出張先の神社(中島惣社)
初めて降りた駅、出張先にて。
午前と午後の間の休憩、全く人気の無い寿司屋の定食。
焼け付くような日差しにアスファルトも焦げそう。
時間潰しに涼む場所とて無い。
歩きながらあれ? あんなところに神社がある。
でっかい灯篭が不自然に並び、
どうやらこれは参道らしいが・・・。
本来あったはずの参道、並木道のスペースは、
全て住宅街となり、それでも壊したり移動できなかった分、
住宅の中庭にぽんとどでかい灯篭が置かれたまま、
神社までの一本道、辿っていくと見慣れない言葉。
惣社。惣社って何? あまり見たことがない。
ここは古代日本、どんな場所だったのだろう。
中島惣社。
ずいぶん神様が沢山いらっしゃるところだこと。
それなりに由緒のある土地柄、歴史的な場所らしい。
知っている神様の名前もあるけれど、
総社という言葉自体が初めてなので、何だか落ち着かない。
孝徳天皇ゆかりの地。晩年失意落剥のスメラミコトの地か。
ちょっとうらぶれた自分の気持ちがやはり呼ばれたのかな?
古事記日本書紀に見る古い神々とともに、
何故か人間である菅原道真や楠正成まで祭られている。
それなりにきちんと整理、整備され落ち着いた雰囲気。
この真夏の暑い暑い昼下がり、詣でる人など誰もいない。
私は随分変わった珍客、観光客でもなく、通りすがりの参拝客。
落ち込んできる気持ちがこういう静かな場所に招くのか。
単に神社仏閣好きな気持ちが連れて来るのか、
こういう場所にいると何となく心が和む。
家庭内の落ち込みも、仕事の苛立ちも、うんざりする出張も、
誰とも口を利かずに独りでいるこの時間。
寂しくても心穏やかに過ごせる時間。
陽炎立つほどの暑さの昼下がり、
カメラを構えて、神馬の像のある馴染みの無い神社の境内。
お参りしながらぐるりと一周。
毒を隠し持つとは思えないほど可憐に咲く、
上品なピンクの夾竹桃がひっそりと咲いている。
私は祈る。心の平安。
そして痛む足も、折れた針が刺さったままの歯も、
家族の病気も、自分の落ち込みも、何もかもが
何もかもが滞りなく許され癒されることを。
今日から三日間、出張で寂しい思いをさせる娘が、
元気に過ごせるようにと。
老いた両親がつつがなく孫といますようにと。