Festina Lente2

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魔法使いの弟子

夏休み中の映画の前売り券を買っておいたので、キャンプ明けの娘と夕方、
久しぶりに一緒に、娘とレディス・デー。
最近は娘の分だけ特典の付く前売り券を買うことが増えた。
むろん親子ペア券を買うこともある。私も家人も映画が大好きで、
娘が幼い頃から映画館に当たり前のように連れて来ていたが、
こうやって子供券を買えるのも後僅か1年余りになってきたかと思うと、
少し寂しい。春からにょきにょき背丈が伸びて追いつかれそうな、
そんな娘と並びながら、ちょっと感傷的。
映画館で使う子供椅子も不要になった。
そんなちょっとしたことで、親はハッとさせられる。


西洋世界は話の題材を神話伝説に求めるのが好きなので、
聖書をはじめとして、ギシリア・ローマ神話北欧神話
中世騎士物語を読んでおけば、大抵は間に合う。
魔法だ何だかんだと言っても、原点は同じだから。
しかし、我が家で「魔法使いの弟子」というフレーズは、
熱烈な『ファンタジア』ファンの家人のお陰で、直ちにあの有名な
ミッキーマウス演じる魔法使いの弟子が、水汲み嫌さに
いい加減な未熟な魔法を使って大惨事になる、あのシーンに直結。


そのイメージを少々壊されたくない思いもあって、
ちょっと今回の映画の題名には抵抗が無きにしも非ずなのだが・・・。
そこはそれ、ディズニー映画が過去の映画をないがしろにするはずも無く、
どのように料理するか、楽しみではある。
しかし、私と娘が残念だったこと。
この子供用とみなされた映画に吹き替え版しかなかったこと。
俳優の声が直接聞けないのは、ちょっと哀しい。
おませな娘はニコラス・ケイジのファンなのだ。


さて、そのニコラス・ケイジ。『月の輝く夜に』以来、
彼の活躍を見てきているのだが、最近はおつむりの前線後退が著しい。
今回は長髪だったので、登場してきた瞬間娘と笑ってしまった。
反対に敵役が坊主頭に帽子だったので、その対比にも笑えた。
主人公は最初からそれほど魅力的に設定されておらず、
物理オタクがプラズマを魔法で放つ「選ばれ者」という運び、
物語の定番として「駄目ジャン」が「クール」に変身・変化する。


さて、その肝心の場面、『ファンタジア』へのオマージュ、
魔法使いの弟子」の実写版(実際はCGとなるわけだが)いかに。
ポール・デュカスの原曲が実際ファンタジアでは編曲されているわけだから、
同じように、どう扱われているか、ね。
THE SORCERER'S APPRENTICE、では。

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デュカス:魔法使いの弟子

デュカス:魔法使いの弟子



ニューヨークの町を観光しているような、ちょっとした景色が楽しい。
(20年前のニューヨークしか歩いていないけれど)やはり懐かしい。
それでも、話の展開が当たり前過ぎて予測が付くだけに、
中華街での迫力ある乱闘シーン、豪華マンションでのやり取り、
地下の実験室テスラ装置、さまざまな魔法の応酬が見慣れた感じ、
何かの二番煎じ的な使い古された画面という印象が抜けない。
結構笑える場面もあるけれど、強い感動も無い。


弟子を鍛える場面よりも、外したかな、しまったなという表情を見せる
或いは叶わぬ恋愛に切なそうな表情を見せるニコラス・ケイジには、
ちょっと入れ込んでしまいそうな気分にはなるけれど、
作品全体としては、何だかなあという感じ。
パイレーツ・オブ・カリビアン』の焼き直しみたいな印象。
to be continued  続きを作って稼ぎたいという、
「柳の下にドジョウ」をありありと見せ付けるような終わり方。
気に食わない。その興行精神。


音楽がトレヴァー・ラビンだったので、往年のプログレ・ファンとしては
ちょっと気になっていたけれど、まあまあの出来。
ディズニーはディズニー色の強い音楽の印象がある。
安心して見られる家族向けの作品という点では合格なのかもしれないが、
かなり作りとしては斬新なように見えて実際は保守的。
映画を見慣れている人間には、「鼻に付く」既視観が気になって、
魔法の世界を楽しむにはちょっと・・・という作品だろう。


鏡の中に入って行く反転世界、壺の中に入って抜けられない、
マトリョーシカのような魔法使い封じの入れ子
生きた竜が絡みつく指輪、印象的な皮コート、
それなりに小道具使いは上手いのに、画面のトーンがいつも同じ、
今まで見せられてきた映画と常に変わらない。
そんな感じのする今回。
娘はどうだったのかな。


ちなみにHPには魔法使いの弟子度を測るテストがある。
私は、小粒ながらも魔法使いの弟子、らしい。
厳しいようで抜けているマーリン、
アーサーを助けることが出来ず、閉じ込められてしまったマーリン、
そんな印象をずっと持ってきただけに、
そのマーリンの弟子が、更に弟子を取る。
その構図にちょっと興味があったのだけれど・・・。


青は藍より出でて藍より青しとなっているのか、どうなのか。
自分が選ばれし者ではなく、探し出すまで死ぬこと叶わぬ身で1千年。
そんな弟子が、選ばれし者を「弟子」として鍛える。
師が弟子を鍛え、その弟子が師を超える能力者を捜し求める。
その構図の方が今の私には身に染みるものがあったかな。
定年まであと10年。
残したいことや伝えたいことが沢山ある。
そんな年齢にあって、いまだ娘は幼く
この職場はひだるい。それに甘んじている私もまた。


魔法で環境そのものまでは変えられない。
人の素質も、思惑も。
魔法で人の性(しょう)までは変えられぬ。
魔法が使えるから恋愛が成就したのか、
それ以前のものがあるのか、娘よ、気付いている?
仮定法の世界に仮定を持ち込む前に必要なことを?

"Merlin" the Complete Guide