Festina Lente2

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「アデル」違いだった

娘のかねてからのリクエストで、
『アデル―ファラオと復活の秘薬』を観に行く。
大体サブタイトルの付いている映画は余り信用できない。
サブタイトルを付けないと、アピールし切れない。
もしくは、何かの二番煎じ。続編、焼き直し、
イメージをダブらせるために戦略的に付ける邦題は当てにならない。


宣伝にエジプト・ルーブルという二つの単語を入れるだけで、
もう娘は食らい付いているが、私には信用できない。
リュック・ベッソンの映画は往々にして、CMが派手だ。
ヒロインを全面的に押し出して、視覚的に訴えてくるかと思うと、
姑息なほどあざとい宣伝の仕方をする。
いや、あざといのは日本の配給会社の方か。
そういう宣伝の仕方で、若年層を引き付けるわけだから。


リュック・ベッソンは才能があるのかもしれないが、
荒唐無稽で少々ついて行き辛い。どの作品を見てもそう思う。
観易い作品もあるが、「ここで、こういう展開?」という持って行きき方が、
納得できないというか、単純に面白いといって笑えない。
イデア過多というよりも、破れかぶれのどっちらけに近いと思うのだが、
それを才能といって認める人も大勢いるのだから、仕方ないのだろう。


漫画が映画になっているような、人生にガツンと応えて来ない、
たまたま観た映画がそうだから、その印象が強いのだろうか。
でも、SFものの『フィフス・エレメント』と観た時と同じように、
ナンダコレ? とごまかされ煙に巻かれたような感じがして仕方が無い。
今回の『アデル―ファラオを復活の秘薬』もそう。
冒険もののジェットコースタームービーの主人公が女性になっただけで、
特に目新しい点も何も無い。危機に遭う、ありえない方法で脱出する。
敵がいる。何らかの方法を用いて出し抜く。
お涙頂戴の弱みがある。余りにも現実離れした設定。
その弱みゆえ、主人公の破天荒振りを差っ引くことなどできない。
と思うのだが、問答無用にサクサクと物語りは進む。


そのために、変装有り、お涙有り、セミヌード有り、ついでに流行の怪奇もの、
恐竜もの宜しく、夏休みに公開する映画としては程よい要素を備えて、
つまり、観客の好みのどこかに引っかかってくれればいいや、
とりあえずデコレイトしておいたので、好きなクリーム、トッピングから
お味見して下さい的な映画、それが、今回の映画。

アデル ファラオと復活の秘薬 (ハヤカワ文庫NV)

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アデル/ファラオと復活の秘薬

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私の第一印象は、女性版ピンクパンサーポリスアカデミー
ナンセンスな笑いで物語を無理やり進行させる。
ネタを振ればどうにかなるさ、連発すれば笑っているうちに場面が変わる、
そんな感じのする映画。作っている人間は盛り沢山のパーツを作って、
あちこちに嵌め込み、形ができていくのが楽しいのかもしれない。
まあ、子供がレゴを組み立てるような感じか。


大人の発想とは異なるものが出来上がる。
ゆえに少々受ける。ほんの少しお世辞も混ぜてほめたけれど、
子供は図に乗って勢いを増して悪乗りして作り続けている、
そんな感じがしてしまう映画。
ゲーム世界で目の前の映像が、チャンネルごとにカチャカチャ変わる。
どうせ変わるのならば、次々と変化をもたせれば飽きられないだろう、
そういう魂胆が見え透いているような、無邪気な嫌らしさ。
成熟していないエネルギーの爆発が、日常へのカンフルだとでも言わんばかりの。


娘には大いに受けていた。喜んで笑ってみていた。
小学生に大受けしているレベルじゃ、面白くなくても当然かもしれない。
全くつまらないものを見てしまった。とんだ時間つぶしだった。
「アデル」という名前の響きに惹かれた自分が馬鹿だった。


昔の切ない恋愛映画の『アデルの恋の物語』を思い出させる、
「アデル」という響きに引かれてしまい、
どんな冒険譚だろうと、少し興味を持ったのがいけなかった。
年老いたインディの冒険と同じぐらい、いけない。
徹頭徹尾『ハムナプトラ』と『ナイト・ミュージアム』をぱくって、
コスプレで名を馳せた元お天気キャスターを主人公に据え、
その先はどうなるか。監督好みの着せ替え人形が、派手に動いてみせるという、
いつものパターンを想定していればよかったのに、
何で観てしまったのか・・・。


仕事が一段落して、体力気力を使い果たしていたせいか。
三連休の締めとしては、詰まらないものを観てしまった。
反省。もっと時間を有効に使わねば。
いや、娘に喜んで貰おうと甘い選択の映画鑑賞がいけないのかも。
実際、楽しんでいたし。
娘は冒険に憧れるお年頃なのかもしれないね、
その手の世界にわくわくするお年頃になってきたのかもね。


だからといって、一人で映画館に行かせる年齢でもないし、
安直にレンタルビデオで見せる生活をしたくないし。
映画館での迫力を知って貰いたいし。
それにしても、荒唐無稽なのは冒険映画のお約束だけれど、
今回馬鹿馬鹿し過ぎて脱力感が大きかったのは、
ミイラの復活がギャグで漫画チックだったせいか。


いや、やっぱり「女性」であることを逆手に取ったのではなく、
「女性」であることを茶化していること、
科学や歴史、そういったものを、単に「遊び」に置き換えて、
奇を衒う「発想」をおもちゃにしてやったぞという、
金と力のあるものの遊び心を見せ付けられた感じがして、
嫌だったのかも。どうも、人を「おもちゃ」にする感覚が強くて。
リュック・ベッソンと相性が悪いのかも、ワタシ。
連休3日目の締めに詰まらない物を観てしまった。

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