Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

家族で淀川花火

京都から姫路行きのJR鈍行に乗って正解。
大阪からは揉みくちゃ。更に人ごみの中を淀川べりの会場へ。
有難くも、さすが有料の座席はそれなりのゆとりが。
されど昨年とは異なり、日没後やって来た私達、
家族3人分の席を探すのに一苦労。
それでも普段の心がけか、運よくスペースを見つけ、
「真っ暗で見えないよ」と心もとなげに呟く娘と共に、
御弁当を食べ始めてしばらく・・・。

 


町の明かりも向こうのビルも暗くなったような気がする。
音楽も司会も無い淀川花火大会。
座席の照明が消えたら、いきなりのスタート。
阿南・鳴門・小松・徳島・草加・岡崎の花火を見慣れた娘も、
家族揃って水入らず、久しぶりの花火に目を丸くした。

 

 


スポンサー名も花火の説明もないまま、大玉小玉、色とりどりに、
華やかなスターマイン、仕掛け、打ち上げの連続にあれよあれよと。
(花火の種類の説明はこちらへ

 

 

目まぐるしく景色が変わる、人生の景色を思い起こす、
走馬灯のように一瞬にして蘇る、あれは5年前、何も知らず、
世界を信じて疑わず、幸せは自分の手で築けると思っていた無邪気な頃、
新しい生活は少しずつ根を張り広がり、大地から大空へ伸びえていくものだと、
遅くにやって来た人生の春夏を楽しむのだと思っていた頃。
予想もせぬ嵐が来るとも思わずに。あれから5年。


 

 


何もかもまたやり直すのだ、始め直すのだ、まだ間に合う、
神様のご機嫌が良ければと、悲痛な面持ちで水入らずの時間を暖めていた、
あの時の万博公園エキスポランドの花火はもう見ることは出来ない。
あれから何度も季節を巡ることなく、閉園になり、そのまま。
広大な設備は雨ざらしになって、寂しい限り。
エキスポランドと同様、自分の健康、家族の健康、いつ壊れるか、
故障が見つかるかわからないまま、気が付けば、ヴィのような花火を見上げ、
まだまだ生きて、生活している事を実感する。
喜びの中にも、一瞬にして暗転する虚無を垣間見る花火。

 

 


娘は5年生になった。去年君キャンプに行っている間、
とーちゃんとかーちゃん、二人で花火を見たんだよ。
何も知らずにやってきたら、チケットにはお茶と御弁当も付いていた。
少々お高いだけのことはあった。綺麗で観劇したよ。
だから、今年はキャンプに行く前の君と一緒に、家族3人で花火を見ようと
準備していたのに、君は気乗りしない様子だった。
また花火かって感じだった。

 

君が過ごしたい夏は、過ごしたかった夏はどんな夏だったのだろう。
去年のような徳島旅行、泊りがけの家族旅行ができれば良かった?
幼なじみに合える時間を少しでも作れるような。
それとも、全く行ったことのない新しい場所に?
でも、君はクラブで毎日お弁当を持って出かけていく。
受けるのか受けないのかわからない中学受験のために、
とりあえず夏期講習に参加している。
明後日からは4泊5日のキャンプに行ってしまう。
なかなか予定が遭わず、とーちゃんも御盆休みを取れない様子。
かーちゃんはどう休暇を振り分ければいいのか、
強引に自己主張していいのかわからない。


自分の予定を入れて、空きを埋めてよねと強引に言えば?
何処にも行けない行こうとしない、そんなジレンマさえもこの一瞬、
もやもやと一緒に吹き飛んでしまえば・・・。
かーちゃんは知っている。
クラブで選抜メンバーに選ばれず、控えであることに鬱々としながらも、
明るく頑張っている君のちょっぴり辛い本心を。
「漫画みたいに、私達の分まで頑張ってねって、
 なかなか簡単にいえないものだね」君も屈折しているね。
そんな遠まわしに悔しさを表現するようになったか。


君はもう、幼い毎日が新しく楽しい子供時代をとっくに脱皮して、
蛹なのか繭の中なのか、何を思ってこの夏を過ごしているのか。
もう毎日の出来事をかーちゃんに話そうとはしない。
毎日が、すれ違いのようになってしまっている親子、妻子、父子、
家族の絆をほんの一瞬だけ熱い火花で絡め取って、空に描こう。



花火が終わって人ごみの中を歩いて帰る。
君がにっこり笑って、
「こんなんだったら来年もまた来てもいいなあ。」
かーちゃん、涙が出るほど嬉しかった。
そう、一緒にいられる時間も、共に過ごす時間も、
何もかも限りあるもの。共に同じ時間同じものを見て過ごす、
貴重な貴重な時間。


とーちゃん、チケット買ってくれてありがとう。
来年の夏もまた一緒に、みんなで、花火見ようね。