Festina Lente2

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落雷と停電とそれから

仕事中に雷が落ちて、苦労して作画していた図が飛んでしまった。
幸いなことに途中までバックアップが残っていたものの、
雷で停電なんて久しぶりの経験だ。
先ほどから不穏な音を響かせていたこの雷を面白がって、
稲妻から何秒で音がするか数えていた先輩、1,2,3、
3秒、近いね、なんて雑談していたら、まさか停電とは・・・。


書きかけの図でよかった。長い文章ならば目も当てられない。
最近のパソコンは性能がいいから、自動バックアップも万全だが、
昔はこうじゃなかったので、ちょくちょく悲劇が起こったのを目撃したことはあった。
が、まさか自分がパソコン使用中に、バグではなく、
突然停電で電源が落ちたのは生まれて初めての経験だった。


派遣社員が涼しい顔で仕事を続けている。
みんな停電でコピーさえも止まっているのに?
さもありなん、彼のノートパソコンはバッテリーで動いていたのだった。
うーん、でかいパソコンはこういうときに劣勢だなあ。

天の狼

天の狼

朱―野見山朱鳥句集 (ふらんす堂文庫)

朱―野見山朱鳥句集 (ふらんす堂文庫)



停電なんてもうしばらく経験していない。
昔はよくあったのに。そう、日本だって、停電は珍しくなかった。
子供の頃、夜の闇が怖くて懐中電灯を枕元に置いて寝た。
豆電球は子供の睡眠を妨げるので良くないらしいが、
豆電球がついていないと怖くてなかなか眠れなかった。
それに、夜中によく目が覚める子供で、お月様を眺めながら、
空行く雲を随分早く動くなあと思ったりしていた。


そう、停電の夜、そういう真っ暗な夜は珍しくなかった。
昼間、ブレーカーが落ちるのも珍しくなかった。
暑い中、クーラーのせいで、寒い時電気ストーブやドライヤーのせいで、
停電どころかワット数以上の接続で、線が燃えた事もあった。
電気を使い過ぎると、電気がへたる。そんな生活から遠ざかり、
本でさえもケータイや電子ブックの時代になって、
蛍雪の功なんてどういう意味だかわかんない時代になって、
突然パソコンやケータイが使えなくなったら、世の中大パニックなんだろうな。


数分の電気のない生活、パソコンが回復して文書類を確かめる。
問題なくバックアップから仕事を継続する、午後。
終業前のアクシデントで、後もう少し、
きりの良い所で終わりたかった仕事が終わらない。
ま、世の中こんなもんだ。
いつもと違う新鮮な経験の代償。


稲光り わたしは 透きとほらねば ならぬ    富沢赤黄男   
火の島と 銀河を 照らす いなびかり      野見山朱鳥


光る速さよりも早く心が老いて行きそうな、
すとんと落とし穴に落ちるような、そんな最期を観る白昼夢。
パソコンの画面に命が宿っているならば、突然訪れる真っ暗な画面、
自らの空白をどんなふうに意識するだろうか。
機械は再び立ち上がる「生」もあれば、強制的に終了させられる「死」もある。
さて、自らが透き通っていかねばならぬ時とはどんな時ぞ。
火の鳥のように永遠の命をもち銀河の彼方まで往くことの出来ぬ、
限られた命の人間の私は。


遠雷のしばしは鳴りてゐたれども
       虹を形見におきて去りたり     藤井 常世


そんな風に美しいものを残して去っていける人生であればと、
ちらりと思う。これから先がまだまだ続くのかもしれないが、
そのまだまだは、限られたまだまだ。
パソコンが落ちるように、バックアップできる人生があれば、
やり直しも修正もきくのだろうけれど、自分はどうかな。
せめて、虹を残せるように生きたいものだ。
そんなことを「ちらり」と考えて、本日終業。

NHK短歌 短歌の<文法> 歌あそび言葉あそびのススメ

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夜半楽―藤井常世歌集 (角川短歌叢書)

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