時間。あっという間に過ぎ去り、
袖触れ合うも他生の縁、行くも帰るも別れては。
朝(あした)の紅顔、夕べに白骨となるともではないが、
何が起こるかわからない。明日は我が身の思いひとしお。
新しく来た人を迎える気持ちよりも、
去っていく人を思う気持ちの方が強いのは、
今までの付き合いがあるからに他ならない。


かつての同僚、先輩、上司。
人は来て去って行く。どうしようもない。
「去るものは日々に疎し」それが当たり前。
もっと人の異動が激しい職場だって、たんとある。
しかし、年を重ね辞める日が近づいていることを、
実感として持ち、指折り数えて考えるようになって来た、
そんな今だからこそ、勤め上げてきた人々の苦労を思う。


どんな姿勢で、どんな思いで、机に向かい人と話し、
やって来たのだろうと思うと、心は複雑。
多くをこなして来たと思われている人と、
何もせず人様のお陰で大過なく過ごして来たと思われている人と、
この場にいて欲しいのにとうとう顔を現すことがなかった人と、
ぬけぬけと現れてそれでいいのかと思われている人と。


自分はどんなふうにこの場に立つのだろうかと、
考えない日は一日も無い。
というよりも、どんなふうに去っていくのか、
何をして何を残して、残すことが出来て去っていくのか、
果たして実績を残して去っていくことが出来るだろうか、
自分がここにいた事は無駄ではなかったと、
どれほどの思いで過ごして来たか、
その証しを立てることが出来るのだろうか、
優に誇ろうというのではなく、自分自身に納得して、
この場から消え去ることが出来るだろうかと、
考えない日は一日も無い。

転勤と既婚女性のキャリア形成

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別れの流儀

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だからこそ、歓送迎会の夜。
人々はどのような思いでここに集うのか、あれこれ思う。
話したい人、語り合いたい人、
もっともっと言葉を掛けておきたい人、
今のうち、今生の別れに近い形で去る人を、
再び共に仕事をすることがあるかもしれない人を、
お疲れ様とねぎらいながらも、心のどこかは醒めていて、
この場を去っていく人が羨ましくもあり、妬ましくもある。
或いは、心の底から健康と弥栄(いやさか)を願う。


人生は交差点のようなもの。クロスポイントですれ違う。
袖触れ合うも他生の縁。そう思ってすごして来たか、
ただただ慌しく通り過ぎていくだけではなく、
同じ景色を、道を、曲がり角を、歩いた人として、
今夜再び一瞬だけ共有することが出来たか。


すれ違った人、人、人。
別れて去っていく人の多さばかりが意識され、
これからの出会いを余り思い描くことが出来ないのは、
もう残り少ない職場での時間と思い定めてのことか、
未来への展望よりも、諦念の方が大きいからか。


これやこの、行くも帰るも別れては。
口に出してしまいたい思いは沢山ある。
出せない事も山ほどある。
全てを「歓談」の陰に隠して、歓送迎会は進む。
自分だったらどんなふうに消えていくのか、
あれこれと思い巡らしてしまう、歓送迎会の夜。

別れの曲~ショパン名曲集

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別れの曲~TVのなかのクラシック

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